SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 「かゆい、暑い、そしてうつらない」。息子の難病「道化師様魚鱗癬」のことを1人でも多くの人に知ってほしい【体験談・医師監修】

「かゆい、暑い、そしてうつらない」。息子の難病「道化師様魚鱗癬」のことを1人でも多くの人に知ってほしい【体験談・医師監修】

更新

小学生になり、家で宿題をする賀久くん。

長男賀久くん(6歳)の抱えている皮膚の難病「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」を多くの人に知ってほしいと、ブログ「産まれてすぐピエロと呼ばれた息子」を始めた濱口結衣さん(36歳)。ブログ開設と同時に多くの人に読まれ、とても驚いたといいます。現在はYouTubeでも積極的に情報発信を行っています。全4回のインタビューの最終回です。

産まれてすぐ家族会のことを知り、生後6カ月で参加

2022年に開催された「魚鱗癬の会」。

医師でも知らない人が場合があるという皮膚の難病「道化師様魚鱗癬」。2016年生まれの賀久くんは、この病気を抱えています。治療法もなく、元気に成長するかもわからないといわれるなか、濱口さん夫婦は魚鱗癬の患者・家族会「魚鱗癬の会 ひまわり」があることを知りました。

「夫は、賀久が産まれてすぐ、病気が確定していないときからいろいろ調べ、『おそらくは道化師様魚鱗癬だろう』と見当をつけていたそうです。その流れで家族会の存在を知り、いつか参加してみようと思っていたと言っています。

私も病院で皮膚の乾燥を防ぐ対症療法などは教えてもらったのですが、生活面では医師もどうしたらいいのかわからないような状態でした。患者数が少ない難病なので、『お母さんが試してみてよかったことを教えてほしい』と言われるほどでした。情報がまったくないなか、魚鱗癬のお子さんを育てている先輩方に聞くのがいちばんいいと思っていました」(濱口さん)

賀久くんが生後6カ月になったころ、濱口さん一家は家族会が行われる博多に向かいました。家族会に参加してみると、魚鱗癬患者の小学生が炎天下でサッカーをしたり、元気に走りまわっていたりする姿を見ることに・・・。

「元気に走り回っている子どもたちの様子には、賀久の今後を心配しているなか、大きな希望が芽生えました。

同時に、いろいろ話を聞くと、この難病が知られていないから学校入学、就職、いろんな申請を出すときなどに、たくさんの苦労があると知りました。見た目にも影響があるため、『うつるんじゃないの?』と心ないことを言われたり、難病申請をするときも、担当者もよくわかっていないので的外れなものを含め、膨大な書類を全部を渡されてしまったりするなど、みんながそれぞれ大変な思いをしていました。

それらのことを聞き、『もしこの病気を知っている人が増えたら、社会はどんなふうに変わるんだろう』と思ったんです。そこで、1回目の魚鱗癬の家族会への参加から帰って2週間後くらいにブログ『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』を始めました」(結衣さん)

ブログを始めたとたん、驚くほどの反響が。アクセスランキングも1位に

2017年7月から開設したブログはあっという間に人気ブログへ。

賀久くんが生まれたときの状況や、結衣さんの思いをつづったブログは、大きな反響を呼びました。

「最初は、一般人の自分がブログを始めても、だれも見ないだろうと考えていました。恥ずかしさもあり、夫にも言わずに始めたブログですが、開始から約2週間でアクセスランキングが1位になるほど多くの人の目にとまることになりました。まさかこれほど多くの人に読まれるとは想像もしなかったため、こわくなり夫にもブログ開設について打ち明けました。夫もアクセスの多さに驚いていました。

ここまでアクセス数が伸びたのは、おそらくタイトルにインパクトがあったからだろうと思います。もし事前に夫に相談していたら、きまじめな夫は『ピエロなんて言葉はよくない』と反対して、当たりさわりのないタイトルになっていたと思います。そうしたら、今のような大きな反響はなかったかも、ですね」(結衣さん)

顔を出してのテレビ、YouTubeに出演後、周囲の反応が変わった

YouTubeでは賀久くんののびのびとした日常生活が配信されています。

ブログを開始して数年たったころ、CBCテレビ(名古屋市)からテレビ出演の依頼がありました。

「それまでブログで発信はしていたものの、顔や実名は公表していなかったので、出演にはためらいがありました。そこで患者会『魚鱗癬の会 ひまわり』の代表・梅本千鶴さんに相談しました。
梅本さんは息子さんが魚鱗癬患者です。この病気を知ってもらうため、さまざまな活動をしてきていました。梅本さんからは『魚鱗癬患者の今後のためにもぜひ出演してほしい、絶対今後につながるから』と言われました。背中を押してくれた形です。私たちが行動することで、今後魚鱗癬で生まれてくる子どもにも『こういう活動をしてくれる人がいてよかった』と思ってもらえるかもしれないと感じ、覚悟を決めて出演することにしました」(結衣さん)

テレビ出演は大きな反響がありました。その後、YouTubeで毎週水曜日に賀久くんの日常や成長も配信も行われるようになりました。

「YouTubeの力はとても大きかったです。これまで賀久と一緒に外出すると『何あれ?』『気持ち悪い、近寄らないで』『やけど?うつるの?』といった心ない声が聞こえてきました。

