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妊娠6カ月で聞いた赤ちゃんの心臓疾患。息をするのを忘れるぐらいのショック、「私のせい?」と責め続ける日々【体験談】

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果歩ちゃんが生まれて数時間後にNICUで抱っこした裕美さん。

妊娠6カ月のときにおなかの赤ちゃんに先天性の心臓の病気があるとわかった重宗裕美さん(神奈川県在住)。生まれた赤ちゃんは、1歳半までの間に3回の大きな手術を受け、その後もさまざまな合併症の治療を続けながら闘病し、現在15歳の高校1年生となりました。裕美さんに思いも寄らぬ病気を伝えられた妊娠中から出産後の治療のことなどについて話を聞きました。
全3回のインタビューの1回目です。

妊娠6カ月の健診で赤ちゃんの心臓の病気が判明

おなかの赤ちゃんの心臓に病気があるとわかったときのエコー写真。

知人の紹介で知り合った裕美さんと夫の信二さん。出会ってすぐに意気投合した2人は間もなくつき合い始め1年後に結婚。その1カ月後に裕美さんの妊娠がわかりました。

「妊娠がわかってからひどいつわりで吐き続けて寝込んでいましたが、妊婦健診では異常はなく順調でした。妊娠5カ月に入ってやっとつわりから解放され、妊婦学校で知り合った友だちと食事をしたり、子どもと一緒の明るい未来を思い描いて妊婦生活を楽しみ始めました。都内から夫の実家のある神奈川県に引っ越す準備をしながら、生まれてくる家族との新生活を楽しみにしていました。

引っ越しのため、都内の病院から新居近くのクリニックに転院し、妊婦健診を受けたときのこと。いつもより超音波エコー検査に長い時間がかかっているな~と感じ、医師が怖い顔をしていることに気づきました。もしかして何かあるのか・・・と不安に思っていたら『赤ちゃんの心臓の形に異常が見られる。詳しい検査が必要です』と言われました。

赤ちゃんは健康に生まれてくるものだと思い込んでいた私は、ショックを通り越して意味が理解できない、思考が止まるような感覚でした。そして『何がいけなかったのだろうか?』と、自分を振り返り責める気持ちでした。それぞれが家庭環境にも恵まれ苦労なく生きてきた私たち夫婦にとって、ある日突然別世界に迷い込んだようで人生が一変しました。詳しい検査をするまで、私も夫も『どうか赤ちゃんの病気が重いものではありませんように』と毎日神頼みをして涙を流す日々でした」(裕美さん)

大きい病院で詳しい検査をするため、裕美さんはクリニックの紹介で子ども専門病院に転院し、母性病棟へ数日間の検査入院をすることになりました。

「検査の結果を夫と2人で聞きに行くと、医師からは『左心低形成(さしんていけいせい)』という先天性の心臓病の可能性が高いと言われました。そのほかにも聞いたこともない病名がたくさん並び、脳や胆道閉鎖などほかの病気の可能性もあるとのこと。医師から説明される内容があまりに重く、息をするのも忘れて苦しくなってしまうほど。面談の部屋を出るときにはめまいのようにくらくらして気持ち悪くなる、そんな状態でした。

医師から聞いた病名をインターネットで検索して調べたけれど、当時は情報がほとんど見つかりません。医師は『だれのせいでもない』と言ってくれたけれど、やはり自分を責めて毎日泣いていたし、一体これからどんな生活が待っているのか考えるのはこわいことでした。散々泣いて、あるとき妊娠中に病気がわかったから、私には受け止める時間がある、と気づきました。それに泣いてばかりじゃ生まれてくる赤ちゃんがかわいそうだなって。それからは気持ちを切り替えて楽しい妊婦生活に変えていきました。地域の母親学級で知り合ったママ友たちとも、気軽につき合ってほしくて、おなかの子の状況をオープンに話していました」(裕美さん)

生まれてすぐ手術するために・・・

生まれて数時間後、NICUにいる果歩ちゃん。

心臓は、右心房·右心室·左心房·左心室と4つに分かれていて、酸素を効率よく全身に届けるために、酸素の少ない静脈血と、酸素の多い動脈血が混ざらないようになっています。そして左心室は全身の臓器に血液を送るためのポンプ、右心室は肺に血液を送るためのポンプの役割をしています。左心低形成症候群は、左の心室が小さいために、全身に血液を送る量が少なくなってしまい、臓器不全が引き起こる病気です。

「医師からは、フォンタン手術という手術が必要だと言われました。左心室が低形成のため、全身へのポンプとして右心室を使用し、上半身、下半身からの静脈血は心臓を経由せず直接肺動脈へ流れるようにすることで、チアノーゼを改善する手術だそうです。
そのために、産後すぐに1回目の準備手術を、しばらくして2回目の準備手術(グレン手術)を行い、その後1歳半ごろにそのフォンタン手術をめざすとのことでした。

