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産後クライシスから10年。「任せるよ」が口癖だった夫と、我慢強かった妻が夫婦の対話の大切さに気づくまで

更新

4カ月の第1子を抱く百合子さん。

「10歳の娘と2歳の息子の子育てを夫婦であれこれ話し合いながら楽しめるようになった今が幸せ」と話す長廣さん夫婦。しかし第1子が誕生して間もない産後の時期に、妻の百合子さんと夫の遥(よう)さんは産後クライシス状態に。一時は離婚も考えていました。
そうした経験を乗り越えて、2人は起業してLogista株式会社を設立。日本初の夫婦の対話メソッド「夫婦会議®」を開発して、企業や自治体、産婦人科と連携しながらママ・パパたちに、子育て期に夫婦で対話を重ねることの大切さを伝えています。
結婚11年目・子育て10年目となる長廣さん夫婦に、夫婦の対話の重要性に気づくまでの変遷や学びを聞きました。全2回インタビューの1回目です。

「対話」は1日にしてならずを実感した11回目のプロポーズ

たくさんの人に祝福されて結婚。

長廣遥さんと百合子さんが結婚したのは2013年のこと。遥さん37歳、百合子さんは29歳のときでした。

――2人の出会いを教えてください。

遥さん(以下敬称略) 趣味、ビジネスなどの枠を超えて、多種多様なテーマでプレゼンするイベントで出会ったのがきっかけです。
妻の百合子とは、プレゼンの順番が前後で、生い立ちや仕事観などすごく印象に残る人でした。

百合子さん(以下敬称略) 私は当時、6年勤めた会社を辞めてセミナー講師として独立したばかりで、大学生や若手社会人のリーダーシップ開発・キャリアデザインなど人の成長に貢献する分野に打ち込んでいました。自他ともに認めるワーカホリックで、仕事が生きがい。
プレゼンのあとの食事会で夫と話したときも、お互いの仕事の話で盛り上がった記憶があります。

――出会いから結婚までのことを教えてください。

遥 僕は当時、九州を拠点に地域活性のコンサルティングの仕事をしていたんですが、出会ったときから歳の差も感じず、仕事人として尊敬できる人だと思っていました。「この人といつか一緒に仕事がしたいな」という気持ちもありましたね。
その気持ちが恋愛感情に発展したのは、出会いから約1年後。実は交際が始まるまで僕は10回も彼女に振られています(笑)

百合子 当時、私には7年ほどつき合っていた彼がいたため、夫からの告白に、すぐにYESとは言えなかったんです。
でもその彼との将来が見えず停滞気味だったため、お別れすることに。そうした中、夫からの「僕と結婚したほうが幸せになれる!」という11回目の告白を受け入れ、「この人と結婚しよう」と決めました。
ところがその1週間後に、夫から改めてプロボーズされたんです。そのときは、思わず「何言ってるの? 先週プロポーズにOKしたよね?」なんてやり取りもあって、話がかみ合わなくて(笑)

完全に笑い話ですが、このころはまだ『夫婦会議®』で提唱している「対話」が上手くできていなかったんです。テンポよく楽しい会話はできても、私たちで答えをつくる「対話」は1日にしてならずだね、と振り返っています。

産後も仕事中心の夫からは、家のことは「任せるよ」「好きにしていいよ」のオンパレード

「1人で子育てをすることで、だんだん追い込まれていった」と、百合子さんは言います。

結婚した翌年、長廣さん夫婦には第1子の長女が生まれます。しかし産後間もなく百合子さんに異変が・・・。

――1人目の出産について教えてください。

百合子 立ち会い出産をしました。陣痛からの分娩所要時間は11時間半ほどですが、分娩室に入って4時間半ぐらいで元気な赤ちゃんが生まれました。

遥 長女の名前は2人で考えました。「自分を含めた人を大切にできる人になりますように」という思いを込めました。

――産後の生活について教えてください。

百合子 初めての子育てで、うれしい・楽しいよりも不安なことが多かったですね。日々の赤ちゃんのお世話で「こんなとき、どうすれば・・・」と悩むようなことや、保育園探しなど相談して決めていきたくても、夫からは「任せるよ」「好きにしていいよ」「あとでね」という返事ばかりで思考のワンオペ状態。

当時、住んでいたマンションはカビが生えやすく、赤ちゃんを育てる環境には向かないと感じ、引っ越しの相談をしたときにも「あとでね」と言って、話が先に進まず、「夫は一緒に子育てをしていく気があるのかな?」と不信感が高まっていきました。

遥 妻は出産前までバリバリ働いていて決断力もあるタイプだったので、僕が言った「任せるよ」「好きにしていいよ」などの言葉がイライラの原因になっているとは考えもしなかったんです。
また、当時の僕は朝6時台には家を出て深夜に帰宅するような働き方。土日も仕事優先で家にいないことが多かったため、生後2カ月までお義母さんに泊まり込みで家事・育児の手伝いに来てもらい、安心しきっていたのも問題でした。

百合子 実家の母からのサポートは本当にありがたかったです。でも、母からの「赤ちゃんの肌着は虫がつかないようにアイロンをかけたものを着せなさい」「夫に1番ぶろを」などのアドバイスが、産後の私にはかなりのプレッシャーでした。
精神的にどんどん追い込まれて、しまいには「いてくれて助かるけど、いてほしくない! 出て行って!」と泣き叫んで、母を追い返したこともあります。

