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「お顔に特徴がある」、世界に例がないオンリーワンの疾病を抱えて前を向く家族。「生まれてきてくれてありがとう」と伝え続けたい【体験談】

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生後7カ月で退院し、3人で暮らせることになりました。

2023年1月、星野孝輔さん(27歳)、しほさん(33歳)の間に生まれた未来くんは、世界でもほかに例のない疾患を抱えています。生後7カ月で退院し、家族3人で暮らすようになりました。多くの人に支えられながら、未来くんに深い愛情を注いでいる星野夫婦は、未来くんのことをたくさんの人に知ってもらいたいと、YouTubeチャンネル「星のミライChannel」で「おもちくん」の愛称で日々の様子を発信しています。母親のしほさんに、話を聞きました。
全3回のインタビューの3回目です。

生後5カ月26日目で初めて24時間一緒に生活を。その後、生後7カ月で退院することに

生後7カ月。自宅でパパとお昼寝をするほほえましい光景です。

――生まれてからずっと入院していた未来くんですが、退院したのはいつでしょうか?

しほさん(以下敬称略) 生後7カ月になった2023年8月です。退院するまでに目標としていたことが、病院用から在宅用の人工呼吸器に乗り換え、両親が管理できるようになり、呼吸の管理が自宅でできるようになること、目を安全な状態で保護できるようにすること、栄養管理を自宅でできるようにすること、訪問看護師さんなど、地域でサポートしてもらう人たちの調整などができていることでした。

まぶたの手術をしたことで、退院のめどが立ち、そこから地元の大学病院に転院することになりました。

そして、その退院後の生活をシミュレーションしながら、2023年7月に初めて未来と24時間一緒に過ごすことになりました。生後5カ月26日目のことで、本当にドキドキの体験でした。

――24時間一緒に過ごしてみていかがでしたか?

しほ 自宅に見立てた個室で、おふろやその後のケア、夜の目のラップ保護、呼吸器のつけ方、たんの吸引などの練習をしました。14時から翌日の14時まで一緒に過ごしたのですが、実際に行ってみると、やっぱり大変でした。

日中のお世話はそれまでの面会のときの流れで順調でしたが、やっぱり夜のお世話は初めてのことばかりで・・・。ケア自体はある程度スケジュールが決まっているのですが、未来は眠るときに目の乾燥予防のため目にラップを貼ります。それがズレていたら直してあげるなど、こまかいことが気になって、夜中もあわただしくやることがいっぱいありました。
私も慣れていないこともあり、バタバタしてその日は1~2時間くらいしか眠れませんでした。そのときはちょっとした興奮状態で頑張れたけれど「自宅に一緒に帰ったらこれが毎日続くのか、大丈夫かな?」という感想をもったのも事実です。

でも、ずっとわが子と一緒に過ごせた24時間は幸せでした。抱っこしていたら、未来が腕のなかで寝ちゃったんです。それを見て「幸せだな」と思えました。自宅で早く一緒に暮らしたいなと思いました。

夫も別の日に未来と24時間一緒に過ごしていましたが、「楽しかったよ。かわいかった」という感想でした。夫は夜中でもわりとおおらかに過ごし、かなり余裕があったようです。

ついに退院!地域の移動支援者や訪問看護師がサポート

目の保護と呼吸器抜去防止の手作りミトンです。

――未来くんが退院してくる自宅で何か準備したことはありますか?

しほ かなり大がかりな模様替えをしました。未来は床に寝転がって生活をすることが多くなると思ったので、リビングはソファを置くことをやめ、私たちも床に座る生活になりました。
寝室にはベビーベッドを置きました。未来は夜は寝室、昼間はリビングで生活するので、必要な医療機器全部を乗せることができるワゴンを用意して、ワゴンと未来がセットで寝室とリビングを移動できるようにしました。

――退院した日の様子を教えてください。

しほ 病院から自宅へは地域の移動支援者さんたちがつき添ってくれました。その後、訪問看護師さんや呼吸機メーカーの方が来て、打ち合わせをしてくれました。在宅介護に切り替わるに当たり、本当にたくさんの人たちが未来の生活にかかわってくれています。本当にありがたいです。

――退院してからの未来くんはどんな様子ですか?