産後すぐに1回目の手術をするためには、赤ちゃんにある程度の体重が必要だということで、医師からは『おなかでしっかり育ててあげてください』と言われ、私は早産の恐怖とプレッシャーをすごく感じていました。赤ちゃんの命が私にかかっている、その責任が私にとってはとてつもなく大きいものでした」(裕美さん)

2008年8月、妊娠40週のときに自宅で陣痛が始まった裕美さん。陣痛開始から16時間後に、体重2768g、身長47cmの女の子を出産しました。

「無事に生まれたときには、『かわいい~』とか『うれしい~』よりも『無事に産めた。よかった』とほっとする気持ちが大きかったです。あのときの自分の気持ちを表現できる言葉は見つかりません。生まれてすぐに抱っこした赤ちゃんは泣き声も小さく黄疸(おうだん)も見られました。とにかくいろんな病気の可能性を言われていたので、この子にいったいどんな病気があるのかもすごく心配でした」(裕美さん)

赤ちゃんは出生後すぐに検査へ。その数時間後、裕美さんと信二さんは、検査結果とともに正式な病名と治療法など、何人もの診療科の医師から説明を受けました。

生後2日で心臓の手術を受けた

生後4日、手術の2日後のNICUで、果歩ちゃんと信二さん。

裕美さんと信二さんは赤ちゃんに「果歩」と名づけました。そして果歩ちゃんは生まれてすぐにNICUに入院し、処置を受けました。

「赤ちゃんの心臓にある動脈管という血管は、ママのおなかにいるときは開いていて血流が確保されるのですが、生まれたあとにはしだいに閉じていき、血流が少なくなって危険な状態になるために、動脈管が閉じないように生まれてすぐに点滴による治療を行う、との説明がありました。

私は産後にNICUの果歩に会いに行きました。果歩はNICUに入院しているほかの赤ちゃんよりずっと体が大きく、保育器にも入ってはいませんでしたが、マスクやモニターなどたくさんのコードがつながれていました。そして、生後2日で1回目の手術を受けました。手術後は2週間で退院し、自宅で様子を見ることになりました」(裕美さん)

厳しい水分制限のなか、ずっと抱っこであやし続ける毎日

生後2日の手術のあと、NICUで裕美さんと信二さんと果歩ちゃん。

自宅で果歩ちゃんのお世話をする生活で、裕美さんがいちばん大変だったのは「果歩ちゃんに水分制限があったこと」だと言います。

「水分を取ると血液量が増加します。血液が多くなるとその分心臓も頑張って働くので、手術の後に心臓に負担をかけすぎないために、水分制限をする必要がありました。果歩に与えていいミルクは1日400mL。搾乳をして、1回50mLを8回飲ませていました。おなかが満たされないからか全然寝てくれないし、しかも心臓病の子は心臓に負担をかけないために泣かせちゃいけないんです。だから、1日20時間くらいずっと抱っこであやしている状態でした。抱っこしながら片手で搾乳をして・・・。私の体力も精神的にも限界になりそうな日々でした。

退院して2週間ほどで検査外来へ行くと、医師から「心臓への負担が強く、次の手術を急いだほうがいい」と言われ、2回目に行なうグレン手術は通常生後6カ月で行うところを、早めて生後3カ月で受けることになりました。さらに肺動脈と大動脈を合体させるダムス・ケイ・スタンセル手術とペースメーカーを埋め込む手術も同時に行うことになりました」(裕美さん)

【柳貞光先生より】胎児診断の普及で早めに病気を発見できるが、同時に家族の苦悩も始まる

先天性心疾患(生まれつきの心臓病)は出生の約1%程度に認めます。外科治療の進歩により2000年ごろより手術成績は飛躍的に改善しています。また近年ではお母さんのおなかの中にいる時点で診断を行う胎児診断も非常に普及してきています。このことは早めに病気を発見し治療ができるという利点もありますが、まだ出生されていない時期からご家族の苦悩が始まることも意味しています。ご両親ともにおなかの中にいるときから苦悩しつつも、果歩ちゃんのことを思い出生後の準備をしてこられたのだと思います。


お話・写真提供/重宗裕美さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

▼続編記事<第2回>を読む

▼続編記事<第3回>を読む

おなかの赤ちゃんに心臓病があるとわかってからの不安や、赤ちゃんのために前向きになろうとした決意、産後の果歩ちゃんの手術・・・数々の困難がありながらも果歩ちゃんの命を守ろうとする、裕美さんの深い愛情を感じます。
次回の内容は、フォンタン手術のことや、新たに発症した病気のことなどについてです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

柳貞光先生(やなぎさだみつ)

PROFILE
神奈川県立こども医療センター 循環器内科 部長。1994年琉球大学医学部卒業。2005年からこども医療センター循環器内科に勤務。出生時から子どもたちの成長に寄り添い、子どもたちのQOLが少しでもあげられる医療の提供をめざす。日本小児科学会 小児科専門医、日本小児循環器学会 小児循環器専門医。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年7月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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