【笑い飯・哲夫】長女の小学校入学を機に田舎暮らしをスタート。「3人の子どもたちには、自然の中で思いっきり遊び、近所の人にしかられながら育ってほしい」
お笑い芸人 笑い飯・哲夫さんは、6歳の女の子、4歳の男の子、生後6カ月の男の子のパパです。長女は2024年4月に小学1年生になりました。
哲夫さんは長女の小学校入学を機に、自身が生まれ育った奈良の田舎でのUターン生活を決め、家族みんなで生まれ故郷に引っ越しました。そんな哲夫さんに、奈良で暮らすことを決めた理由やその魅力などについて聞きました。
全2回インタビューの1回目です。
虫とりをして自然の中で遊んでいた子ども時代。わが子にも同じ経験を
哲夫さんは、以前から奈良で暮らすことを考えていたそうです。そして2024年春から、奈良での新生活がスタートしました。
――奈良に家族で引っ越すことを決めた理由を教えてください。
哲夫さん(以下敬称略) 僕も妻も奈良で生まれ育っています。僕は小学校から高校まで奈良の学校に通っていました。
結婚して子どもができたころからずっと僕は妻に「子どもが小学生になったら、奈良で暮らそう。奈良の小学校に通わせよう」と言っていたんです。
この春、長女が小学校に入学したので家族で、奈良に引っ越すことにしました。妻も奈良出身なので、Uターン生活については意見が食い違うことはなかったです。
――「子どもが小学生になったら、奈良で暮らそう」と考えていたのはなぜですか。
哲夫 僕の実家あたりは、とにかく自然が豊かなんです。子どものころは虫とりをしたり、野山を駆け回ったりして自然の中で遊んでいました。実家が農家だったので、いちごの収穫なども手伝ったりして、それがすごく楽しかったんです。子どもたちにも、僕と同じような経験をさせてあげたいと思ったんです。
子どもは自然の中だと、自分で考えながら遊ぶので想像力や感性が豊かになります。ゲームをしたり、動画ばかりを見て育つのとは、やっぱり違うと思うんです。
僕は、うちの子どもたちには高校生までスマホは持たせたくないと思っているぐらいです。
あと空気がきれいだから、鼻毛も伸びません(笑)。そんなところで子どもたちを育てたいと思ったんです。
――最近の子どもたちの成長の様子はどうですか?
哲夫 上から、女・男・男の三きょうだいなんですが、長女は最近僕に似たしっかり太めの剛毛になってきて、髪型がとっ散らかってる感じです。長男は毛が少なめのサラサラヘア、二男は6カ月なので後頭部がしっかり寝はげになっていますね~(笑)
――家の中では、最近子どもたちはどんな遊びをしていますか。
哲夫 僕も子どものころよくしていましたが、ブロック遊びが多いですね。ブロックにはさまざまな可能性があるので、写真や説明書を見ないで自分で作りたいもの、イメージしているものを自分の頭で考えて作るようにと伝えています。見本どおりに作らない・まねないことの楽しさに気づいてほしいんです。
また子どもたちは、あやとりや折り紙をしたり、紙飛行機を作ったりするのが好きです。どれも子どもなりにどうしたらうまくいくか考えて、試行錯誤しながら楽しんでいますよ。
ときには近所の人にしかられる経験も必要
哲夫さんが、生まれ故郷の奈良で子育てをしようと決めた理由の一つに、地域の人との密なつながりがあります。
――哲夫さんの子ども時代と比べて、町の雰囲気は変わっていますか。
哲夫 雰囲気は変わっていませんが、子どもの数は少なくなって、高齢化が進んでいます。僕が小学校に通っていたころは1学年2クラスでしたが、今は1クラスしかないようです。
地域の人たちは今でも、近所つき合いが密で隣組というのがあります。隣組は、並び数件の家とグループになり、どぶさらいなどの共同作業をしたりするんです。親睦旅行なんてものもあります。
――子どものころにお世話になった人と今でも会ったりするのでしょうか。
哲夫 外にいると、お世話になったおじちゃん、おばちゃんからよく声をかけられます。
実家が農家なので、早朝から畑仕事をして、それからテレビや劇場などの仕事に行くような生活なのですが、畑仕事をしているとおじちゃんやおばちゃんから「いいモロヘイヤだね。もらっていくよ~」なんて言われることもあります。逆にねぎや白菜をもらったりすることもあります。そうしたやりとりが日常です。