しほ 驚くほどの成長を見せてくれています。おもちゃに興味をしめし、ボールを近くに置くと手を伸ばして振り回して投げてみたり。入院中はボールに触れさせても握るだけだったので驚きました。

また、指しゃぶりもするようになりました。5カ月ごろ、一度おしゃぶりが始まったのですが、目を守るため手にミトンをはめるようになったため、すぐおしゃぶりができなくなってしまったんです。それが、退院後できるだけ自由にさせていたところ、指しゃぶりをするように・・・。自分の指を口で確かめている行動だと思うので、赤ちゃんらしい姿が見られてとてもうれしかったです。

口から胃管を入れていたものを、胃ろう造設をすることに

生後9カ月、胃ろう手術で入院中にリハビリでボールプールで遊びました。

――おしゃぶり以外に成長を感じるところはありますか?

しほ 未来は栄養をとるために、胃管を口に入れているのですが、その管をすぐに取ってしまうようにもなりました。手が動くようになった成長の証でもあるのですが・・・。そこで、おなかに胃につながる小さな穴を空け、短い管を配置する胃ろう造設をすることになりました。

これまでは口から管を通して栄養を入れていましたが、胃ろうは太くて短い管なので、ぐっと栄養摂取しやすくなります。指しゃぶりも自由にさせてあげられるし、離乳食も始められます。今後、もしえん下能力が上がれば、胃ろうの穴をふさぐことができます。
大学病院で検査をし、未来の身体に胃ろうを作っても問題がないこと、またメリットとリスクを聞いたうえで、1カ月入院して胃ろうを作ることになりました。

――胃ろうを作ってからの未来くんはどんな様子でしたか?

しほ 実は、一度ものすごくおなかが大きくなって血まみれになってしまうトラブルがありました。未来の胃ろうはバルーン型というもので、胃の中に風船のようなバルーンを入れ、水でふくらませておなかから出ないようにしています。それがあるとき、胃ろうのあたりのおなかがかたくふくれ上がってしまったんです。
驚いて大学病院に行くと、胃からの出血が多く脱水症状も起こしているとのことで即入院になってしまいました。

どうやら「ボールバルブ症候群」になっていたようです。胃ろうのバルーンが何らかの原因で十二指腸のほうに入ってしまい、胃の中のものが流れないようふさがってしまっていた状態です。しばらく入院となり、初めてのクリスマスと年越しを入院して過ごすことになってしまいました。

自宅での処置方法も病院で教えてもらい退院しましたが、頻繁にこの症状が起きるようになってしまいました。病院の先生に相談したところ、胃ろうの管を短くすることになりました。思いがけないトラブルもありますが、日々のケアをおこたらないようにしています。

ブログやYouTubeを公開。「たくさんの人に未来くんのことを知ってほしい」

経口胃管がなくなり顔をたくさん触れるようになりました。

――妊娠中からブログ配信、2023年10月からはYouTubeチャンネルも開設されました。どのような経緯だったのでしょうか?

しほ ブログは妊娠中から書いていました。未来の頭部に問題があると指摘されてから、ほかの医療ケア児の保護者さんが発信するブログやYouTubeをたくさん見て参考にさせてもらって、勉強していました。だから私も少しでもほかの人の参考になればと思ったんです。

ブログでは未来のことを「おもちくん」と愛称で記していますが、胎児のころから呼んでいるいわゆる「胎児ネーム」です。私も夫も、もちもちした感触のものが好きだったので、妊娠がわかったころから、おなかの赤ちゃんに向かって「おもち~」などと呼びかけていました。男の子とわかってから「おもちくん」と呼ぶようになりました。

YouTubeは未来が生まれる前に夫から「配信しない?」と提案がありました。未来の目が離れている、あごが小さいなどの状態がわかっているころから、情報を配信することのほうがプラスであるというのが夫の考えでした。
ただ、私は最初、かなり慎重でした。ブログは時間をかけて言葉を選べます。でも、動画となると見ている方がどんな気持ちになるかイメージできず、不安もありました。とはいえ、文字や写真よりも、動画の情報量は多く、実際に未来が動いている姿を見てもらうことで、より理解を深めてもらえるのではないかと思うようになり、配信しようと決断しました。最初は退院と合わせて配信開始しようと思っていたのですが、想像以上にバタバタして、退院して2カ月後からのスタートになりました。

