「おねしょが続くときは?」「男女でトイトレの進め方は違う?」トイレトレーニングの悩みに泌尿器科医が回答

夏はトイレトレーニング(トイトレ)のスタートに向く季節といわれます。薄着になるためトイレで服を脱ぐのが比較的スムーズなことと、おしっこで服がぬれてしまってもすぐには体が冷えにくいこと、洗濯物が早く乾くことなどの理由からです。この夏に、子どもをトイレの補助便座やおまるに座らせてみようと考えているママ・パパもいることでしょう。東京都立小児総合医療センター泌尿器科部長の佐藤裕之先生にトイトレの進め方の基本や、ママ・パパの疑問や悩みについて聞きました。
【トイトレの基本】トイレトレーニングは子ども主体が原則。うまくいかなくてもあせらないで
トイトレは長期的なもの。子どもの膀胱(ぼうこう)の成長や、おしっこをためる「蓄尿(ちくにょう)機能」の発達、親からの働きかけへの反応、尿意を感じてトイレに行こうとする自発性などをよく見ながら無理なく進めることが大事だそう。
「おしっこを膀胱にある程度ためるようになるのは1歳6カ月ごろからです。このころからまずは『トイレでおしっこやうんちをするんだよ』という意識づけを始めるといいでしょう。
体や言葉の理解、トイレへの興味などの準備が整ったら、2~3歳代を目安にトイレの補助便座やおまるで排せつを促し始めます。おむつをはずす最終的なゴールは、3~4歳代か遅くても5歳ごろになります。
トイトレは親が先走りせず、子ども主体で進めます。うまくいかなくてもあせる必要はありません。ゆったりとしたスタンスで臨みましょう。そのほうが案外スムーズに進むとも聞きます」(佐藤先生)
教えて!佐藤先生【トイトレQ&A】
Q1 早生まれです。保育園でトイレトレーニングが始まりましたが、うまくできていません
うちの園では、2歳児クラスの6月にクラス全員で一斉にトイトレが始まりました。うちの子は早生まれ。お友だちにいい影響を受けて、トイレへの関心度はアップしたようですが、まだトイレでおしっこできていません。
【佐藤先生】見守ることで解決するかも。保育園に相談して、お休みするのも手です
“トイレでおしっこ”に成功するには2つの準備が必要です。1つはトイレの意味を理解し、トイレまで歩き、補助便座に座れること。もう1つは尿意を感じ、出すためにトイレに行く自発性があること。おそらく1つ目はクリアできているのでしょうが、まだ2つ目の自発性がないのだと思います。
「うちの子だけトイレでおしっこできていない」とあせる必要はありません。2歳は発達が目まぐるしい時期なので、見守っていると解決することも多いです。
トイレでおしっこが出ないことが続き、子どもがプレッシャーに感じている様子があるのなら、保育園に相談して数カ月ほど待ってもいいかもしれません。
Q2 体が大きく、運動発達も早めだとトイトレも早めにしたほうがいい?
まだ2歳になったばかりですが、体の大きさは3歳代の子と同じくらい。運動発達も早めです。まだトイレにはそこまで興味を持っていないようですが、早くトイトレを始めたほうがいいですか?
【佐藤先生】体が大きく、運動発達が早めだからとあせる必要はありません
膀胱の大きさは体の大きさに関係します。体が大きい子は膀胱も大きくなる傾向があります。そのため、おしっこをためる準備はできやすく、トイトレを早く始められる可能性はあるでしょう。ただし、必ずしも体が大きい=おしっこをためる機能の発達が早いというわけではありません。
また、おしっこを出す機能は自律神経がつかさどっているもので、体の筋肉を動かす神経機能とはまったくの別もの。運動発達が早いからトイレでできるようになるのも早いとは言えないでしょう。
まずはトイレに興味を持つ働きかけから始め、子どもがトイレに興味を持ってからスタート時期を考えるといいと思います。
Q3 性別でトイレトレーニングを始める時期や進め方は変わりますか?
男の子と女の子では、おしっこをためる・出す機能の成長に差があるのでしょうか? 性別によってトイトレの進め方は変わるのでしょうか?
【佐藤先生】体の構造には男女差がありますが、トイトレの始めどきや進め方に違いはありません
トイトレを始めるタイミングや進め方に男女で大きな差はありません。性別よりもその子による差が大きいでしょう。
ただ、体の構造には男女差があり、女の子はおなかに力を入れるとおしっこを出しやすい傾向はあります。そのため、男の子よりトイレで成功するのが早くなることも。しかし、それは間違った排尿のしかたです。本来おしっこはおなかに力を入れて出すものでなく、便座に座って待っていれば自然に出始めるもの。強制的に排尿をしていると、頻尿傾向になる可能性や、将来、膀胱機能の問題が起こる可能性があり、注意が必要です。
Q4 3歳代後半です。何歳までおもらしが続いたら、受診を考えたほうがいいの?
