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まぶたがはれる霰粒腫/ものもらいってどうしてできるの?【ママ眼科医】

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小さなアジアの女の子は彼女の口と彼女の手で鼻を覆います。
●写真はイメージです
GOLFX/gettyimages

「子どもの目の病気について正しい情報を」と活動するママ眼科医の先生たちのリレーコラムをお届けします。
4回目となる今回は、「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」について。子どもでも大人でも、まぶたにできものができて、腫れて痛くなることがあります。これらのできものの多くが霰粒腫。俗に「ものもらい」といわれるものです。地域によっては「めばちこ」「めいぼ」などと呼ばれます。南青山アイクリニックなどに勤務する眼科医の加藤直子先生による解説です。

霰粒腫/ものもらいの正体は、マイボーム腺の梗塞

まぶたには「マイボーム腺」という脂質を分泌する腺があります。マイボーム腺はまぶたの中にある瞼板(けんばん)という構造の中を縦に走っている腺です。標準的な人では、上まぶたに30〜40本、下まぶたに20〜30本のマイボーム腺があります。
マイボーム腺は何のためにあるのでしょうか? 人間の涙は、タンパク質や電解質を含む水の層でできており、その表面に薄い油の膜(油層)が浮いている構造になっています。油層があることで、薄い涙の層は目を開けていてもすぐには蒸発しないしくみになっています。この油層の成分を分泌するのがマイボーム腺で、目の表面の健康を維持するのに大切な腺なのです。
そのマイボーム腺が、時々詰まってしまうことがあります。マイボーム腺の中で脂がかたまると、マイボーム腺梗塞という状態になります。この詰まった脂に対して、生体が炎症を起こした状態が、霰粒腫/ものもらい(以下ものもらい)の正体です。

脂を分泌するマイボーム腺

出典/日本眼科学会HP

まぶたの中にはマイボーム腺という脂を分泌する腺があります。上まぶたに30〜40本、下まぶたに20〜30本のマイボーム腺があります。ものもらいは、マイボーム腺の脂が詰まることで起こります。

霰粒腫(ものもらい)

できものができてまぶたが腫れます。少し痛みを伴うこともあります。触ると腫れの中心にしこりのようなものを触れます。

ものもらいはどんな経過をたどるの?

ものもらいはどの年代にもできますが、小さな子どもにもできやすいのが特徴です。とくに、就学前の年齢では、2〜3歳ぐらいが多いようです。
通常は悪いものではなく、放置しておいてもいずれは自然に治ってしまうことが多いです。
自然経過は、基本的にはニキビと同じように考えるとわかりやすいと思います。すなわち、最初は赤くややかたく、張りのあるふくらみで、触ると中にしこりのようなものがあるのがわかります。時間が経つと少し熟れたようにやわらかくなり、指で軽く押すとフニャフニャと張りがない感じになってくることがあります。その状態になってしばらくすると、上の皮膚が薄くなって、勝手に破れて膿(うみ)が出てくることがあります。ものもらいがどちらかというとまぶたの裏側に近いところにできた場合には、まぶたの裏の結膜を破って膿が出てきます。目やにがたくさん出てきたと感じることもあるでしょう。膿が出てしまうと通常は痛みが治まって、治っていく場合がほとんどです。
まぶたのあたりは皮膚が薄く、血流も豊富な部分なので、傷跡はほとんど残らずに治る場合が多いです。

ものもらいはどんな治療をするの?

腫れが強い場合や、触って弾力性があってかたく、痛みが強い場合には、無理に膿を出そうとせずに薬で炎症を抑えます。本来、ものもらいはマイボーム腺の脂質に対する炎症反応ですので、抗炎症薬(非ステロイド系や低濃度ステロイド)の目薬や眼軟膏が有効です。
まぶたが腫れ上がって、目をふさいでしまうようなひどい腫れがある場合には、抗炎症薬や抗生物質の飲み薬が処方されることもあります。最初の数日は飲み薬で炎症を引かせて、腫れと痛みがおさまってきたら、そのあとは点眼薬や眼軟膏などの治療だけにして徐々に薬を減らしていくのが一般的です。

細菌感染を伴う場合は、麦粒腫といいます

時々、ものもらいにしては痛みが強く、まぶたがどす黒いような赤い色に腫れているケースを見かけます。この場合には、ものもらいではなく細菌感染を起こしている可能性があります。細菌感染をしているものを麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と呼びますが、どこに感染しているのかを突き止めること、ものもらいと麦粒腫を厳密に区別することは難しく、また区別をしたところで治療内容に変更があるわけではありません。ただ、感染が疑われる場合には、抗炎症薬よりも抗生物質の割合を多くした薬が処方されます。

ものもらいが慢性化した場合はどうする?

急性期の腫れが治ったあと、ものもらいがきれいに治るまでに数週間かかることもあります。中には、腫れが引いても触るとコリコリとした小さなしこりが残るケースもあります。そういったしこりが完全に消えるまでの間、ずっと薬を使う必要があるのかは、眼科医の間でも意見が分かれるところかもしれません。
私の個人的な考えでは、赤みと腫れが引いてきたら、もう消炎のための薬は使う必要はあまりないと思います。そのような場合に処方される薬の多くは弱いものなので、副作用の心配はほとんどありませんが、薬をつけることが日常生活でストレスになることもありますね。ものもらいの場合には、急いで治療をしなくても、何カ月かするうちに自然に小さくなって消えていく場合も多いものです。

ステロイドの注射をすることもある!?

海外では、ものもらいの病変部にステロイドの薬液を注射するという治療法も行われています。しかし、日本では大人はともかく、小さな子どもに注射をすることはめったにありません。子どもは動いて危ないので、とくに目の近くの注射はあまりしないことと、注射をしても治るまでの時間が若干早くなるだけで、最終的な治り方には大きな差がないと考えられるからです。

大人の場合は手術をすることも

しこりが残って何カ月たっても消えない場合、ほかの人から見て明らかに目立って気になる場合には、たまった膿を出すための小手術をすることもあります。ものもらいが皮膚側に腫れている場合には、皮膚を小さく切開して膿を出し、最後に1〜2針皮膚を縫合して終わります。糸は1週間程度で抜糸します。まぶたの内側に腫れている場合には、まぶたの裏側から小さく切開をして膿を出し、あとは縫わずに終了します。どちらもほとんど傷あとを残さずきれいに治ります。

しかし、手術は大人の場合なら局所麻酔で行いますが、小さな子どもの場合には、泣いたり動いたりすると危ないので、あまり積極的には手術をしないところが多いでしょう。もしする場合には、全身麻酔が必要です。睡眠薬で眠らせるだけでは、まぶたにメスを入れた瞬間に痛みで起きてしまう可能性があります。
ただ、ものもらいの多くはほうっておいても数カ月で治ることが多いために、多くの施設では、子どものものもらいはよほどの理由がない限り、手術ではなく薬物治療で様子を見るところが多いのではないかと思います。

監修・文/加藤直子先生 構成/たまひよONLINE編集部

「ものもらい」ができてしまうと軽い痛みやかゆみが気になるだけでなく、視界が気になることもあるかもしれません。人にうつるものではありません。

加藤直子先生(かとうなおこ)

PROFILE 
眼科医。フリーランスで南青山アイクリニック、慶應義塾大学病院、市川総合病院、横浜市大病院眼科などに勤務。角膜や結膜など、目の表面の病気の治療を得意としている。すでに成人した娘がいて、子育てはひと通り経験済み。

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