――ブログではスタンプを使っていた未来くんのお顔ですが、YouTubeでは、公開しています。

しほ 未来は、顔に大きな特徴を持っています。だから初めて見た方は驚いてしまうかもしれません。でも、「未来みたいな医療的ケア児がいるんだな」と、知ってもらうことが大事だと思っています。そうすることで、未来や、いろんな医療的ケア児が受け入れてもらえ、この社会で少しでも生きやすくなるのではないかと考えているんです。

私たちは未来のお顔はもうすっかり見慣れています。見れば見るほど「愛らしくて本当にかわいいな」とか「ごく普通の子だな」と思います。だから、YouTubeを通して未来のかわいさを知ってもらいたいという親バカな気持ちも少しあります。

「生まれてきてくれてありがとう」と伝え続けたい

1歳のお誕生日。いろいろなことに興味を持つように。

――YouTubeにはどのような感想が届いていますか。質問を募集されていることもありましたが・・・。

しほ YouTubeを公開してから、予想以上に多くの人に見てもらえて、驚きました。コメントも「最初はびっくりしたけどファンになりました」、「パパとママの未来くんへの愛情がすごい」みたいな言葉をたくさんかけてもらい、うれしかったです。

質問も本当にたくさん届いています。やっぱり多いのは、症状についてもう少し詳しく教えてほしいということです。「おでこの骨がないということは、ぶつかったときは危なくないんですか?」など具体的な質問もあり、生活リスクなどを心配してくれる声が多いです。

あとは、「笑ったり泣いたりすることはありますか?」という質問もあります。見慣れない方は、表情が読み取りづらいようです。私と夫はもう、未来の顔を見ると「あ、今はこういう気分なんだね」とわかってきました。

質問と一緒に「未来くんのいろんな姿が見たいです」というリクエストもすごく多いです。「未来くんの声が聞きたいです」という要望もあります。ただ、未来は気管切開しているので基本的には、今は声が出ないんです。

私たちにとってはすでに当たり前になっていることも多いので、質問されて初めて「あ、そうか。こういうことも伝えていったらいいんだ」と思うこともあります。たくさんの人からあたたかい応援をしてもらい、YouTubeを開設してよかったと思います。

――今後、どんなふうに未来くんの成長を見守っていきたいと思っていますか?

しほ まず、現段階では未来がどう成長していくか、わかっていません。身体の発達も含め、将来自立して生活できるかも、現段階では不明なんです。そして、いまだにどんな疾患かもわかっていません。でも、私たちはもう病名にはこだわっていないんです。何か問題が起きたら、その都度対応していこうと考えています。それよりも、未来が自分らしく生きられるようにしっかりと見守っていきたいです。

私たち夫婦は「あなたが生まれてきてくれて、私たちは本当に幸せなんだよ」と、ずっと伝え続けていきたいです。どんな見た目でも、どんな病気を抱えていても、自己肯定感が高ければそれに勝る幸せはないと思っています。

最近気づいてハッとしたことがあるんですが、未来が生まれるとき、先生から「たぶん経腟出産でも大丈夫だけど、念のため帝王切開にしておきましょう」と言われていたんです。本当に念のために帝王切開を行ったのですが、もし経腟分娩だったら、前頭蓋骨やまぶたがない状態の未来が狭い産道を通るのは難しく、出産に耐えられなかったと思うんです。

だから、帝王切開という選択をしてくれた先生に感謝すると同時に、未来がこうして元気に生きていることは奇跡だと思うし、きっと何らかの意味があるのではないかと思っています。未来と一緒にいられて、愛おしさを味わえるのは、本当に幸せです。

お話・写真提供/星野しほさん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

ブログやYouTubeからは、星野夫婦の未来くんへの深い愛情が伝わってきて、未来くんが愛情たっぷりに育てられていることがわかります。最初は少し驚いても、だんだん「かわいい、普通の子」「パパとママにすごく愛されている子」と感じられるようになってきます。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

星のミライChannel

星空の下、優しい世界~ウサギ顔で産まれた我が息子~

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年3月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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