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生まれた季節によってアレルギーのリスクが高まる!?春・夏生まれの赤ちゃんは、花粉症になりやすい可能性も【研究発表】

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少女が冷える
●写真はイメージです
RyanKing999/gettyimages

生まれた季節とアレルギーの発症についてはいろいろな見解が出ているようですが、実際に関係はあるのでしょうか。
山梨大学大学院の小島令嗣先生たちは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国出生コホート研究(エコチル調査)」のデータを使って、生まれた季節とアレルギーの関係を調べました。その結果わかったこと、ママ・パパに知っておいてほしいことなどについて聞きました。

全国4323人の子どもを対象に、花粉症発症とチリダニ感作について検証

――小島先生たちが行った調査について教えてください。

小島先生(以下敬称略) 「エコチル調査」は、環境省が2011年から国内の妊婦10万人超とその子どもを対象にして行っている大規模疫学調査です。赤ちゃんが母親のおなかにいるときから13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかしていくものです。
私たちはこのデータの中から詳細調査に参加した4323人の子どもについて、3歳のときの花粉症発症リスクと、2歳のときのチリダニ感作(※)のリスクについて、生まれた季節との関係などを解析しました。

――生まれた季節はどのように区分したのですか。

小島 3~5月を春生まれ、6~8月を夏生まれ、9~11月を秋生まれ、12~2月を冬生まれとしました。
スギ花粉にさらされている状況(「スギ花粉ばく露」と言います)については、環境省公式サイトの都道府県別の年間スギ花粉飛散量のデータを使用しました。そのデータを調査対象の子どもが住む居住地に割り当て、花粉にさらされる量によって4つのグループに分けて検討しました。

――2歳時点での血液中のビタミンD濃度も検討材料にされたとか。

小島 ビタミンDが欠乏するとアレルギー性鼻炎の有病率が高まるなどの研究がすでにあるため、血中ビタミンD濃度との関係も同時に検討しました。ビタミンDのレベルは以下のように分類しました。

血中ビタミンD濃度(ng/ml)
(1)20以下:ビタミンD欠乏症
(2)20~30:ビタミンD不足
(3)30以上:正常

(1)は全体の約46%、(2)は約42%、(3)は約11%という割合でした。

※感作とは:アレルゲン(アレルギーの原因になる物質。今回の調査ではチリダニ)が体の中に入ると、免疫機能が異物とみなして排除しようと働き、「IgE抗体」という物質が作られ、アレルギーの準備状態になる。この状態を感作という。

春・夏生まれは花粉症になりやすく、花粉の量は「やや多い」くらいが要注意!?

――調査研究によって、どのようなことがわかりましたか。

小島 3歳のときの花粉症発症について、冬生まれの子どもを基準にしてみたとき、春生まれの子どもは2.08倍、夏まれの子どもは1.89倍多くなっていました。秋生まれは有意な差はありませんでした。
花粉にさらされる量との関係については、いちばん少ないレベル1のグループの子どもを基準にして見た場合、次に花粉にさらされる量が多いレベル2の子どもは花粉症のリスクが2.06倍になります。しかし、レベル3は1.39倍、レベル4は1.54倍という結果になりました。

ビタミンDは、不足している子どもと比べて、十分な子どものほうが花粉症のリスクが高いという数字が出たのですが、今回の結果だけから「ビタミンDが少ないほうが花粉症になりにくい」とは言えません。他の集団で検証するなど研究の積み重ねが必要と考えています。ビタミンDの不足はくる病になりやすくなるなど、別のリスクも高まります。

今回の研究ではビタミンDと花粉についても同時に分析したので、春・夏生まれの子どもの花粉症発症リスクが高まるのは、ビタミンDの量と花粉にさらされる量の違い以外の、季節特有のメカニズムが関与している可能性があると考えられます。また、花粉にさらされる量は地域単位で考察したので、子ども個人個人の違いは考慮していません。これらのことも含め、これから詳細に調べる必要があると考えています。

家庭を1軒ずつ訪問し、子どものふとんからチリダニを収集

――家庭のチリダニの量については、どのように調査したのでしょうか。

小島 エコチル調査では、専門の調査員が生後18カ月のときに家庭を訪問し、お子さんのふとんから粉塵を収集しています。子どもが普段寝ているふとんに0.5m×1mの枠を置き、同じ掃除機を使って2分間吸引して収集し、チリダニのアレルゲン量を調べました。そして、チリダニの量によってグループを4つのグループに分けました(グループ1:最も少ない、グループ2:1より多い、グループ3:2より多い、グループ4:最も多い)。