遥 当時は、妻からメールで子どもの写真が送られてくるたびに「楽しく子育てしているんだな」と勝手に思っていました。
でも実際は、仕事に追われて家庭のことを妻とお義母さんに丸投げしていたに過ぎません。第1子が生まれた2014年は、パパの育休はまだ普及しておらず、僕も育休を取る意識はなかったとはいえ、もしもあのころに育休を取って最初から家庭にコミットしていたら…と反省する思いはずっとありますね。

夫が聞いてくることは、赤ちゃんのことだけ。産後うつ・産後クライシスを実感

赤ちゃんが生まれて幸せなはずなのに、夫婦の間には溝が。

百合子さんは、長女が生後3カ月になるころから、さらに追い込まれていき「産後うつ」と自覚したと言います。

――百合子さんが産後うつと感じたときのことを教えてください。

百合子 母を追い返した後、私のメンタルはどんどん悪化していきました。着替えをするのも面倒で、母乳や赤ちゃんの吐き戻しで汚れたパジャマを2日間ぐらいそのまま着ていたこともあります。これまで朝、起きたら当たり前のようにしていたメイクや髪を整える気力もわかないんです。

当時、マンションの3階に住んでいたのですが「もし、ここから飛び降りたら・・・」と考えたりもしました。ふかふかのクッションをもって、赤ちゃんに近づこうとしたことも・・・。虐待のニュースを見るたびに「自分も、いつか加害者になってしまうのではないか」と思い、怖くて怖くてしかたありませんでした。
コミュニケーションが取れない娘のことを、宇宙人のように感じる日もありました。

もう一つ私を追い込んだのは、夫が久しぶりに早く帰宅すると「今日は、〇〇(子どもの名前)どうだった?」と娘のことだけを聞くことでした。私のことなんて、頭にないんだと感じ、孤独でした。
夫に対する愛情が薄れていくのを感じ、これが産後クライシスかと思いました。

遥 子どもが生まれて妻がイライラしていることが増えたと感じていましたが、まさかそんなに深刻な状況だとは思いもしませんでした。

――百合子さんの心の不調は、乳幼児健診などで相談しましたか。

百合子 産後で頭が回らないと言われるように、当時の私も「自分が何をつらいと感じているのか」うまく言語化できず、新生児訪問や乳幼児健診などでも、「大丈夫です」「育児は楽しいです」と言っていました。また「自分より大変な人、つらい人はいる」という気持ちも強かったように思います。担当の保健師さんも見抜けませんよね・・・。
今でこそ「つらさは比較するものではない」と言いきれますが、当時の私は間違った我慢をしていたんだと思います。

「わたしたち」にとって「一家団らん」って何? 対話の大切さを痛感

出社前に長女をあやす遥さん。

遥さんはプロポーズの際に一家団らんの夢を語り、百合子さんも共感しました。しかし、2人がイメージする一家団らんには実は大きな違いが。それは夫婦の対話不足から生じたものでした。

――プロポーズのときに語った「一家団らんの夢」から、遥さんはどんどん離れていっているとは思わなかったのでしょうか。

遥 両親は僕の高校卒業と同時に離婚しました。幼いころから両親が不仲で、一家団らんという経験が少なかったんです。
また、僕自身も1回離婚歴があります。当時の妻との間には子どもがおらず、僕の仕事も忙しく、一家団らんの時間は皆無。

そのため僕からしたら、百合子と結婚して子どもにも恵まれて、週1~2回家族そろってごはんを食べられるだけで一家団らんができている満足感がありました。僕は、それ以上の幸せを知らなかったんです。

百合子 家族で食卓を囲む以外にも、休日の過ごし方など、家族の時間をつくることへの当事者意識が薄いと感じていました。
でも実態は、夫と私との間で「一家団らんの基準」が違っていただけ。このことに気づけたのも、後になって夫としっかり「対話」できるようになってからです。改めて夫の生い立ちなどを聞き、理解しました。

私だけでなく、「わたしたち」にとっての一家団らんとは?という視点で話し合うこと。ちょっとしたことのようで、こうした「対話」の積み重ねが夫婦を成長させてくれることを、私たちは身をもって知っています。

今、私たちはこうした経験を踏まえながら『夫婦会議®』で、「対話」の大切さを伝えています。ママ・パパのみなさんには、産前・産後も良好な夫婦関係を維持して、よりよい協力体制を築いていくためにも、「わたしたち」で答えをつくる「対話」をたくさん経験してほしいです。

お話・写真提供/長廣遥さん・百合子さん 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

長廣さん夫婦のインタビューを読んで、「うちの家庭と似ている」と思ったママ・パパもいるのではないでしょうか。長廣さん夫婦は、当時のことを振り返り「ママ・パパたちには、私たちの黒歴史を反面教師にしてほしい」と言います。

インタビューの2回目は、長廣さん夫婦の関係が改善したきっかけと第2子誕生での気づき、そして『夫婦会議®』オリジナルの対話のコツを紹介します。

※『夫婦会議®』は、Logista株式会社の登録商標です。

Logista株式会社 -世帯で道を切り拓く場所-(ロジスタ) - はじめよう『夫婦会議&reg』

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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