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5歳までの十分な睡眠が、脳の発達には不可欠!よかれと思ってやっているその行動が、実は子どもの睡眠を妨げる【専門家】

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あくびをする母親
●写真はイメージです
yamasan/gettyimages

子どもが夜なかなか寝つかなかったり、夜中に頻繁に目を覚ましたりする場合は、生活習慣やママ・パパのかかわり方を見直すことがポイントです。子どもの睡眠に詳しい、大阪大学大学院連合小児発達学研究科准教授 毛利育子先生に、子どもがよく眠るために必要なことを聞きました。

5歳までの十分な睡眠が、脳の発達には不可欠

日本の子どもは、世界の子どもに比べると睡眠時間が短いといわれています。睡眠時間が短いと心配されるのが脳の発達です。

――乳幼児期に睡眠時間が短いと、脳の発達にはどのような影響が出るのでしょうか。

毛利先生(以下敬称略) 乳幼児期の脳はものすごいスピードで発達します。4~6歳で、脳の重量は大人の約95%になるともいわれています。そしてその脳の発達は寝ている間に行われます。だから0~5歳の睡眠は健やかな脳の発達のためにとても大切なのです。
子どもは夜、十分に眠ることで、脳の神経細胞同士をつなげてネットワークを構築します。その際、不要なネットワークは整理して、脳の中で情報処理がスムーズにできるようにしていきますが、この作業を行うのが5歳までといわれています。
そのため乳幼児期に睡眠時間が短かったり、夜中に目覚める回数が多かったりすると、脳の発達に影響を及ぼす可能性があります。

――乳幼児期の睡眠時間の目安を教えてください。

毛利 米国国立睡眠財団(National Sleep Foundation)が推奨する1日の子どもの合計睡眠時間の目安は、0~3カ月で約14~17時間、4~11カ月で約12~15時間、1~2歳で約11~14時間、3~5歳で約10~13時間です。
この睡眠時間を満たしていない場合は、睡眠時間が短いといえるでしょう。

よかれと思ってやっていることが、子どもの睡眠を妨げることも

子どもを寝かせるには、過剰な刺激を与えないことが第一です。しかしママ・パパがよかれと思ってやっていることが刺激となっていることも。

――子どもに十分な睡眠をとらせるには、どうしたらいいのでしょうか。

毛利 実は「子どもを寝かせるため」「子どもにいい睡眠を与えるため」と思って、ママ・パパがしていることの中には、逆効果なこともあります。
その一つが、夜泣きをしたとき、ママ・パパがすぐに抱っこしてあやしたりすることです。抱っこされたりすると、子どもはそれが習慣となり、それがないと、かえって眠らなくなります。
2歳以降も寝ぐずりが続く場合は行動性不眠症の可能性もありますが、行動性不眠症の原因の一つは、こうしたママ・パパのかかわり方です。

心当たりのあるママ・パパは、最初は少し泣きやむまで時間がかかって大変かもしれませんが、何もしないで見守ってください。抱っこしたり、あやしたりするのはやめてみましょう。実際に試したママからは、「本当に何もしないで寝つくようになって、育児がラクになった!」というような声も聞かれます。

――ほかにも逆効果なことはありますか。

毛利 眠る前に音楽を流すのも睡眠の妨げになりやすいです。オルゴールのBGMなど優しい音色の音楽も同様です。

子どもは睡眠前に刺激を受けると、なかなか眠らなくなります。たとえ優しい音色の音楽でも、子どもにとっては刺激になっています。眠る前に何かするときは、静かに絵本を読み聞かせる程度にとどめましょう。

