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過度の甘やかしは、脳の発達にマイナスでしかない。年齢相当の役割を与えることで、子どもの「こころの脳」は育つ【小児脳科学者】

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料理を手伝う女の子と母親
●写真はイメージです
maroke/gettyimages

脳の発達には順序があり、論理的な思考によって問題の解決などができるようになる「こころの脳」が育つのは10~18歳ごろといわれています。また「こころの脳」は、幼児期からの土台作りが大切ですが、土台を作るためにおすすめなのが、小児脳科学者 成田奈緒子先生が実践している「ペアレンティング・トレーニング」という考え方です。
家庭でできるペアレンティング・トレーニングの内容と、こころの脳の育て方について、成田奈緒子先生に聞きました。「脳育て」3回シリーズの3回目です。

年齢相応の家庭での役割が、こころの脳を発達させる

「こころの脳」は、10~18歳ごろに発達する脳です。最も発達するのは10~14歳ごろですが、10歳ごろに急に発達するわけではなく、幼児期からの土台作りが大切です。

――「こころの脳」について教えてください。

成田先生(以下敬称略) 幼児期は、欲求のままに行動し、喜怒哀楽を素直に言動にうつします。そこから脳が発達して、10歳を過ぎたころになると前頭葉までつなぐ神経回路が構築されます。
これにより大脳新皮質の中で最も高度な働きをもつ前頭葉を用いて、論理的な思考を行いながら問題解決などができるようになります。

――青少年の犯罪が社会問題となっています。こうしたことも、こころの脳の発達と関係しているのでしょうか。

成田 こころの脳の発達だけが関係しているわけではありませんが、青少年の犯罪など問題行動がある場合は、脳が発達する過程で何か原因がある可能性があります。たとえば過度な甘やかしや教育虐待、子どもに年齢相応の役割を与えないなどです。こうした子育てが、脳の発達に影響を与えることがあります。

――子どもに年齢相応の役割を与えないとは、どういうことでしょうか。

成田 たとえば幼稚園や小学生になっても子どもに家事を手伝わせない、小学5~6年生になっても、短時間の留守番もさせないなどです。
2023年10月、埼玉県の自民党県議団が提出した、子どもの放置をめぐる虐待禁止条例の一部改正案に批判が相次いで撤回されました。この条例は、子どもだけのおつかいや外出、留守番などは虐待に当たるとしたものですが、こうしたことは子どもの脳の発達にはマイナスです。

確かに、痛ましい子どもの虐待事件は後を絶たず対策が必要なのはわかります。でも過度な対策は、子どもの健全な成長に影響を及ぼします。

ママ・パパ自身が「ありがとう」「ごめんね」と言っているか、振り返ってみて

こころの脳の発達には、親子関係が深くかかわっています。ママ・パパが、適切に子どもとかかわり、よりよく発達させていく「ペアレンティング・トレーニング(以下ペア練)」を取り入れて「こころの脳」を育てるポイントを聞きました。

――こころの脳の発達を促す、ペア練について教えてください。

成田 まずは「ありがとう」「ごめんね」が言えるようになることです。子どもだけでなく、ママ・パパも同様です。
よく子どもに「謝りなさい」「ごめんねは?」と言うママ・パパがいますが、自分自身は謝っていますか? 振り返ってみてください。

私が日々カウンセリングや診察をしていて思うのは10分遅刻しても、「遅れてすみません」のひと言もないママ・パパが多くいるということです。遅れてきたのに何もなかったかのように、普通に診察室に入ってきて、子どもの様子などを話し始めます。
以前、そのようなママが「うちの子、謝らないんです」と相談してきたので、「ママも謝らないのでは?」と言ったら、「そんなことありません。私は謝ります」と言うので「今10分遅刻してきたのに、私に謝らなかったわよ」と言ったら、「えっ? そうですか?」と驚いていました。自分はできていなくても、気づかないものなのです。
まずはママ・パパ自身が、だれに対しても素直に謝ったり、素直にお礼を言える人になりましょう。家庭は社会の縮図です。おうちの中で、ママ・パパが自然と「ありがとう」「ごめんね」と言っていると、子どももまねをして「ありがとう」「ごめんね」が言えるようになります。

――家庭の中でスムーズに「ありがとう」とお礼を言ったり、「ごめんね」と謝ったりしやすくするにはコツがありますか。

成田 先ほど子どもの放置をめぐる虐待禁止条例のところでも触れましたが、幼児期からお手伝いをさせたり、小学5、6年生になったらお留守番をさせたりすると、家庭の中で自然と「ありがとう」「ごめんね」と言えるようになるのではないかと思います。

たとえば幼児なら、サラダを作るときにレタスをちぎったり、テーブルをふいたり、食器を並べたりするお手伝いはできるのではないでしょうか。また小学5、6年生になって、ママ・パパが仕事に行っている間、留守番をしていたら「帰ったらすぐに夕食が食べられるようにお米をといで、ごはんをたいておいてください」「パンと牛乳がないから、買っておいてください」と頼んだりすると、お手伝いをしてくれると思います。
子どもがお手伝いをすると、家族の中で自然と「ありがとう」「〇〇くんが、手伝ってくれて助かったわ!」という会話が生まれます。こうした言葉かけが、こころの脳の発達を促します。

ママ・パパが自分の趣味を楽しむ姿を見せると、子どもの脳は育つ

子育て中は忙しくて、つい自分のことは後回しになってしまいがちですが、「ママ・パパは、自分の趣味の時間を大切にしたほうが、子どもの脳の発達にはプラスになる」と成田先生は言います。

――こころの脳の発達には、ほかにどのようなことが必要でしょうか。

成田 ママ・パパ自身が、自分の趣味の時間を作ることも、子どものこころの脳の発達を促します。
たとえば本を読んだり、絵を描いたり、音楽や映画鑑賞をしたり、編み物をしたり、釣りに行ったりするのもいいですね。ママ・パパが、自分の趣味の時間を楽しむ姿を子どもに見せていると、子どもは少しずつ影響を受けていきます。
たとえば釣りが趣味で、子どもと一緒に釣りに行っていると、魚に興味を持ち始めて、大学受験のときに水産学を志望する子どももいることでしょう。

わが家も、私自身が読書が好きで本をよく読んでいます。娘も私が本を読んでいる様子をよく見ていて、小学生のころは、文字が多い本ではなく歴史上の人物の自伝まんがなどを読んでいました。でも大学生になったころから読書に興味を持ち始めて「おすすめの本があったら貸して」と言ってきたりします。私のことをよく見ていたんだなと思います。
子どものこころの脳を育てるのは、家庭がベースです。子どもはママ・パパの姿をよく見ていますよ。

お話・監修/成田奈緒子先生

取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

子どもの脳を育てるというと特別なプログラムなどをイメージしがちですが、必要なのはまずは家族の中で「ありがとう」「ごめんね」と言えるようにするなどごく普通のことです。しかし成田先生は「この普通のことができないママ・パパもいるので、自分自身は大丈夫か一度、振り返ってみてください」と言います。

●記事の内容は2023年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。

『改訂新装版 子どもの脳を発達させる ペアレンティング・トレーニング』

子どもの「からだの脳」「おりこうさんの脳」「こころの脳」を育てる、6つのペアレンティグ・メソッドを紹介。成田奈緒子、上岡勇二著 子育て科学アクシス編/1870円(合同出版)

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