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「しかることは子どもの学びや成長に効果がない」その理由は?専門家の科学的な説明に思わず納得【俳優・加藤貴子】

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8歳と5歳の男の子を育てる俳優の加藤貴子さんが、育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第15回。今回は「しかること」がテーマです。臨床心理士・公認心理師の村中直人先生に、親がしかると子どもはどう受け止めるのか、子どもの学びや成長のためにどう伝えるといいのか、などについてアドバイスをもらいました。

しかる行為には子どもが学ぶ効果はない

加藤さん(以下敬称略) 以前から子どもをしかることについて悩んでいます。私の子どもたちはしかられることに慣れてしまっているようなんです。先日なんて今までさんざん言われてわかっているはずなのにゲームやYouTubeばかり見ている長男に「宿題やったの?」から始まり、「約束したことを守ろうよ」と、しかっていたら、なんと彼はその最中に寝てしまいました。いつも子どものためを思って注意しているけど、なかなかうまくいかないんです。

村中先生(以下敬称略) 私は、しかる行為は人の学びや成長を促すような効果はないと思っています。でも、親ならだれしもしかることやしつけは子どものために必要だ、効果があるはずと思っています。この、結果として効果がないのに効果があるように感じてしまうのが、しかるという行為の特徴です。

加藤 しかることに効果がないんですか?!

村中 はい。その理由は科学的に説明できます。親がこわい顔をして「何してるの!」と大声で言うと、子どもはこわいと感じます。すると脳にある扁桃体を中心としたネットワークが活性化して、専門用語で「戦うか、逃げるか反応」と呼ばれる状態を引き起こします。この状態を私は「防御モード」と呼んでいます。戦うことを選べば親子げんかになります。でも多くの子どもは逃げることを選ぶでしょう。逃げるのは、物理的に親の前から逃げるだけでなく、取りあえず親のいうとおりにすることも逃げる方法の一つ。「ごめんなさい」と言えば親の攻撃が止まるわけです。

親からしてみれば、「きちんとしかったから子どもが学んでくれた」と感じます。でも、この一連の流れで子どもが何か学んだかというと、学んでいません。親がしかる行為によって子を防御モードにして、自分の思いどおりの行動をさせているだけのことです。

加藤 子どものためと思ってしかっても、子どもは何も学んでいないということですか?

村中 はい。なぜなら、防御モードにある人間は知性や理性に関する脳の部位の活動が低下することがわかっています。これは、敵から命を守るために瞬間的に「戦うか、逃げるか」を判断するためです。
子どもは親にしかられている状況をどうしたら1分1秒短くできるか、そのための行動をするのです。「ごめんなさい」と言って片づけを始めるかもしれないし、加藤さんの息子さんのように寝てしまうかもしれない。子どもがそういう行動をすれば、親はそれ以上しからないですよね。でも実はそこには理性や知性による反省は存在しないんです。

ですが、防御モードを引き起こすようなしかる行為は、その瞬間に行動を変える必要があるときには役に立ちます。

危険を回避したあとにしかることは無意味

加藤 それはどんなときですか?

村中 未就学児の場合では、ぐつぐつ煮えている鍋の近くで遊んでいるとか、カッターナイフを振り回してきょうだいげんかをしているとか、その瞬間の行動を止めないといけないときです。小さい子どもの場合は「危ないよ!」「けがするよ!」「ひどいやけどをしたら死んじゃうよ」と、多少おどかしてでも止めなくちゃいけない場面が毎日のようにありますよね。

加藤 危険を回避するための行為ですね。

村中 そうです。ただ、その場合のしかる行為は、今目の前で起きていることにしか役に立ちません。
たとえば、お兄ちゃんと弟がカッターナイフで遊んでいて、親が「危ないよ、何してるの!」と大きな声でしかったとき、お兄ちゃんがちょっとびっくりしてカッターを落としたとします。カッターがお兄ちゃんの手から離れた時点で危機は去ります。目の前にある危機が去れば、これ以上はしかる意味はありません。