子どものころ、僕はよく近所の人にしかられていました。小学4年生からサッカーを習っていたのですが、ボールをけるとけり上げてしまい、近所の人の庭にボールが入って植木鉢を割って怒られたこともあります。
そうすると子どもなりに、どうしたらボールをけり上げないか考えるようになるんです。それで僕は、低い位置でパスを出したりするのがうまくなりました。近所の大人にしかられたおかげです。
――近所の人に子どもがしかられると、子どもが萎縮してしまうのではないかと心配するママ・パパもいるようです。
哲夫 子どもは、いろいろな大人と触れ合って、いろいろな考え方や価値観があるということを知ったほうがいいと思うんです。近所の人にしかられることで、子どもは親にしかられるより反省します。先ほど話したサッカーの話と同じように「どうしたらしかられないでできるかな?」と考えるきっかけにもなるでしょう。そうした経験が、子どもの成長につながると思うんですよ。また地域に子どもをしかる大人がいるということは、それだけ子どもを見てくれているということです。心強いですよ。
僕が奈良で子育てをしようと決めたのは、しかってくれる大人が地域にいるというのも大きいです。
ズルする子は嫌われる。だから娘を真剣にしかったことも
哲夫さんがわが子をしかるのは、子どものためを思って。最近も、長女を真剣にしかったとか。
――哲夫さんは、どのようなときに子どもをしかりますか。
哲夫 人に迷惑をかけたり、子どものためにならないと思ったときにはしかります。
最近も、子どもたちとトランプで神経衰弱をして遊んでいたのですが、長女がズルをして3枚目のカードをめくったんです。神経衰弱は、2枚カードをめくって違うカードだと、次の人の順番になるのがルールですよね。
そのときは「ズルはいかん!」って強くしかりました。ズルする子どもは、友だちから嫌われます。僕の子ども時代もズルする子は嫌われていました。そういう子になってほしくないので、そのときは本気でしかりました。長女も泣いて「もう二度とズルはしない」と謝っていました。
――子どもをほめることは、あまりしませんか?
哲夫 しかるとほめるは両方必要です。だからよくほめますよ。きっかけを見つけてなんでもほめます。「字がきれいだな~」とほめたり、手伝ってくれると「ありがとう~」とお礼も言います。うちは、子どもたちにはごみ出しやおつかいなどの手伝いをさせているのですが、手伝わせると自然と子どもをほめたり「ありがとう。助かるわ~」とお礼を言えるようになります。
僕も子どものころは、親の農業の手伝いが楽しかったので、興味があれば子どもたちにも、これからいちご摘みなどを手伝わせようと思っています。田舎暮らしをすると、子どもたちがこれまでしたことがないような経験ができるのも魅力ですよね。
お話/笑い飯 哲夫さん 協力・写真提供/吉本興業株式会社 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
都市部の家賃や住宅販売価格の高騰なども影響し、地方で暮らしたいと考えるママ・パパも増えています。哲夫さんのように自分が生まれ育った故郷に戻り、子育てをするのもすてきな考え方かもしれません。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。
笑い飯 哲夫(わらいめし てつお)
PROFILE
1974年奈良県生まれ。関西学院大学文学部哲学科卒。2000年に西田幸治と漫才コンビ・笑い飯を結成。2010年M-1グランプリで優勝。『えてこでも分かる笑い飯・哲夫訳 般若心経』(ヨシモトブックス)など著書多数。
『がんばらない教育』
『週刊SPA!』の人気連載企画が書籍に。格安学習塾を経営する哲夫が「子どもと言葉遣い」「子どもと学校生活」「子どもと習い事」「子どもとお金」などをテーマに、ママ・パパの子育ての悩みに回答。無理しない、心配しない、期待しすぎない哲夫流アドバイスが満載。笑い飯 哲夫著/1540円(扶桑社)