軽度知的障害に加えて、6歳で自閉症の診断も。療育園に通う中、年長でできることがぐーんと増えた【ウエスト症候群体験談】
小学5年生の長女と、年長のじょーくんの2人の子どもがいるまきさん。第2子のじょーくんは、生後7カ月のときに、主に乳児期に発症して、てんかん発作を繰り返す「ウエスト症候群(※)」と診断されました。ウエスト症候群は、かなり高い確率で発達の遅れが見られると言われています。じょーくんも、1歳6カ月健診で指摘を受けて、地域の障害児総合支援センターに行くようにすすめられました。
母親のまきさんに、じょーくんの発達の遅れや就学、長女への思いなどを聞きました。全2回インタビューの後編です。
※ウエスト症候群とは、小児のてんかんの1種で「点頭てんかん」とも言われる。3000人~4000人に1人の割合で見られ、生後3~11カ月ごろまでに発症しやすい。親族にてんかんの人がいなくても発症する。「 頭がよくカクンとなる」「何度もバンザイをする」「頻繁にびっくりする」など、最初はてんかん発作だとは気づかないことも。しかし早期治療が大切な病気で、治療開始時期が病気の経過に影響する。
1歳6カ月の乳幼児健診で発達の遅れを指摘される
じょーくんは生後7カ月のときに、てんかん発作を繰り返すウエスト症候群と診断されて入院して治療をしました。ACTHという治療でてんかん発作はおさまり、4歳で薬の服用も不要になりました。
しかし1歳半を過ぎたころから発達の遅れが気になり始めます。
「ウエスト症候群を発症するまでは、目が合うし、あやせばよく笑うし、生後4カ月ごろには首がしっかりすわるなど発達は順調でした。
しかしウエスト症候群と診断されて入院治療が終わってからは、バイバイなどのマネをしないし、指さしもしません。つかまり立ちを始めたのは1歳過ぎです。1歳6カ月健診で地域の障害児総合支援センターに行くようにすすめられました。ウエスト症候群は、かなり高い確率で発達の遅れも見られます。
発達検査などをしたところじょーくんは、2歳ごろに軽度知的障害と診断されました」(まきさん)
じょーくんの将来を考えて、まきさんは仕事を継続
じょーくんがウエスト症候群と診断されたのは、もうすぐ育休が明けて仕事復帰するという年度末でした。
「ウエスト症候群と診断されたときは『私、もう仕事ができないかも・・・』と思いながら、勤め先にじょーくんの状況を説明しました。すると社長が『気にしないでいいよ! お子さんのそばに付いていてあげて。落ち着いたらいつでも戻っておいで』と言ってくれて育休を延長してくれました。
4月に入園予定だった長女と同じ保育園も、事情を説明したところ、入園を待ってくれました。とてもありがたかったです。
夫とも『将来のことを考えると、少しでもお金を貯めておいてあげよう。長女に負担をかけないように』と話し、できるだけ共働きを続けることにしたんです。
じょーくんが年長になった今でもうちは共働きで、私は正社員で海外こども服のオンラインショップの運営をしています。じょーくんがきっかけで海外の子ども服の魅力にハマり、今では仕事につながっていることが幸せです」(まきさん)
じょーくんは、年中の夏ごろまでは保育園と2カ所の療育に通っていました。送迎が大変だったとまきさんは言います。
「保育園と2カ所の療育のほか、月に1回OT(作業療法)を受け、3カ月に1回発達外来の受診、半年に1回脳波検査を受けに行くなど、忙しい日々でした。上の子の用事もあります。みなさん働きながら、どのように調整してやっているんだろう? と思いました」(まきさん)
じょーくんは、今、年長です。年中の秋から療育園に移りました。
「近くに住む夫のお母さんが仕事を退職することになり、『じょーくんの送迎、手伝えるよ』と言ってもらえたので、療育園に通うことにしました。療育園の迎えのバスが来るのは、朝9時半です。私は朝9時の出社なので、これまでは時間が合わずに療育園をあきらめていたんです。夫のお母さんには感謝しています」(まきさん)
年長になり、ひらがなで名前が書けるなど目覚ましく成長
じょーくんは、言葉の遅れがあり、コミュニケーションが苦手。かんしゃくを起こしやすい面もあります。
「年長になって受けた発達検査で自閉スペクトラム症と診断されました。軽度知的障害もあるので、療育手帳をもらっています。
じょーくんは今、年長なので、来年春の就学を考えなくてはいけません。つい2カ月ほど前まで夫と私は、特別支援学校への入学を前提に考えていて、じょーくんが年中のときから見学にも行っていました」(まきさん)
