【ポジティブ低収入生活漫画家・いしいまき】40歳で第1子を出産!初めての妊娠の理想と現実とは?
厚生労働省が発表している第1子出生時の母親の平均年齢は30.9歳。一般的に初産なら35歳以上での出産を「高齢出産」と呼びますが、近年ではめずらしいことではなくなっています。
実用的エッセイ漫画『低収入4年目夫婦の月13万円生活』の作者であるいしいまきさんもその1人。2023年11月に、40歳で第1子の息子さんを出産したいしいさん。「不安やトラブルがつきなかった」という妊娠生活や出産時のエピソードについて聞きました。
全2回インタビューの1回目です。
39歳になり、初めて「子どもがほしい!」という気持ちになった
――著書には穏やかで優しい夫さんと、明るくポジティブないしいさんの、低収入でも生活を楽しむ様子が描かれていますが、家族計画について妊娠前に2人で話し合っていたことはありますか?
いしいさん(以下敬称略) もともと私も夫も「子どもはもたずに、夫婦2人で生きていこうね」という考えでした。実際、2人で仲よく工夫や協力をしながら充実した日々を送っていたのですが、私が39歳になったとき、「子どもがほしい」という感情がふつふつとわいてきたんです。
――感情の変化には、何か大きな出来事やきっかけがあったのでしょうか?
いしい もともと夫は東京でパン屋を営んでいたのですが、ある日、「関西でカレー屋を経営している人のもとで飲食店経営の勉強をしたい」と相談を受けて。それで夫婦一緒に東京から関西へ拠点を移すことにしたのですが、その引っ越しがきっかけの一つだったと思います。
たまたま引っ越し先で知り合った人たちに子育て中のママやパパが多くて、その様子を間近に見ていたら「子育てって、楽しそうだな。いいな・・・」と、うらやましく感じて。そう感じることができたのは、その人たちが気持ちに余裕を持って子育てをしているように見えたからだと思います。そんな地域の雰囲気にも影響を受けたかもしれないですね。
ちょうど同じときに、私の両親から「まきの子どもを見てみたい」と言われました。私の妹はすでに出産して子どもがいたので、「もう孫はいるから、私には子どもがいなくてもいいか」と思い込んで、どこか勝手に納得して安心していたんですが・・・でも、その言葉を受けて「両親はそういうふうに思っていたんだな」と知ることができました。
――小さな出来事がじわじわと積み重なっていったんですね。
いしい そうですね。39歳という年齢になって、本能的なものもあったのかもしれません。でも、やっぱり環境の変化は大きかったですね。独身時代に鹿児島から上京して、東京には結婚後も含めて2年ほど住んでいましたが、家賃が高くて・・・。夫婦2人で生活をまわしていくのがやっとでした。私に余裕がなかったからか、まわりのワーキングマザーを見て「みんなとても頑張っていて、すごく忙しそう」と感じて、「私はそこまで頑張れないな…」と、しり込みしてしまう気持ちがありました。今の地域に引っ越して、家賃含めての生活費や私の心に少し余裕ができて、「私も子育てをしてみたい」という気持ちがわいてきたのだと思います。
――いしいさんの「子どもがほしい」という気持ちの変化について、夫さんはどんな反応でしたか?
いしい 夫は、初めはとてもびっくりしていました。反対はされませんでしたが、やっぱりお金のことなど「大丈夫かな?」という心配が大きかったのかなと思います。でも、そんな夫をよそに、私は妊活について調べたり、本を読んだり、もう1人で先に進み出していました(笑)
結局いろいろ調べはしましたが、夫婦ともに「自然に任せてみよう」という意見が一致し、特別な検査などはあえてしませんでした。そうしたなかで妊娠がわかったときはもちろんとてもうれしかったですが、妊娠・出産が自分ごととなることに、やはり不安もありました。
常に「壁」が立ちはだかる!? ハラハラ続きの妊婦生活
――初めての妊娠生活はどんなふうに過ごしましたか?