生まれた季節でのチリダニ感作のリスクを調べるために、生まれた季節については花粉症の調査と同様、3~5月を春生まれ、6~8月を夏生まれ、9~11月を秋生まれ、12~2月を冬生まれと区分しました。
血中ビタミンD濃度も花粉症の調査と同様、3つのグループに分けました。

夏生まれはチリダニ感作が高く、ふとんにチリダニが多いほど感作が高くなる

――調査の結果、どのようなことがわかりましたか。

小島 冬生まれの子どもと比べて、夏生まれの子どもは、2歳のときのチリダニ感作が1.53倍となりました。春生まれは1.02倍、秋生まれは1.16倍なので、夏生まれの子どものリスクが高いといえます。

またチリダニ感作のリスクは、普段子どもが寝ているふとんのチリダニが最も少ないグループ1と比べて、グループ2が1.36倍、グループ3が2.18倍、最も多いグループ4は3.64倍でした。このように、ふとんにチリダニが多いほど感作のリスクが高くなることがわかります。

なお、血中ビタミンD濃度の差とチリダニ感作には関連は見られませんでした。

――夏生まれの子どもがチリダニ感作のリスクが高くなる要因として考えられることはありますか。

小島 赤ちゃんの皮膚は、生後1カ月をピークに皮脂分泌が低下していくため、乾燥しやすく、バリア機能も低下していきます。推測レベルの話になりますが、夏生まれの場合は皮膚が弱くなるタイミングで冬の冷たい空気にさらされることになります。その状態でチリダニにさらされることが、2歳時点でのチリダニ感作が高まることと関係しているのかもしれません。季節特有のメカニズムについては、今後詳しく調査する予定です。

また今回の調査では、生まれた季節とアレルギー性鼻炎(通年性)との間には関連が見られなかったのですが、アレルギー性鼻炎は学童期から有病率が増加します。そのため追跡調査を行うと、新たな結果が出ることも考えられます。

――チリダニが多いふとんに寝ていると、チリダニに感作しやすくなるのは、わかりやすい結果でした。

小島 チリダニは気管支ぜんそくの発症要因といわれていますから、ふとんやマットレスにまめに掃除機をかけるなどして、チリダニ対策を行うのは必要なことでしょう。

夏生まれの子どものリスクが高いとはいえ、ほかの季節に生まれた子どものリスクがないわけではないので、生まれた季節に関わらず、チリダニ対策は行ったほういいと思います。

10~12月生まれの子どもが、最もアトピー性皮膚炎の発症率が高いという調査も

――山梨大学のエコチル調査甲信ユニットセンターでは、誕生月とアトピー性皮膚炎発症の関係も調べていて、小島先生もその調査研究に携わっていました。

小島 それは、生まれてから3歳までに実施した質問票調査データをもとに、各年齢でアトピー性皮膚炎と医師に言われたかどうかを調査したものです。
さらに、出生した都道府県の県庁所在地について、子どもが6カ月までの平均気温や日照時間などの気象条件を調べ、気象条件とアトピー性皮膚炎の関係も調べました。

すると、10~12月生まれの子どもが最もアトピー性皮膚炎の発症率が高く、4~6月生まれの子どもが最も低いという結果でした。また低い気温と低い蒸気圧がアトピー性皮膚炎の発症にかかわることもわかりました。
アトピー性皮膚炎の誘因となる皮膚バリア機能の低下やかゆみが、どのような季節因子と関連しているのか、さらに調べていく必要があります。

――理由のすべては解明されていないものの、生まれた季節によってリスクが高くなる病気があるということですね。

小島 そうですね。過剰な心配をする必要はありませんが、ママ・パパの心構えとして知っておいてください。また、生まれた季節にかかわらず子どもが健康に育つには、規則正しい生活と栄養バランスの整った食事、運動が欠かせません。それをいちばんに考えてほしいと思います。

お話・監修/小島令嗣先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

花粉症発症やチリダニ感作のリスクは、生まれた季節によって変わるようです。子どもの生まれた季節が該当していても神経質になる必要はありませんが、花粉の時期には予防対策をしたり、ふとんの掃除をこまめにしたりするなど、無理なくできることは行うのがいいようです。

●記事の内容は2023年10月の情報であり、現在と異なる場合があります。

小島令嗣先生(こじまれいじ)

PROFILE
山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座 学部内講師 。小児科専門医・アレルギー専門医・社会医学系指導医。子どものアレルギー疾患と社会的な要因を中心に研究を行っている。

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