「仕事に遅刻した」「帰りに1時間以上かかった…」朝は大泣き!そして、帰りも帰りたがらない‼登園・降園渋り、どうすれば?
「たまひよ」アプリユーザーから寄せられた登園・降園しぶりの悩みについて、発達心理学が専門の青山学院大学教授 菅野幸恵さんに聞きました。
ママ&パパの登園・降園しぶりの困った!エピソード
アンケート結果を見てみると、「登園渋りをしたことがある」「降園渋りをしたことがある」「両方ある」で約70%が保育園・幼稚園への行き・帰りに渋りを体験していることがわかりました。
Q:お子さまは保育園・幼稚園へ登園(行き)渋り・降園(帰り)渋りをしたことがありますか?
登園(行き)渋りをしたことがある 41%
降園(帰り)渋りをしたことがある 4.1%
両方ある 21.3%
まったくない 29.5%
その他 4.1%
実際のエピソードを聞いてみると、行きも帰りも苦労の声が。
■毎日、無理矢理引きはがし
「ママから離れたくなくて、泣きわめく我が子を幼稚園の玄関先で無理矢理引きはがして通わせていました」(りかさき)
■仕事に遅刻したことも…
「登園渋りで仕事に遅刻しました。もう諦めて午前休にした経験もあります」(そうママ)
■車から降りない
「車でYouTubeを見終わるまで行かない!と頑ななことが…」(やーほのママ)
■行き帰りとも大変!
「行きは泣き叫んで離れてくれないかと思えば、帰りも帰りたくないの繰り返し。毎回時間がないから勘弁してくれ!と思った(笑)。理由を聞くと、妹といたいと…。ご褒美でつったり、困る事を伝えたりすると、登園・降園渋りがなくなってきました」(かおり)
■プリンセスでモチベUP
「入園から2ヶ月は毎日泣いていました。少しでも楽しんで行けるように、靴下やタオル、ハンカチを好きなプリンセスで揃えたりしました」(あみまる)
■最終日だけ
「退園する最終登園日だけ、先生に引き渡しの時に泣かずに行きました」(ふーみん555)
■公園で遊んでから登園
「朝、ぐずるので早く準備して公園で遊んでから、テンションを上げて送り出していました」(まんじゅう)
■毎日の登園・降園が憂鬱に
「16時20分頃迎えに行ったはずが、家に帰って手を洗ってリビングに入ったのが17時25分。まず教室から車までたどり着かない、チャイルドシートに座らない、アパートの駐車場に着いてからも車から降りない、部屋まで入ってくれない、手を洗わない、で時間がかかりました」(りっちゃん)
“いま”を生きる子どもには、今することを伝えることが大事
スムーズに通っていたはずなのに、忙しい時にかぎって登園を渋ることも。また、あんなに渋っていたはずなのに帰りたがらない…。こういう場合の対応について菅野幸恵さんに聞きました。
「アンケートの結果をみると、半数近くの方が行き渋りを経験されていますね。それに比べると、帰り渋りの数は少ないですが、これはこれで大変です。
行き渋りや帰り渋りは、理由によって対応も異なります。
まず行き渋りの理由として考えられるのは、『おうちやおうちの人と離れたくない』というもの。これは、子どもにとって当たり前のことです。
家と園では全く環境が異なります。物理的な環境だけではなく、人的な環境も大きく異なります。家ではおうちの人が自分のことを気にかけてくれますが、園では自分以外にも子どもがたくさんいて、常に自分のことを見てくれるわけではありません。同年齢の子どもがたくさんいるということに慣れない子どももいるでしょう。“学年”で区切られた集団というのは、人間が生きる集団として自然なものとは言えませんから。
また、時間や空間が区切られ、好きな時に好きなことをできるわけではなく、集団として行動することを求められるのも家との違いです。そんな環境にすぐ馴染める子もいますが、なかなか馴染めない子もいます(特に人的な環境は慣れにくいです)。
ただ離れてしまえば、案外ケロッとして遊び始める場合もありますから、後ろ髪引かれ過ぎず、園の先生と相談しながら付き合っていくのが重要です。
いつも以上に抵抗が強い場合は、『今日はお休み』という日があってもいいと思います。お仕事がある場合は、そうもいかないので、サッと預けてしまう方がよいです。泣いている子どもに感情移入してしまうと、お互いに離れられなくなってしまいます。幼稚園の場合、3年保育が主流ですが、正直3歳の子にとって集団生活はなかなかなじみにくいものです。余裕があるのであれば、4歳まではおうちでゆっくり過ごして2年保育という選択も考えてみるといいのではないかと思います。
今は集団に早く馴染ませようとする傾向がありますが、4歳からでも問題ありません。
もうひとつ、行き渋り帰り渋りに共通する理由として考えられるのは、今の子どもの気持ちと、求められていることが合わないということです。子どもは“いま”を生きています。大人は、カレンダーや時計に合わせて行動していますが、子どもは“いま”が中心です。その次のことに合わせて自分の気持ちを調整するのはなかなか難しく、年長くらいになってだんだんできるようになってきます。園に行く時間になっても、おうちの人が迎えに来ても、今熱中していることがあれば、それをしたいのが当り前です。
ただ生活する者としては、いつも常に子どもの気持ちに寄り添えるわけではありませんから、区切りのいいところで『今日はもうおしまい』と切り上げましょう。ズルズル付き合ってしまうと、キリがありません。ぐずるかもしれませんが、その時は『自転車乗っておうちへ帰ろう』など、今することを伝えてみましょう。
体験談にプリンセスグッズで気分を上げていたという方がおられましたが、自転車などにお子さんの好きなものをつけておいたりすると気分を変える手助けになるかもしれません。スムーズに切り替えられるように、朝はおもちゃなどを広げない方が懸命ですね。とくに時間のない朝はルーティン(例えば、起きたら→おはようのあいさつ→トイレ→ご飯→顔を洗う→歯磨き→着替えるなど。あくまで一例でお子さんによっていろいろなパターンがあると思います)を作ってしまうと、子どもも気持ちを整えやすいのではないかと思います。その分、お風呂だったり、寝る前だったり、お子さんの気持ちに寄り添える時間を作れるといいですね。
最後にもうひとつ。『忙しい時に限って』ということもよくあると思います。大人の気持ちに余裕がないと、いつもよりも子どものことを気にかけられなくなっています。子どもはそのことを敏感に察してぐずったりするのです。
大人の都合になり過ぎないよう、大人が調整できることは調整して、メリハリをつくることが大事です」(菅野幸恵さん)
忙しい時に登園(降園)渋りをしたり、泣かれたりすると親も後ろ髪が引かれます。余裕がある時にお子さんの気持ちに寄り添いメリハリをつけることは大切ですね。
(取材・構成/メディア・ビュー 酒井範子)
菅野幸恵さん
PROFILE)
青山学院大学コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間学科教授。専門は、発達心理学で研究テーマは、乳幼児期の親子関係、地域コミュニティでの子育てについて。著書に『あたりまえの親子関係に気づくエピソード65』(新曜社)がある。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年7月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです(有効回答数122人)
※記事の内容は2023年9月の情報で、現在と異なる場合があります。