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欧米では1970年ごろから、生まれたばかりの赤ちゃんにはドライテクニックを行うのが主流に。日本ではまだ6割程度!?【専門家】

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新生児
●写真はイメージです
kuppa_rock/gettyimages

生まれた直後の赤ちゃんの体には血液や胎便(たいべん)などがついているので、清潔にする必要があります。その方法には、汚れは落とすけれど胎脂(たいし)は残すドライテクニックと、赤ちゃんを湯に入れて汚れを洗い流す沐浴(もくよく)があり、やり方は施設によってバラバラなのだとか。赤ちゃんのスキンケアと皮膚の状態について研究している、大分県立看護科学大学准教授の樋口幸先生に、出産入院中の赤ちゃんの体を清潔にする方法の移り変わりと、今の課題について聞きました。

ドライテクニックを行う産院が増えているけれど、やり方は産院ごとに違う

――ドライテクニックとはどのような方法ですか。

樋口先生(以下敬称略) 産まれた直後の赤ちゃんの皮膚についた、血液などの汚れだけをふき取り、胎脂は残しておく方法です。
胎脂には、赤ちゃんを病原体や寒さなどから守るはたらきや、保湿剤のように赤ちゃんの皮膚を保護するはたらきがあります。つまり、赤ちゃんを外敵から守ってくれるとても大事なものなんです。
沐浴だと血液などの汚れだけでなく、胎脂も落としてしまいますが、ドライテクニックなら胎脂を残すことができます。

また、WHO(世界保健機関)が1989年に出した母乳育児成功のための10カ条の中に、「分娩30分以内に母乳を飲ませられるように援助する」があります。生まれてすぐに沐浴をすると赤ちゃんが疲れ、授乳する前に寝てしまうことが多いのですが、ドライテクニックなら授乳がしやすくなります。

このように、ドライテクニックにはメリットがあることから、日本では2000年以降にドライテクニックを行う施設が増えてきました。私たちが全国調査を行った2013年~2014年時点では、出生直後は何もしない、あるいはドライテクニックを採用する施設が半数以上を占め、生まれた翌日に沐浴を行う施設が多かったです。

――生まれたばかりの赤ちゃんを清潔にする方法に、ルールやガイドラインはないのでしょうか。

樋口 2011年に日本産婦人科学会は、正期産で問題なく生まれた赤ちゃんに沐浴を始める時期について、「呼吸などが落ち着く生後6時間以降とする」という提言を出しました。
さらにその翌年、日本未熟児新生児学会が正期産の赤ちゃんの沐浴開始時期や頻度について、日本産婦人科学会の提言に加え、「できれば生後2~3日以降に行う。連日の沐浴は赤ちゃんが疲れてしまうので避けるのが望ましい」と提言しています。

でも日本では、出産直後の沐浴・ドライテクニックのやり方について示すガイドラインはないんです。そのため、私たちが行った全国調査の結果を分類したら、生後5日までの赤ちゃんを清潔にする方法は、なんと86パターンにもなりました。
ドライテクニックを行うのか、行う場合何日間か、沐浴はいつから行うのか、沐浴のとき洗浄剤を使うのか使わないのか、沐浴後の保湿はどうするのかなどのことは、各施設が独自の判断で行っていることが、この数字からわかります。

「産湯」は赤ちゃんの身を清め、健やかな成長を祈る儀礼的な習慣

――日本には古くから、赤ちゃんを産湯(うぶゆ)に入れる習慣がありました。

樋口 出生直後に行う沐浴を「産湯」と呼びます。一般的な方法は、家庭で行う沐浴と同じです。
生まれたばかりの赤ちゃんの体には、血液がついています。日本には血液を「けがれ」と考える風習があり、赤ちゃんが生まれた土地の守護神である産土神(うぶすながみ)が宿る水、つまり「産湯」で身を清めさせるという儀礼的な習慣がありました。これには、新生児の健やかな成長を祈るという気持ちが込められています。
さらに、日本には入浴で体を清潔にする「ふろ文化」が平安時代からあったといわれていています。これらが伝承され、「産湯」という習慣として受け継がれてきたわけです。