しかし年長になって、じょーくんはできることがぐんと増えました。
「年長の6月ごろから、絵を描くことに興味を持つようになりました。そのころから変わり始めたんです。自分の名前をひらがなで書いたり、アルファベットも書けるようになりしました。
これまでは『今日の給食は何だった?』と聞くと、コミュニケーションが苦手なため無視されるようなことが多かったのですが、最近は『〇〇だよ』と答えます。園の献立と照らし合わせると、本当にそのメニューなんです。
以前は、言葉で気持ちを伝えられなかったので、かんしゃくを起こすことが多かったのですが、今は『〇〇して!』と言葉で伝えられるようにもなりました。
療育園の先生が言うには、年長はぐんと伸びる時期だそうです」(まきさん)
じょーくんの発達に合わせて、就学も特別支援学校と支援学級が候補になりました。
「先日、親子で就学相談に行きました。支援学級、特別支援学校、じょーくんが通う療育園の先生などが集います。
最初はじょーくんに『お名前は?』『何歳ですか?』といった質問などをしていました。その後は、じょーくんは席をはずして、就学についての話し合いです。
その席で、特別支援学校の先生からは『じょーくんが特別支援学校に来たら、リーダー的な存在になると思います。でも子どもは、まわりの子どもたちから刺激を受けて伸びる面があり、じょーくんは特別支援学校だと、まわりの子から受ける刺激は少ないと思う』との言葉がありました。そして支援学級の先生からは『人手がたりないから、こまかく見てあげられないかもしれない』と言われて、皆さんそれぞれにじょーくんのことを考えてくれていることは理解しつつ、親として何がベストなのかわからなくなってしまいました』(まきさん)
支援学級は長女が通う学校内に。長女の友だち関係も心配に
就学相談が終わり、役所から通知書が届きました。
「通知書には、支援学級の就学が望ましい(生活指導員配置)と記されていました。
数カ月前までは夫と2人で特別支援学校だと思っていたのに。それだけじょーくんが年長の夏に『できることが増えた』ということだと思うので、それはとてもうれしかったです。
しかし支援学級は、小学5年生の長女が通う小学校の中にあります。
じょーくんが入学するとき、長女は小学6年生で多感な時期です。同級生の中には、じょーくんのことを知らない子もいます。長女の友だち関係を考えると不安になりました」(まきさん)
まきさんは、長女に直接、じょーくんの就学について話しました。
「最初『じょーくん、どこの学校に行ったらいいと思う?』と聞いたら、『じょーくんは、じょーくんみたいな子がいる学校がいいと思うよ』と言うんです。理由を聞くと『もし、じょーくんがからかわれたりしたら、私怒って、その子とけんかしちゃうから・・・』って。
長女は、弟思いの優しい子です。長女の小学校にある支援学級に行く話をしたら、『じょーくん、休み時間にどっか行っちゃわないかな? 大丈夫かな?』と心配もしていました。
私が住む地域は、同じ小学校から、同じ中学校に進む子が多いです。小学校で友だち関係がギスギスしてしまうと、子どもにとって中学生活は不安だと思います。子どもの世界は狭いから悩みました」(まきさん)
まきさんは、療育園の先生にも相談しました。
「きょうだい児の問題に直面して、相談しているうちに私が泣きだしてしまって・・・。でも先生が『まきさんがそこまで悩んで出す答えなら、それでいいと思うよ。もし何かあったら、そこでまた考え直せばいいよ』と言ってくれて、前向きに考えられるようになりました。来春は支援学級に入学させようと思います。もし、何か不都合が出てきたときには、そのときは転校も視野に入れて一生懸命考えればいいと思っています」(まきさん)
お話・写真提供/まきさん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
じょーくんは2025年春に小学1年生になります。まきさんは「わが子が難病のウエスト症候群を発症するなんて夢にも思っていなくて、突きつけられた現実に絶望する時期もありました。でも、家族や友人、先生、医療従事者の方など、たくさんの方に助けてもらって、今があります。家族そろって過ごせていること、息子が隣で元気に笑ってくれている今があることに、本当に感謝しています」と言います。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。