3歳になってすぐごろからトイレの補助便座でおしっこをし始め、徐々に成功率が上がってきました。3歳代後半になり、トイレでできることもありますが、まだおもらしも多いという状況です。
【佐藤先生】3歳代ではおもらしが多くても心配は不要。5歳以降もおもらしの頻度が多ければ受診を
3歳代はまだトイトレの真っ最中という子が大半で「トイレでできるときもあれば、おもらしすることもある」という子も多いです。ほとんどの場合、成長とともにおもらしが減っていくのであまり心配はいりません。少なくとも4歳代までは様子を見てください。5歳以降もおもらしの頻度が多ければ、泌尿器科を受診するといいでしょう。
また、パンツのぬれ方も注意深く見てみてください。一気におしっこが大量に出てぬれてしまう場合は「トイレに間に合わなかったのかな?」と考えていいと思います。でも、少量のおしっこを頻繁に繰り返しもらし、パンツが乾く時間があまりない場合は何らかの異常が隠れていることがあります。パンツのぬれ方が気になるときは、泌尿器科に相談するといいでしょう。
Q5 来年には小学校に上がるのにおねしょが続いています
年長で、もうすぐ6歳になります。来年度には小学校に入学なのに、おねしょが続いていることが心配です。
【佐藤先生】夜尿(おねしょ)は小学校に入学以降、自然に治る子もいます。それほどあせらないことも必要
一般的に5歳以上で夜尿が残っている場合は、受診の対象になりますが、私は7歳半ぐらいまでは様子を見ていいと思っています。日中のおもらしがほぼなければ、それほど心配しなくて大丈夫でしょう。7歳半ぐらいで夜尿が自然に治る率が高くなるという論文もありますし、実際に夜尿が残っていても7~8歳になると、かなり頻度が減ってくる子もいます。
ただ、「もうすぐ6歳で夜尿だけでなく、日中のおもらしもたびたびある」という場合は、別に何か問題が隠れている場合があります。一度医師に相談することをおすすめします。
Q6 トイレでうんちができるようになるのはいつごろ?
2歳代です。トイレに興味を持っているので、そろそろ補助便座に座らせてみようと思っています。先輩ママ・パパから、おしっこより先にうんちがトイレでできるようになった話と、うんちだけはおむつでしたがってなかなかトイレでできなかった話を両方聞きました。
【佐藤先生】いつうんちがトイレでできるかは、個人差が大きいもの。遅くてもあせらないで
おしっこやうんちを出すときに使う骨盤の筋肉は1歳6カ月以降に成熟するといわれています。そういう意味でおしっこのトイトレと同じく1歳6カ月ごろから可能と考えられますが、まずはトイレの意識づけから始めることが大事です。いきなり「トイレでうんちをしなさい」と言っても無理があります。2~3歳代を目安に子どもの成長の様子を見ながらトイレでできるよう促していくといいでしょう。
おしっこはおなかに力を入れて出すものでなく、便座に座れば自然に出始めるものですが、うんちはそうではありません。子どもによっては「うんちはおむつでしたい」などのこだわりがあり、おしっこがトイレでできるようになっても、うんちはなかなかトイレでできないということも少なくないです。遅くてもあせることはありません。また、補助便座ではなくおまるにすると、できるようになる子もいます。
一方で、おしっこより先にトイレでうんちができるようになる子も。そのため、うんちがいつごろトイレでできるかは、2~5歳ごろと、個人差がかなり大きいです。
Q7 5歳になったばかり。外出前や寝る前にはトイレに行かせたいのに、嫌がります
おむつははずれていて、おもらしやおねしょはほぼありませんが、外出前や寝る前には念のためトイレに行かせたいと思っています。毎回声をかけていますが、嫌がって行かないことも多いです。座っても「出ない」と言われたときに、「もう少し頑張って」と言うのはよくないでしょうか?
【佐藤先生】無理強いは避けて。尿意がわかるのはその子の蓄尿機能の成熟によります
親の気持ちはわかりますが、排せつを強制するのはよくありません。出ないものは出ないのです。
注意したいのは、排せつを強く促すことの弊害です。尿意がないのに頻繁にトイレに座らせられることで、膀胱におしっこをためる練習ができず、頻尿傾向になってしまうことがあります。また、女の子の場合は、おなかに力を入れておしっこを出す間違った排尿方法が身につくと、将来、膀胱機能の問題が起こる可能性があります。
大人になると、「昼休みにトイレを済ませておこう」ということができるようになります。膀胱におしっこがある程度たまっていればコントロールできるのです。これはおしっこをためる蓄尿機能の成熟によります。
「お出かけする前にトイレ行こう」と親が声をかけるのはいいですが、子どもの気分が乗らなければ無理にトイレに座らせる必要はありません。
監修/佐藤裕之先生 取材・文/永井篤美、たまひよONLINE編集部
いつごろトイトレをスタートするといいのかには個人差があります。排尿間隔や言葉の理解度、トイレに興味を持っているかどうか、親からの働きかけに対する反応なども見て、補助便座やおまるに座っての排せつを促す始めどきを考えるといいでしょう。子どもの様子を見てあせらず進めること、トイレでの排せつを強制しすぎないことが大切です。
佐藤裕之先生(さとうひろゆき)
PROFILE
東京都立小児総合医療センター泌尿器科部長として日々「尿が持続的にもれる」「昼間の尿失禁が治らない」「おしっこの出し方がおかしい(おかしくなった)」などの悩みを抱える小児の治療を行っている。日本泌尿器学会指導医・専門医、日本小児泌尿器科学会認定医。日本小児泌尿器科学会理事・評議員、日本小児腎不全学会評議員。
●記事の内容は2024年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。