――昔から出産直後に産湯に入れていたのでしょうか。

樋口 平安時代から室町時代ごろは医療技術がとても未熟ですから、さい帯の切断面からの感染を恐れて、出生当日は赤ちゃんを沐浴せず、出生3日目に「初湯(御湯殿)の儀式」を行っていたようです。出生直後に産湯を入れるようになったのは、江戸時代中期以降だろうといわれています。
でも、江戸時代後期ごろには、出産当日に産湯に入れないほうが痘そう(天然痘)が軽く済むという俗説が広まったりして、初めて沐浴するのは当日がいいのか数日後のほうがいいのか、いろいろな意見が出されていたという研究報告があります。

時代がぐっと下って戦後になると、出産は家庭で行うものから医療施設で行うものへと急激に移行。新生児室での血液を介した感染を予防することが、沐浴の目的となりました。

――「たまひよ」は今年30周年を迎えました。たとえば今のママ・パパの世代が生まれたころ、今から30年くらい前の沐浴は、どのようにされていたのでしょうか。

樋口 1987年に行われた沐浴に関する全国調査では、7割以上の施設が沐浴を行い、それらの施設の約半数で、出生直後に石けんや殺菌剤の入った湯を使って沐浴をしていたと報告されています。ちょうどママ・パパの世代でしょうか。

出生直後の赤ちゃんを清潔にする方法は、エビデンスに基づいた指針が必要

――欧米諸国では、生まれたばかりの赤ちゃんを清潔にするために、どのような方法が採られてきたのでしょうか。

樋口 日本の沐浴の歴史のように、大昔に欧米がどのようにしていたのかを調べた研究論文があるのかどうか私は知りませんが、1960~1970年代の欧米諸国の沐浴について報告された論文はあります。それによると、この時代に欧米諸国で新生児期の感染症のまん延が問題となり、予防策として、消毒剤を入れた湯で出生直後の赤ちゃんを沐浴した時期があったそうです。
ところが、このとき使われた消毒剤の毒性により、赤ちゃんに神経障害が起きたり死亡したりするケースがあって、問題になったとか。そして1974年にアメリカ小児科学会から、沐浴に替わる方法としてドライテクニックを推奨するという提言が出されました。

――このとき示されたドライテクニックは、どのようなものでしたか。

樋口 出生後、体温が安定するまでは手を加えずに胎脂を残すこと、血液や胎便などの汚染がある場合は、その部分だけ滅菌した水に浸したコットンでふき取る、という方法でした。

――欧米では1970年代ごろから沐浴からドライテクニックへ移行したようですが、日本では現在も、赤ちゃんの体を清潔にするためにさまざまな方法が採られている、ということですよね。

樋口 そうなんです。いくつかの研究をしたことで、それが今の日本の課題だと感じています。
どの施設で出産しても、赤ちゃんにとって最適な方法で体を清潔にできるようにすることが大切です。そのためにはエビデンスに基づいた方法をまとめ、日本全国に広める必要があるので、これからも新生児の体の清潔とスキンケアに関する研究を続けていきたいと考えています。

お話・監修/樋口幸先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

樋口先生によると、「日本で長らく行われてきた『産湯』は、儀礼的な習慣の要素が強く、科学的な根拠に基づいた方法ではない」とのこと。また、ドライテクニックを採用している産院が増えてきているものの、統一された方法ではないそうです。生まれたばかりの赤ちゃんの体を清潔にする最適の方法がまとめられ、どの産院でも同じようなケアをしてもらえるようになることを期待したいものです。

●記事の内容は2023年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。

樋口幸先生(ひぐちさち)

PROFILE
大分県立看護科学大学 専門看護学講座 助産学研究室 准教授。博士(健康科学)。同大学卒業後、大分県済生会日田病院で看護師として勤務。同大学大学院で助産師資格を取得し、葛飾赤十字産院で分娩室とNICUに勤務。現在は助産師としての週1度の臨床勤務での経験を生かしながら、教育・研究に励む。

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