「動画ばかりでは退屈を過ごす力が養われない」という先生の言葉に共感しかない!子どものゲーム問題で悩む、俳優加藤貴子が専門家に聞く


9歳と7歳の2人の男の子の母親で俳優の加藤貴子さんが、育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第26回。今回のテーマは「子どもとゲーム・ネットとのつき合い方」について。ネット依存専門心理師で、2児の母親でもある森山沙耶先生に、とくに未就学児の時期に気をつけたいことについて聞きました。
子ども向けのコンテンツを親子で話しながら利用しよう
加藤さん(以下敬称略) 数年前に新型コロナ感染拡大で外出制限があったこともあって、コロナ前に比べて、乳幼児期からテレビ・動画を見せる機会が増えたような気がします。テレビ・動画の使用時間については各家庭でどのような目安を持っているといいでしょうか。
森山先生(以下敬称略) 世界保健機関(WHO)で推奨されている「5歳未満の子どものスクリーンタイムの目安(1日の推奨時間)」は
・1歳未満:推奨しない
・1歳児:推奨しない
・2歳児:1時間以内
・3~4歳児:1時間以内
となっています。でも、子育てしている家庭で実際にこの目安を守れるかというと・・・難しいところですよね。私の子どもたちも、テレビの視聴時間も含めると、この目安は守れていなかったと思います。
ただ、WHOがこの目安を推奨しているのは、スクリーンの前でずっと座りっぱなしの姿勢が長時間続くことが、乳幼児の健康や発達によくないから、ということもあるからでしょう。座ったままでは、身体活動の量が減るわけで、そうすると睡眠にも影響が出る可能性があります。だから、この目安を気にしすぎるよりは、外遊びする時間や、睡眠の時間をしっかり確保することを大事に考えたほうがいいでしょう。
加藤 時間だけではなくて、視聴する内容にも気をつけたほうがいいですか?
森山 そうですね。YouTubeを見せるときも教育的な内容にするとか、YouTubeキッズを利用して子どもが見ても安心できる内容に限る、といった注意は必要です。そして乳幼児にとくに大事と言われているのが、インタラクティブな要素があることです。
加藤 インタラクティブな要素、とはどのようなものでしょうか?
森山 双方向性を持ったコンテンツ、ということです。タブレットなどを利用する際には、情報を受け取るだけではなく、タッチすると動物が動くとか、塗り絵ができる、といった視聴する側にも行動と思考を伴う要素があるアプリなどがおすすめです。そして、できれば親も一緒に「これってこうなのかな」「こんなことが楽しいね」と会話をしながら見る時間を作ってあげることをおすすめします。動画を見ながら一緒に工作をしてみる、実験をしてみる、というのもいいと思います。
動画ばかりでは退屈を過ごす力が養えない
加藤 家族で出かけるとき、大人が食事をしている間や、電車に乗っている間など、小さい子がタブレットを見ている状況が多く見られる気がします。
森山 病院の待ち時間とか、新幹線移動のときとか、長時間静かにすることが求められるシチュエーションで、アニメや動画を見せるというのはやむを得ない面もありますよね。便利な子育てツールとして使う分には、いいと思うんです。
たとえば、うちの下の子は美容院で髪を切るのがすごく嫌いなんです。数カ月に1回美容院に行くときには、大好きな恐竜の動画を見せて気を紛らわせて、髪を切ってもらっています。
ただ、食事に行くたびに毎回動画を見せるとか、外出するときにベビーカーにスマホを取り付けて動画を見せる、ということが習慣化してしまうと、退屈だな、ひまだな、という感覚を自分の中でどう処理するのかを学ぶ機会がなくなってしまいます。将来的にスマホがないと退屈をしのげなくなってしまうことは心配です。
加藤 退屈を楽しく過ごす力が養われなくなってしまうんですね。
森山 子どもはひまだからこれをやってみよう、あれをやってみよう、という選択肢を持っていないですよね。幼少期の子どもに、遊びのレパートリーをいかに増やしてあげるかということは子どもの脳の発達の上でとても大事だと思います。
とくに未就学の時期、幼児期は脳の発達が著しく成長発達する時期です。さまざまなものを見て触れて、神経回路が形成されます。手を使って遊んだり、五感を使ったりする刺激が入ってこないと、成長発達に影響を与える可能性もあります。幼児期にこそ親子でのさまざまな体験を大切にしてほしいなと思います。
加藤 タブレットを見せる前に、親が工夫できることはありますか?
森山 スマホは最終手段にして、折り紙やお絵かき帳や図鑑など、子どもが好きな遊び道具をいくつか持って行くといいかもしれません。ある程度の時間をつぶせそうなグッズをいろいろ試して選択肢を持っておくといいと思います。
きょうだいでゲーム依存のリスクに違いはある?
加藤 長男が友だちとオンラインでシューティングゲームをしていると、言葉使いがすごく乱暴になって心配です。あまりにもひどいときは、相手に聞こえようが「言葉使いが悪いよ!」と口をはさんでしまいます。きっと長男の友だちは「おまえの母ちゃんこわっ!」ってなってるかも(笑)
森山 小学校4年生ならいいと思いますよ(笑)。最近、しかる大人も減っていますから。
でも、友だちとオンラインゲームをしていると言葉使いが悪くなるのは、あるあるですよね。低年齢の子の場合は、感情的になっているときに親が介入しすぎると、火に油を注ぐようなことになりかねないので、あとで落ち着いたときに「あの言い方はすごく嫌だと思った」「やめてほしい」と話すようにするといいかもしれません。
加藤 きょうだいがいる場合、下の子のほうが上の子の影響で早めにゲームや動画に接するからハマりやすい、というような傾向はありますか? わが家は小1の二男がお兄ちゃんと遊びたくて、ついついゲームの時間が長くなっているのが気になります。
森山 きょうだいで依存のリスクの違いがあるかどうか、といった研究は見たことがないのでわかりません。ただ統計的に分析すると、習慣的にゲームを始める年齢が低年齢であるほど、将来の依存のリスクが高くなる結果は出ています。
とくに、未就学からゲームを始めた子どもは、中学生になった時点でゲーム依存のリスクが約1.7倍高い、という研究結果もあります。
加藤 そうなんですね。二男は長男の習い事の待ち時間に動画やゲームをして待っていてもらうこともあるので、使い方を見直したいと思います。
お話/加藤貴子さん、森山沙耶先生 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
病院や長距離移動などで静かにしないといけないときに、スマホやタブレットはとても便利なツールです。上手につき合うためには、利用方法や頻度を見直すことも大切なようです。
森山沙耶先生(もりやまさや)
PROFILE
2012年東京学芸大学大学院教育学研究科を修了後、家庭裁判所調査官として勤務。その後、大学病院や福祉施設にて心理臨床を経験。2019年8月、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにてインターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)を修了後、MIRA-iの設立に携わる。現在はネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行う。2児の母としても奮闘中。
加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。
●記事の内容は2024年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。