「僕は5歳のときに小児がんになりました…」病気と闘う少年がレモネードの絵に込めた想い【体験談】
8月1日に全国発売され、あっという間に売り切れたたファミマの「みんなのレモネード」。パッケージラベルのイラストを描いたのは、小児がん患児とその家族を支援する「みんなのレモネードの会」の子どもたち。4歳で脳腫瘍が発病、今も治療を続けている林和樹くんのイラストも採用されました。
病気と闘いながら、こんな優しいタッチのイラストを描く和樹くん。どんな家庭で育まれ、今を過ごしているのか知りたくて、和樹くんとご家族に会いに行きました。
ご自宅では、シャイな和樹くんとご両親。そして双子の妹の夏姫ちゃん、愛犬クッキーが迎えてくれました。
息子が描いたラベルが選ばれた!うれしくてお店の前を通るたびに買ってはSNSにあげた
――― 和樹くんはどんなことを考えて、イラストを描いたんですか?
和樹:……
母:恥ずかしがり屋で、人前で話すことがあまり得意ではないんです(笑)。ファミマさんに提出したコメントではこんなことを言っています。
――― 引用
僕は5歳のときに小児がんになりました。今も治りょうを続けながら学校にいっています。デザインに採用されてとても嬉しいです。お店で発売されるのが楽しみです。たくさんの人に見て買って飲んでもらいたいです。
絵をかく時、レモンの会のメンバーの事を考えながらかきました。遠くの場所でもちがう年でも僕たちはみんな友達です。
レモンは1つの木にたくさん実がなります。形も大きさもそれぞれ違うけど、みんな集まって大きな木になります。僕たちもレモンみたいだなと思いながらかきました。
――― 引用ここまで
――― 和樹くんの描いたラベルをファミマの店頭で見たとき、どう思いましたか?
林和樹さん(以下和樹、敬称略):うれしかった。
林明子さん(以下母):発売した当初は「買い占めちゃいけないかな?」って、遠慮して2本ずつしか買いませんでした(笑)。知り合いに差し上げると皆さんとても喜んでくださるのもうれしかったです。
林広樹さん(以下父):和樹の絵が選ばれたって聞いたときは、「マジ、すごいじゃん」ってびっくりしました。みんなのレモネードの会のSNSでも、「私も見つけました」「ここで見つけました」って盛り上がっていました。実物を手にしたときは本当にうれしかったですね。どこへ行ってもファミマの前を通りがかるとつい探しちゃいましたね。
寝耳に水の発病。16時間に及ぶ大手術をしたけれど
――― コメントのなかにも、小児がんになって今も治療中とありますが、和樹くんのご病気についてお話しいただけますか?
母:和樹の病気(神経節芽細胞腫)が発症したのは、2016年8月。4歳の誕生日直前のことでした。
その前から具合が悪くてときどき吐くようなことがあったのですが、近くのお医者に「子どもだって疲れると吐くことはある」と言われたので、そんなに心配していなかったんです。
でも、嘔吐を繰り返しだんだん食べられなくなったので、念のために1泊の検査入院することになりました。明け方にウトウトして、なんだか様子がおかしくなってCTを撮ったところ、頭の中に大きな腫瘍が見つかり、慶應病院に転院して、緊急手術になりました。
――― 手術はうまくいったのですか?
夜通し16時間かかるような大きな手術でした。
でも手術で終わりではなくて、見るからにいい状態ではなかったので、検査の結果を待つ前に、化学療法と放射線治療が始まりました。
治療を開始してすぐ、初めの手術から1カ月も経っていないのに、MRI検査で原発巣の再発が見つかり、2度目の手術になりました。
そこから半年、大量化学療法を行い、2017年3月にようやく退院できました。
でも、ようやく退院したと思ったら、1年後にまた別の場所で腫瘍が見つかりました。そのときは局所の放射線治療だったので、入院はせず、毎日、通院していました。
そして、2020年にまた再発……。治療して落ち着いても、また別の場所で腫瘍が動き出してしまう。そして、探して、探して、やっと和樹に合った薬が見つかり、辿り着き、ようやく落ち着いた感じです。この薬に出合ったことは奇跡だと思っています。今は、治療しながら元気に学校に通っています。
病気にならなければ気づけなかった大切なこと。しんどいことの先には意外と素晴らしいことが待っているのかも
――― 発病、入院、2度の手術、化学療法と、和樹くんにとっても、ご両親にとってもとても過酷な経験だったのではないでしょうか?
母:今は、私たち親は時系列に並べて当時のことを思い返したり、頭の傷を見たりして、あ、こんなことがあったな、そうだったなっていう感じです。
小学校の入学式が終わってから、ランドセルを背負って病院に行って、放射線治療したなとか……。
幸いなことに、和樹は小さかったこともあって、当時のことはあまり覚えていないようです。
――― 先ほどから、和樹くんの病気についても淡々とお話しされていますが、きっと私が想像する以上にご苦労されていると思います。
父:大変なこともありましたが、たくさんのいい思い出もあります。「有明・お台場リレーハーフマラソン」の「親子ラン・1km」に和樹も出場しました。もちろん退院してすぐの和樹はダントツでビリでしたが、和樹の病気を知った主催者がゴールテープを用意してくれました。
先にゴールして待っていた私と娘も、和樹の姿が見えたので最後は一緒に走ってゴールしたんです。小さい身体で最後までよくがんばってくれたなと思います。
母:最初の入院のときの先生方は、「この子を助けられないかもしれない。いきなり明日亡くなっちゃうかもしれない」って思ったそうです。実際にできているかどうかはわからないですけれど、「毎日を大切にしなくちゃ」って思います。
父:息子がこの病気になってから、いろいろ調べましたが、日本のような先進国では滅多なことで子どもは亡くなることはありません。本当に低い確率です。
母:でも、実際に和樹と一緒に入院していた5人の子のうち、3人は亡くなっています。
父:小児がんになっても8割近くは治ると言われていますが、それは良性腫瘍も含めての数です。幸運なことに和樹は、今ここに、こうして、生きていてくれています。これは運もあるけれど治療してくださった先生方の努力の賜物だと思っています。
そのおかげで、和樹が病気にならなければ気づけなかった、たくさんの大切なことに気づくことができました。もちろん、病気になったことは不幸かもしれないけれど、もし病気になっていなかったら、きっと私たち家族は、ポワーンと生きていたかもしれません。
何かしらの身体的に障がいがある子どもがいれば、家族の負担は大きいだろうと思うけれど、そのしんどいことの先に意外に素晴らしいことがあるのかもしれないって思っています。
特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。
お話・写真提供/林広樹さん、林明子さん 取材・文・写真/米谷美恵、たまひよONLINE編集部
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年9月の情報であり、現在と異なる場合があります。