加藤 あぁ・・・。私はそこからくどくど言っちゃうんです。

村中 「あるある」ですよね。けがを未然に防げた安堵(あんど)感も手伝って、次にまた同じことをしないように伝えたいと思っちゃいますよね。私も小学校4年生の息子につい「何やってんの、いつも言ってるでしょ」って言ってしまうこともあります。でも物事が起こったあとに「危なかったじゃないの」としかっても子どもは学びません。目の前の行動を変えさせることと、これからのことを考えて学ばせること、この二つはまったく別です。

これは大人も一緒です。威圧的な態度で何か言われてストレスを感じているときに、それ以上のことを考えられないじゃないですか。冷静に振り返ると当たり前のことだけれど、親の立場になるとわからなくなってしまうんですよね。

加藤 子どもの学びや成長にしかることが意味がないとしたら、私たち親はどんなふうに子どもをサポートすればいいですか?

村中 人はどんなときにいちばん学び成長するのかというと、それは防御モードと対極にある「冒険モード」になっているときです。防御モードは危険を回避するために行動しますが、冒険モードは、興味関心があってワクワクするから、やりたいから行動し自ら試行錯誤します。子どもの成長や学びには、いかに子どもの冒険モードを増やすか、が勝負です。

冒険モードの引き出し方とは?

加藤 その冒険モードはどうやって見つけるんですか?

村中 子どもが冒険モードになるのは、やってみたい欲求が前に出て、かつちょっとだけチャレンジしなくちゃいけないときです。以前にもお話したことがありますが、わが家の例をあげてみます。ある朝、書斎で仕事をしていた私に、息子が「ラピュタパンを食べたい」と言いにきました。ジブリの映画に出てくる、目玉焼きをのせたトーストです。そこで「今ちょっと手はなせへんから自分で作ってみて」って言ったんです。すると息子はふと気づいたら黄身のこわれたラピュタパンを自分で作って食べていたんです。「できてるやん!」って驚きました。

冒険モードになったときにチャレンジして楽しかった経験があると、次のチャレンジをする種になります。息子の場合は、次に朝ごはん用に自分でオムレツにチャレンジしていました。私や妻が作るのを見て覚えていて、やってみたらしいのです。これが、冒険モードに入ったときの好循環です。

加藤 子どもがやりたいことにチャレンジできる状況を作ってあげるんですね。

村中 子どもの「ワクワク」がふくらんで冒険モードが好循環になると、親からしても予想外に「こんなことできるようになったな」、「こんなチャレンジしたんだな」って驚くことが増えるでしょう。わざわざほめる必要もないほど成長が見られると思います。ただ、冒険モードの弱点は、安定しないこと。一つ興味があってやってみたら次も必ずやるかというと、そうとは限らないんですね。だから子どもの興味が移ったとしても、チャレンジさせてみて、見守って、いろんな経験をさせてみるのは大事だと思います。

子どもが冒険モードになるために大事なことは、「自分で決めた」かどうかです。他人がふったサイコロで進むすごろくがつまらないのと同じで、親が決めてしまっては子どもは冒険モードにはなれません。
親はサイコロの5や6を出すコツを知っていますから、子どものもののはずのサイコロを取り上げて、「はい、進みなさい」て言ってしまいたくなりますよね。でも親がふるサイコロでは、子どもはつまらないんです。

子どもが自分で興味を持ったり、自分で決めたりして行動する、親はそれを見守り、サポートしてあげる。そのほうが、しかることよりもずっと子どもの学びや成長に好影響となるのです。

お話/加藤貴子さん、村中直人先生

監修/村中直人先生

撮影/山田秀隆 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

子どもをしかっては「自己嫌悪になっていた」という加藤さん。しかることは子どもの学びにつながらないという考えに驚きつつも、「ぜひ冒険モードになれるような声かけをしてみたい」と話していました。

●記事の内容は2023年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。

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