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小児がんと向き合った12歳の少女が描く妖精のキャラクター「キラちゃん」が、国際小児がん学会アジア大会のイメージキャラクターに!込められた思いとは?

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オープニングセレモニーでダンスパフォーマンスを披露した子どもたち。小児がんに立ち向かう4人の子どもたちも元気いっぱいに踊りました。(写真提供/国立成育医療研究センター)

第16回国際小児がん学会アジア大会(SIOP Asia 2024)が、2024年6月22日~25日に横浜で行われました。大会のイメージキャラクターは、絵本『ビーズのおともだち』に登場する妖精のキラちゃん。この絵本の作者であるおおにしわかちゃんは、国立成育医療研究センターで神経芽腫の治療を受けていましたが、今から2年前、12歳のときにお星さまになりました。

今回、キラちゃんがイメージキャラクターに選ばれたのは、どのような思いからでしょうか。学会代表者の同センター小児がんセンター長の松本公一先生、米田光宏先生、加藤実穂先生、わかちゃんの母親である大西優子さんに聞きました。

「がんで亡くなる子どもをゼロに」。その願いのもと、国内外から740人が参加登録

SIOP Asia 2024の代表者の松本先生(左)と、副会長の米田先生(右)。日本初主催の大会は盛況でした。(写真提供/国立成育医療研究センター)

――「SIOP Asia」について教えてください。

松本先生(以下敬称略) SIOPは、がんと診断された子どもと若年成人に関する問題を研究し、解決するために1969年に設立された歴史のある学会です。そのアジア支部であるSIOP Asiaは2014年から毎年総会を開催し、アジア地域の小児がん医療の質の向上に貢献しています。

この学会の目標は「がんで亡くなる子どもをゼロにする」こと。がんと診断された子どもや若者が最適な治療やケアを受けられるようにするために、さまざまな活動を行っています。

――日本で開催されたのは今回が初だったとか。

松本 そうなんです。第16回大会を日本で行うことになり、日本で唯一の国立小児病院である国立成育医療研究センターの小児がんセンターが主催することになりました。副会長の米田先生、副事務局長の加藤先生をはじめ、当センターで小児がんの治療・研究にあたる医師たちが大会を運営しました。
43カ国から740人もの参加登録があり、4日間にわたり、小児がんの患者さんを支えるための議論と、知見の共有を行いました。

わかちゃんが生み出した妖精のキラちゃんをイメージキャラクターに

左から松本先生、大西さん、加藤先生、塩田先生、米田先生。皆さん、キラちゃんのバッジをつけています。

――米田先生は、わかちゃんが大阪に住んでいたころの病院の主治医だったそうです。

米田先生(以下敬称略) わかちゃんが4歳のとき、神経芽腫と診断されたのは大阪の病院で、私はその病院の主治医で手術を担当しました。わかちゃんが6歳のとき、お父さんの仕事の都合で東京に引っ越し、当センターに転院したのですが、私もほどなく当センターでの勤務が決まり、再会したんです。当センターでの主治医は塩田曜子先生でしたが、わかちゃんとのご縁を感じました。

わかちゃんが亡くなったことは非常に残念で、小児がんの治療・研究のさらなる進歩の必要性を痛感しています。

病室でいつもニコニコ絵を描いていたわかちゃん。似顔絵を描いてくれたことも

『ビーズのおともだち』の原作。わかちゃんが描いた絵を優子さんが手作りで冊子にしました。(写真提供/大西優子さん)

――わかちゃんは入院中も病室でよく絵を描いていたとか。

米田 わかちゃんはいつもニコニコしていて、病室で楽しそうに絵を描いている姿を覚えています。私の似顔絵を描いてくれたりもしました。
出版された絵本『ビーズのおともだち』 は、もちろん読ませていただきました。わかちゃんそのもののような、優しさにあふれる作品だと思います。
また、この絵本の原作となる、優子さんが作った手作りの絵本もいただいていて、今も大切に保管しています。

「みんなで小児がん患者を支える」。そのテーマにキラちゃんが最適だった

SIOP Asia 2024のイメージキャラクターのキラちゃんは、大会の案内板などにも掲載されました。(写真提供/国立成育医療研究センター)

――大会のイメージキャラクターは、『ビーズのおともだち』に登場する、星の妖精のキラちゃんです。どのような経緯でイメージキャラクターに決まったのですか。

松本 昨年2月に、SIOP Asia 2024を当センター小児がんセンターが主催することが決まったとき、「みんなで小児がんの患者さんを支えていこう」というメッセージにふさわしいイメージキャラクターがほしいということになりました。話し合う中で、「わかちゃんに協力してもらおう!」という提案が出て、全員が賛成しました。

米田 小児がんと向き合っている世界中の子どもたちに『ビーズのおともだち』を届けたいというのが、わかちゃんとご家族の願いだと聞いていました。小児がんの患者さんを支える仕事をしている医療従事者に、この絵本のことを知ってもらう絶好の機会になるとも考えました。

大会ホームページでわかちゃんとキラちゃんのことをアピール

大会に出店したニジノ絵本屋さんのブースでは、キラちゃんグッズを手に取る人がたくさんいました。(写真提供/大西優子さん)

――SIOP Asia 2024のホームページには、わかちゃんとキラちゃんを紹介するバナーが英語でアップされていました。

加藤先生(以下敬称略) わかちゃんとキラちゃんのストーリーに感銘を受け、SIOP Asia 2024に参加するアジア各国の先生方にぜひ知ってもらいたくて、ホームページに掲載するための説明資料を作りました。そして今年の2月に優子さんに連絡を取り、資料のチェックとブラッシュアップをお願いしたところ、快諾してくださいました。
学会ホームページに「Who is KIRA-chan?」というバナーを作り、優子さんと一緒に作成した資料を掲載し、アピールしたんです。