それが、YouTube配信が始まってから、『YouTubeの賀久くん』『あの皮膚の病気の子だね』と、息子の耳に入る言葉が嫌なものではなくなり、見ず知らずの人からも声をかけてもらえるようになりました。大げさに言うと、すごく生きやすくなったと思います。ブログやテレビ、YouTube出演など、さまざまな活動をしていますが、私たちは『理解してほしい』とは思っていません。ただ多くの人に、こうした病気があることを知ってほしいんです」(結衣さん)

賀久くんは、CBCテレビのディレクターやカメラマンともとても仲よしです。取材のときは、一緒に遊んでいる時間のほうが長いほどだそう。

「取材のスケジュールはとくに決まっていなくて、イベントがあるタイミングに合わせることが多いです。ディレクターさんから『今度の週末、空いていますか?遊びに行っていいですか?』と連絡が来ることもあります。

賀久はディレクターさんもカメラマンさんも大好きです。『次はいつ来てくれるの』と待ちわびています。撮影なしで家族ぐるみで遊ぶこともあり、放送では自然な姿を公開してもらえていると思います」(結衣さん)

YouTube配信やブログは、賀久くんが嫌がったら即やめる予定

小学1年生になった賀久くん。毎日楽しく過ごしています。

現在の賀久くんは、ブログに掲載する写真も自分で選んでいます。けれど結衣さんと夫は、今後、賀久くんが『もうやめたい』と言ったタイミングでブログもYouTubeもやめるつもりでいます。

「もしかしたら、夫だけが何か発信を続けることはあるかもしれません。でも、この先、賀久が嫌がったら、ブログもYouTubeも即終わらせるつもりです。賀久は、少しずつ自分がほかの人と違うということを理解している段階です。半年くらい前に描いた自分の絵は、少し肌がボロボロになっていました。『自分の肌はみんなとちょっと違う、みんなはこんなにかゆくないけど、ぼくはすごくかゆい』と、かゆみの部分で、人と自分との違いを感じているようです。

思春期を迎えたら、賀久が見た目や人と違う部分で悩んだり、つらい思いをしたりする時期が訪れると思います。そのときどうするべきか、夫ともいつも話しています。でも、なかなか答えは出ません。そのときの息子の性格や考え方に合わせた寄り添い方をできるように、息子をきちんと見つめていきたいです」(結衣さん)

魚鱗癬のことを知ってもらうために、パンフレットを作成

魚鱗癬についてわかりやすくまとめたパンフレット。

今年に入り、濱口さん夫婦は、もっと魚鱗癬について理解してもらうため、パンフレットを作成しました。魚鱗癬の特徴や、人にはうつらないこと、数種類ある魚鱗癬のタイプについての紹介、「魚鱗癬の会 ひまわり」についての紹介など、A4サイズで4ページ、A3サイズで裏表に収まるものです。

「『魚鱗癬の会 ひまわり』の代表・梅本さんや専門の医師にも監修してもらい、コンパクトに基本的なことはすべてわかるようにしようとしました。

魚鱗癬患者本人や家族のためになることを思って作成しました。ブログを書いていると、魚鱗癬の子どもが生まれたというメッセ―ジが毎年数件届きます。そのときに、『こんなときどうしたらいいですか?』と質問されることもあるんです。私たちもわからないことだらけだったから、基本的なことがまとめられたものがあるといいなと思ったのが、パンフレットを作るきっかけです。

今後も、賀久の成長を見守りながら、魚鱗癬の患者や家族ともコミュニケーションをとっていきたいです。『魚鱗癬の会 ひまわり』は、代表の梅本さんが福岡県在住なので毎年福岡県でみんなが集まります。少し遠いという方もいるので、愛知県あたりでも会える機会を増やしていけたらいいなと思っています」(結衣さん)

【小川先生より】少しでも多くの人に皮膚の難病のことを知ってほしい

皮膚の難病で生まれた賀久くんが普通のお子さんと同じように成長することの難しさを少しでも知ってあげてほしいと思います。温かい家族に見守られている賀久くん、これからもますます健やかに成長されることを心から祈ります。

お話・写真提供/濱口結衣さん 監修/小川昌宏先生 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

賀久くんをとても大事に、愛情深く育てている濱口さん夫婦。わが子のことはもちろん、ほかの患者や家族のために、もっと病気のことを知ってもらいたいという思いが伝わってきます。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

「ピエロの母オフィシャルブログ」

小川昌宏先生(おがわまさひろ)

小児科医。国立病院機構三重中央医療センター臨床研究部長。日本小児科学会専門医。滋賀県出身。三重大学医学部卒業、旧国立津病院の研修医を経て、三重県内の小児科で活躍。現在は国立病院機構三重中央医療センターで小児病棟とフォローアップ外来を担当。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』

道化師様魚鱗癬。ピエロ?魚のウロコ?こんな病気があることを知ってほしいという母親の発信。100万人に1人の難病・奇病に立ち向かう、親と子のありえないような本当の話。ピエロの母著/1870円(KKベストセラーズ)

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。