スモールステップで無理なくできることから始めて、生活習慣の改善

子どもがよく眠るようになるには、動画やテレビの見せ方にも注意が必要です。初めから「無理!」とあきらめずに、できることから始めていきましょう。

――動画を見せると、寝つきは悪くなるのでしょうか。

毛利 寝る前に動画を見せるのはおすすめできません。理由の一つは、光刺激が眠りのためのホルモンであるメラトニンの分泌を抑制するからです。子どもに十分に睡眠をとらせるためには、動画やテレビは、夕方4時以降は見せないほうがいいのですが、現実的には難しいでしょう。そのため夕方以降に見せるならば「ママ(パパ)が夕食を作る間だけだよ」「6時になったら終わりだよ」と約束をして、それを守るようにしましょう。少なくとも、就寝1時間前からは見せないようにしましょう。

光の中でとくにスマホなどのブルーライトがより睡眠に影響を与えると考えられています。光源からの距離が近いほど影響が大きいです。そのため画面との距離が近いスマホで、動画などを見せることはおすすめできません。テレビなど、なるべく大きな画面で離れて見てください。

――子どもの睡眠の妨げにならないように、ほかに注意したほうがいいことはありますか。

毛利 子どもに十分な睡眠をとらせるためには、ママ・パパのライフスタイルの見直しも必要になります。たとえば夜、ニュースなどを見るためにテレビをつけておくことも、子どもにとっては睡眠を妨げる刺激になります。たとえ子どもは見ていなくても、テレビの音声が流れているだけで、子どもにとっては刺激になります。
しかしこうしたことをすべて一度に変えて行くことは現実的には難しいと思います。そのため無理なくできることから始めてください。

――無理なくできることとは、たとえばどんなことでしょうか?

毛利 朝、起きたらカーテンを開けて、日の光を入れるといったことからでもいいですし、昼寝の時間を少し早く切り上げてもいいです。スモールステップで1歩ずつ前に進んで、夜、十分な睡眠をとれるようにしていきましょう。

アプリで、子どもの睡眠をサポートする自治体も

専門家が監修した専用アプリで、子どもの睡眠をサポートする自治体もあります。アプリの名称は「ねんねナビ」です。毛利先生のグループが開発に携わっています。

――「ねんねナビ」について教えてください。

毛利 「ねんねナビ」は、現在、加賀市、弘前市など一部の自治体で導入している、子どもの睡眠をサポートするアプリです。ママ(パパ)に、子どもの起床時間や就寝時間、子どもの様子などを8日間に渡り入力してもらい、その内容をAIが分析して、生活習慣を改善するアドバイスを5つ提案します。ママ(パパ)には、その中から一つの提案を選んでトライしてもらい、その結果を送る――ということを繰り返しながら、生活習慣を改善して、睡眠の質を高めていくというものです。私たち睡眠の専門家や小児科医などが監修しています。

「ねんねナビ」の実験では、大阪府東大阪市の1歳半健診に来たママ(パパ)に1年間、「ねんねナビ」を使ってもらって検証しました。91%の家庭で改善が実感されています。平均の起床時間が約20分早くなり、布団に入ってから寝つくまでの時間も3分の2に短縮されたという結果が出ています。

――「ねんねナビ」を導入している自治体は一部とのことですが、生活改善を試みても、子どもが寝ないときはどうしたらいいのでしょうか。

毛利 子どもが寝ない原因はさまざまです。なかには病気が原因のこともあります。いびきをかいたり、寝ているとき呼吸が苦しそうなときは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるので、かかりつけの小児科を受診しましょう。睡眠中に歯ぎしりをしているときは、歯科で診てもらいましょう。

お話・監修/毛利育子先生、取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

子どもの睡眠は、脳の発達に深く関係しますが、毛利先生は「就学後も十分な睡眠がとれないと、学習面にも影響が出やすいことがわかっている」と言います。よく眠る睡眠習慣の土台を作るのは乳幼児期です。早起き・早寝ができるように生活習慣を見直してみましょう。

●記事の内容は2023年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

毛利育子先生(もうりいくこ)

PROFILE
大阪大学大学院連合小児発達学研究科 准教授。小児科専門医。小児神経専門医。専門は神経病理、神経炎症、発達障害。

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