いしい 年齢のこともあって、なかなか妊娠を手放しで喜べる余裕はなかったですね。無事に出産まで妊娠を継続できるのか、出産までに立ちはだかる、いわゆる「妊娠◯週の壁」が気になってしまって。「この壁をクリアしても、次はこの壁がある」と常に何か起きたら・・・と心配でした。
妊婦健診では「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と毎回ひやひやしていたのを覚えています。ようやく安定期を迎えられたと思ったら、妊娠糖尿病(にんしんとうにょうびょう)になってしまって・・・。妊娠中はただでさえいろいろな制限があるのに、さらにそこへカロリー制限や食事を1日6回に分ける制限も加わって、これが結構しんどかったですね・・・。私にとって、おいしいものを食べることは日ごろのストレスを解消するとても楽しみな時間だったので、つらかったです。
――妊娠中は本当に予期せぬ事態が起こりやすいといいます。
いしい 妊娠前はめったに風邪をひかないタイプだったのですが、妊娠中に夏風邪をひいてしまったんです。「妊婦だから薬は飲めないだろう」と誤った思い込みで、病院にかからずにどうにかやり過ごしていたらどんどん悪化してしまい・・・。
いよいよ限界を感じて病院に行ったら、喘息(ぜんそく)になっていたんです。妊婦でも服用できる吸入薬を処方してもらえたので、我慢せずにすぐに病院に来ていたら・・・と反省しました。もしも今、妊娠中で体に不調を感じている人がいたら「我慢しないで、すぐにかかりつけの産婦人科医に相談を!」と伝えたいです。
ほかにも妊婦歯科健診で「問題なし」と言われていたのに、出産予定日の5日前に歯に激痛が走り、あわてて歯科医院で診てもらったら「産後すぐに歯を抜かないといけないかも」と言われました。そのときは予定日も間近だったので、応急処置だけしてもらったのですが、思い返せば妊娠中は産院以外にもいろいろな病院にお世話になりました。
いよいよ出産当日。無痛分娩の予定が予想外のお産に・・・!
――出産は地元の鹿児島に戻られたそうですが、里帰り先での生活はいかがでしたか?
いしい 鹿児島へは飛行機移動ということもあり、予定日は11月でしたが、少し余裕をもって9月に里帰りをしました。里帰り先の産院は、関西の産院とは真逆のスパルタ指導! 「カロリー制限、ちゃんと守っているよね?」「しっかり1時間は歩いて」など、管理が厳しかったですが、そのときの頑張りがあったからこそ今があると思うので、結果的にはスパルタでよかったと思っています(笑)
――出産までの流れを教えてください。
いしい 妊娠糖尿病はおなかの赤ちゃんが大きくなりすぎる恐れがあるからと、計画入院での出産になりました。予定日当日も陣痛がこなかったため、陣痛促進剤を使うことになったのですが、それでもなかなか陣痛につながらず・・・。翌日になってやっと、という感じでした。「日々、節約を頑張っているからこそ、妊娠・出産について惜しまずお金を使おう!」と考えていて、出産は無痛分娩を希望しました。でも、無痛の麻酔が効きすぎてうまくいきめなかったようで、分娩の途中で麻酔を止めることに・・・。「無理!もう出産やめます!」とギブアップしそうになるくらい、本当に痛くて。最終的には赤ちゃんがうまく出てこられず、吸引分娩になりました。出産は本当に予想外のことが起きるんだ・・・と身をもって感じましたね。
――初めて赤ちゃんの顔を見られたときはどんな気持ちでしたか?
いしい 「お顔があって、おててがあって・・・ちゃんと人間だ。本当に人間が私のおなかに入っていたんだ!」という気持ちでした。エコーでは、いつももにょもにょと動いていたので顔をはっきり見ることができなかったんです。だから、やっと顔を見ることができたことに感激しました。3340gで生まれた息子は、思っていたよりもふにゃふにゃしていなくて、全体的にしっかりとしていたことにも驚きましたね。
お話、漫画提供/いしいまきさん 取材・文/高本亜紀、たまひよONLINE編集部
「出産直後は、本当にくたくた。授乳のために数時間おきに助産師さんが赤ちゃんを連れてくるのでほとんど寝られず・・・振り返ると、あの入院中がいちばんしんどかったかもしれない」と話してくれたいしいさん。現在、息子さんは生後8カ月。最近の育児の悩みは、息子さんが夜ぐっすり寝てくれないことと言います。
インタビューの2回目は第1子の誕生後、夫婦2人から家族3人になった新生活について話を聞きます。
いしいまき
PROFILE
コミックエッセイ作家&漫画家。2023年11月に第1子を出産し、現在は夫と息子と3人暮らし。著書に『ぽっちゃり女子のときめきDays』(メディアファクトリー)『比べて悩んで落ち込んで』(KKベストセラーズ)『低収入新婚夫婦の月12万円生活』(オーバーラップ)がある。
『低収入4年目夫婦の月13万円生活』
『低収入新婚夫婦の月12万円生活』待望の続編。関西に拠点をうつし節約スキルを向上させながら、暮らしぶりはより豊かに、夫婦仲もますます良好に! 前作でも好評だった節約術や、安くておいしいごはんレシピを多数掲載した、実用的エッセイ漫画。いしいまき著。1300円(税別)/オーバーラップ
●記事の内容は2024年8月の情報で、現在と異なる場合があります。