第二子妊娠中の美馬アンナさん “普通や当たり前のない世界”を教えてくれた先天性欠損症の息子をお兄ちゃんにしてあげたい
女優やタレントとして活動する美馬アンナさんは、2014年に千葉ロッテマリーンズで活躍するプロ野球選手の美馬学投手と結婚。2019年に待望の長男・ミニっちを出産しましたが、先天性欠損症により右手首から先がない障害をもって生まれてきました。そして現在、第2子を妊娠中のアンナさんに、もうすぐ4歳になるミニっちの成長と、第2子出産に向けた思いを聞きました。
“普通”という概念から離れてひらけた新たな景色
子育てにおいて、早いうちから外の世界に触れさせたいという思いがあったというアンナさんは、ミニっちが生後6カ月のときからスイミングスクールに通い、1歳からは毎年スキーに行って親子で楽しんでいるそう。そんな風に、幼い頃から積極的に外に出て、親子でたくさんの友人を作り、交流を深めてきたと言います。
「あるとき、通っているプリスクールのお友だちから、『何でミニっちの手はないの?』と質問されたことがありました。そのとき、先生が子どもたちにパラリンピックの映像を見せてくれたんです。手足がなかったり、目や耳が不自由だったりと、いろいろなハンディキャップがある選手たちががんばって競技する姿を前に、『あなたたちが普通なわけじゃないよ』と、右手のないミニっちのがんばりを褒め、それぞれの個性を尊重し合いながら共存していると教えてくださったことが、私もですが、ミニっちにとってもうれしかったようです」アンナさん)
アンナさんは、ミニっちのおかげで「当たり前なことなんてひとつもない。世間的に普通と言われていることは普通ではない」ということに気づくことができたと打ち明けます。
「やればできる!」ミニっちから教わった無限の可能性
ミニっちが生まれた当時は、先天性欠損症についての知識がなく、できないことばかり考えてしまったというアンナさんですが、ミニっちの成長と共に、自身の先入観や価値観をくつがえす新たな発見と感動が、日々たくさんあると教えてくれました。
「ご飯を食べる、おもちゃで遊ぶ、ハンドル付きの乗り物に乗るなど、両手がないと絶対にできないと勝手に思い込んでいたことを、ミニっちは次々にクリアしていきます。こちらが何らかの補助をしてできるようになったこともありますが、ほとんど彼自身が考え、編み出した方法です。結局、子どもの可能性をシャットアウトしていたのは私自身だったんだなと反省しました」(アンナさん)
ただ、そんなミニっちでも、おともだちから手のことを聞かれると、答えに詰まり傷ついた表情を見せることも……。そしてアンナさんに向かって、「ママ、こっちのおてて好き?」とたずねることもあるそうです。そんなときは、ミニっちの右腕を優しく包み込み、「大好き」とたくさんのキスとハグをしてアンナさんが笑顔を見せると、安心したミニっちからとびきりの笑顔が返ってくると言います。
新しい命を迎え入れる、心の準備ができるまで
ミニっちの出産で大きな衝撃を受け、それがトラウマになっていたアンナさんは、なかなか第2子のことは考えられなかったそう。そんなアンナさんの心を動かしたのは、言うまでもなくミニっちでした。
「3歳になる頃、ミニっちが『赤ちゃんがほしい』と話すようになり、あぁ、次はこの子をお兄ちゃんにしてあげたいな……という気持ちが芽生えました。夫もその気持ちを息子から聞いていたので、既に2人は赤ちゃんを受け入れる準備ができているんだなと。あとは私の心を整えるだけだと感じました」(アンナさん)
そしてアンナさんは、定期的に通っている婦人科の先生に、あのときの衝撃や不安が忘れられないと正直に打ち明けたそう。すると医師から、「忘れようとするのではなく、受け入れることで前に進んだらどうですか?」と助言されたことで、当時の記憶をいい思い出として変換し受け入れることができたと言います。そしておなかには、新しい命を宿りました。
「今回は絶対に無痛分娩で(笑)。何があっても大丈夫という覚悟は決めていますが、できる精密検査は初期からすべてやりました。もちろん、精密検査を受けても、生まれてきてからわかることもあるので不安が消えたわけではありません。息子はそんな身重な私を気遣ってくれますし、赤ちゃんが産まれたらオムツを履かせてあげるね、抱っこしてあげるね、など、とても楽しみに待ちわびています」(アンナさん)
早ければ8月末にも出産予定だと話すアンナさんは、家族みんなで赤ちゃんを迎え入れる準備は万全だと教えてくれました。
障害者と健常者の壁のない社会を目指し新たな活動を開始
美馬夫婦には、ある夢があると言います。それは、ミニっちと同じ境遇の子どもたちを対象とした野球教室を開くことです。それはミニっちが誕生し、新たな視点と価値観を持つようになった夫妻が思い描く、スポーツを通じて障害者と健常者の壁がない社会を作る一歩にもつながるのではないかと言います。
「右手首欠損症の元メジャーリーガー ジム・アボット選手ように、同じ境遇の人たちが活躍する姿を見せることで、道が開けるきっかけになることもあると思います。障害があるからできないではなく、子どもたちの夢を諦めなくていいような環境作りをすることが、私たちの夢です」(アンナさん)
ケガで苦しんだ経験のある美馬選手は、ミニっちに野球選手になってもらいたいといった思いは一切ないと話しているそう。ミニっちが産まれる前から、リハビリなどでパラリンピアンと交流を持つ美馬選手は、障害に対しとてもフラットで、ミニっちの先天性欠損症も最初から受け入れていた節があったと振り返ります。
「生後すぐ夫が話してくれた通り、ミニっちが私たちを選んで産まれてきてくれたおかげで、いろいろなきっかけや出会いをもたらしてくれました。そんなミニっちには、本当に感謝でいっぱいです」(アンナさん)
取材中、ミニっちをはじめ、ご主人や家族、医師、友人、ママ友、仕事関係の方々など、周囲にいるすべての人に対する感謝の気持ちを口にするアンナさん。アンナさんがまわりの人に愛情を注ぐ以上に、多くの愛情を注がれる理由がわかるチャーミングで素敵な女性でした。
写真提供/美馬アンナさん、取材・文/佐藤文子、たまひよONLINE編集部
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月の情報で、現在と異なる場合があります。
<プロフィール>
美馬アンナさん
1987年生まれ、女優、タレント、歌手。2014年に、プロ野球選手の美馬学氏と結婚。(現・千葉ロッテマリーンズ所属)。2019年10月に長男を出産し、先天性欠損症(右手首欠損症)と診断される。
2023年6月にInstagramにて第2子妊娠を報告。