また会期間中、『ビーズのおともだち』の版元のニジノ絵本屋さんが、キラちゃんの入った大会グッズを販売しました。「かわいい~!!」と評判でした。

元Foorinのメンバー2人がダンスに参加し、子どもたちをサポート

Foorin楽団でわかちゃんとともに活動した池下リリコさんと吉田日向さんが、スペシャルサポーターとして参加してくれました。

――6月22日のオープニングセレモニーでは、小児がんと立ち向かう4人を含む子どもたちのダンスパフォーマンスが披露されました。

加藤 当センターで小児がんの治療を受けた小学校2年生、6年生、中学1年生、高校2年生の4人が、ダンスチーム「ブリリアントマーメイド」とのコラボでダンスパフォーマンスを行いました。そこに、小学校4年生のわかちゃんの妹さんも参加してくれたんです。

大西さん(以下敬称略) 国立成育医療研究センターで治療を受けた子どもたちが、オープニングセレモニーでダンスをすると加藤先生からお聞きし、「わかの妹も一緒に踊らせてください」とお願いしました。小児がんと向き合い続けなければならないのは、きょうだいも同じです。

小児がんと向き合う人への希望になってほしいという願いをこめてダンスを

「子どもたちの笑顔は未来への希望」というメッセージも込めて、ダンスパフォーマンスが披露されました。(写真提供/国立成育医療研究センター)

――オープニングパフォーマンスに込めた思いとは?

大西 MERRY PROJECT(※1)の水谷孝次さんの「子どもたちの笑顔は未来への希望」というメッセージも込められています。わかの妹の笑顔が、小児がんと向き合う人への希望になってほしいと思いました。

また、わかがFoorin楽団(※2)で一緒に活動したことで今も交流がある、元Foorin(※3)のメンバー、池下リリコさんと吉田日向さんも、スペシャルサポーターとして参加してくれることになりました。

ダンス衣装は『ビーズのおともだち』に最初に出てくる虹色のビーズの色を表現

リリコさんと日向さんが着用したTシャツの背中には、わかちゃんとFoorin楽団みんなの名前が書かれています。

――大西さんは、オープンセレモニーに出演する子どもたちの衣装のカラー提案とコンセプトを担当しました。

大西 小児がんと向き合う4人とわかの妹は5色のTシャツを着用しました。小児がんの治療のたびに受け取る「ビーズ・オブ・カレッジ(勇気のビーズ)」(※4)の虹色のビーズの色に由来しています。
つらい治療を乗り越えていく過程で、子どもたちは色とりどりのビーズを受け取ります。ビーズをつなぐことを通して、自分が乗り越えてきた治療を振り返り、勇気や希望を実感できるというものです。

――わかちゃんは、ビーズをとても大切にしていたそうですね。

大西 ビーズをもらうたび、とてもうれしそうにしていました。『ビーズのおともだち』はこのビーズから着想を得て生まれました。虹色のビーズは「医療スタッフの訪問」を意味していて、絵本でも最初に登場するビーズです。世界から医療関係者が集まる学会のオープニングの場にピッタリだと思いました。

――リリコさんと日向さんは青色のTシャツを着ていました。

大西 虹は雨上がりのきれいな空にかかるので、2人には青空の色のTシャツ。
さらに、Foorin楽団を思い出させるとてもすてきなデザインを日向さんとお母さんで発案し、衣装にリメイクしてくれました。背中に「WAKA」と大きく描いてくれて、わかに寄り添ってもらえていると感じてうれしかったです。

ダンスを披露する子どもたちの姿は、学会に参加した医療従事者のパワーに

わかちゃんのイラストを元に、わかちゃんのおばあちゃんが制作したキラちゃんのぬいぐるみ。(写真提供/大西優子さん)

――オープニングセレモニーを見た参加者からは、どのような感想がありましたか。

松本 オープニングセレモニーのステージは、世界の小児がん治療の発展を考える大会の幕開けにふさわしいものだったと、多くの参加者から称賛の言葉をいただきました。

小児がんは治癒が期待できる時代になってきましたが、わかちゃんのように、まだまだ治らない子も多い。小児がんで亡くなる子を減らすためには、もっともっと新しい薬や治療法の研究が必要です。
小児がんに立ち向かう子どもたちの笑顔を守るために、私たち医療従事者は日々精進しなければいけない。ステージの子どもたちを見て、パワーをもらうと同時に、その気持ちを新たにしました。

お話/松本公一先生、米田光宏先生、加藤実穂先生、大西優子さん 写真提供/国立成育医療研究センター、大西優子さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

元気いっぱいに踊る子どもたちの姿は、小児がんの治療・研究に携わる医療従事者たちのエネルギーとなったようです。パフォーマンス終了後、ステージは大きな拍手で包まれていました。

※1/2008年、北京五輪開会式の芸術顧問として、世界中の子どもたちの「笑顔の傘」を披露したMERRY PROJECTの水谷孝次氏がセレモニーの総合演出を務めた。

※2/Foorinのメンバーと、病気や障害のある子どもたち10人が結成した音楽ユニット。

※3/「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」のために、オーディションで選ばれた小中学生による音楽ユニット。楽曲の『パプリカ』が大ヒット。

※4/アメリカの小児がん専門看護師が開発したプログラムで、日本では認定NPO法人シャイン・オン・キッズが実施している。

国際小児がん学会アジア大会ホームページ

●記事の内容は2024年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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