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【医師監修】予防接種の最新知識 ホントに安全?ワクチンのことをもっと知ろう

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ワクチンと聞くと"重大な副反応が出ることがある"というイメージを持っている人が、少なからずいます。しかしそういう皆さんも、実はワクチンの詳しいことは知らない場合が多いのではないでしょうか。
ワクチンは安全なのか、危険なのか、どんな危険があるのか。最新の情報を神奈川県川崎市の「かたおか小児科クリニック」院長の片岡正先生に教えていただきます。

ワクチンは“感染症を防ぐために必要な免疫を安全につける方法”

――予防接種で使われるワクチンは、そもそもどういう役割のものでしょうか?

「乳幼児期には免疫が未発達なため、さまざまな感染症にかかります。感染していくことで免疫をつけながら成長していくのですが、感染症は風邪のように軽いものだけではありません。なかには深刻な合併症や後遺症を引き起こしたり、命を落とす危険がある病気もあります。
予防接種はそうした感染症を防ぐために必要な免疫を、安全につける方法です。ワクチンを接種することで、子どもたちを病気から守ることができるのです」

――ワクチンは何からつくっていて、どういう働きをするのですか?

「ワクチンには“生ワクチン”“不活化(ふかつか)ワクチン”“トキソイド”の3種類があります。
生ワクチンは生きた病原体の病原性を十分に弱めたものです。接種すると、ごく軽く病気にかかったような状態になり、免疫ができます。十分な免疫をつくるためには数週間かかります。ロタウイルス、BCG、MR(麻疹・風疹混合)、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)などがこれです。
不活化ワクチンは病原体を殺し、免疫をつけるのに必要な成分を取り出して病原性をなくしたワクチン。免疫をつくるのに複数回の接種が必要です。B型肝炎、ヒブ、小児用肺炎球菌、百日ぜき、ポリオ※、日本脳炎・インフルエンザなどです。
トキソイドとは細菌が生産する毒素だけを取り出し、その毒性をなくしたワクチン。基本的には不活化ワクチンと同じなので、複数回の接種が必要です。ジフテリア、破傷風(はしょうふう)などがこれに当たります」
(※ポリオは2012年8月まで定期接種では生ワクチン)

任意接種をためらう理由は「費用が高額」に次いで「副反応が怖い」から


※画像クリックで拡大表示可

――上のグラフは2016年夏にベネッセコーポレーション「たまひよ生活リサーチ」が、0歳~1歳6カ月未満の子を持つ女性約300人に実施した、予防接種に関するアンケート結果の一部です。任意接種をためらうかたの理由として、費用の高額さに次いで“副反応が怖い”が多数。やはりワクチンには副反応がつきものですか?

「ワクチンは異物を体の中に入れるので、副反応が出る可能性があります。よくある副反応は、“痛い”“はれる”“接種後にぐずる”など。ヒブや肺炎球菌は、接種当日に熱が出てぐずることがよくあります。
しかし、いずれの場合もたいてい1日で治まりますし、高熱にはならないことがほとんどです。
危険な副反応は“ぐったりする”“39度を超えるような高熱が出る”“けいれんを起こす”などですが、こういうことはめったにありません。起きた場合でも、ワクチンが原因ではなく、ほかの病気が原因でこの症状が出ている場合が多いのです。万一こういう症状が出たときには、接種の有無にかかわらず、急いで受診することが大切です」

ロタウイルスワクチンで“腸重積(ちょうじゅうせき)症”は起こる!?

――ロタウイルスのワクチンの副反応で、腸の中に腸が入り込んでしまう病気“腸重積症”が起こることがあると聞きます。

「ロタウイルスのワクチンを飲んだ人と飲まなかった人を比べると、たしかに飲んだ人のほうが、接種後一週間のうちに腸重積症が起こる確率が高いです。
しかし、ロタウイルス感染症はかかってしまうと根本的な治療法はありませんが、ワクチンを接種していれば重症になるのを約90%防ぐことができるのです。WHO(世界保健機関)は、ロタウイルスワクチンを子どもが接種する最重要ワクチンのひとつに位置付けています。
ワクチン接種による副反応のリスクより、ロタウイルス感染による重症化を防ぐメリットのほうがずっと大きいために、予防接種が続けられているともいえます」

――ロタウイルスの予防接種を受けるときには、どんなことに気をつければいいのでしょう?

「万一、腸重積症が発症した場合でも、早く気付いて病院にかかれば大きな問題にならずにすみます。ロタウイルスのワクチンを接種したあとは、腸重積症が起こる可能性があることを念頭に置いて様子を見ることが必要です。
嘔吐(おうと)したり、すごくおなかを痛がる、しばらくしてから血便が出るなどの症状があったときは、急いで医療機関にかかりましょう。そして医師にいつロタウイルスワクチンを接種したかを伝えることが大切です」

生ワクチンを接種すると、その病気の症状がごく軽く出る場合がある

――そのほかに、知っておいたほうがいい副反応はありますか?

「生ワクチンは接種することで、その病気の症状がごく軽く出る場合があります。接種後、潜伏期間を経てから熱が出たり頭が痛くなるなどの症状が出ますが、自然に治りますし、後遺症が残ることはありません。自然感染でかかるよりはずっと軽い症状ですみ、免疫をつけることができます。
また、ごくまれに、ワクチンの成分に対してアレルギーがある人がショック状態になるなど、激しい副反応が起こるケースもあります。確率はごくごくわずかですが、念のため接種後30分は病院の待合室などで様子を見るようにしてください。
このように、副反応はないわけではありませんが、副反応よりも、ワクチンを接種しないでその病気にかかったときの危険性のほうがずっと大きいのです。その点をよく理解して、前向きに接種をしていただきたいです」

ステロイド剤使用中など、予防接種を受けられない場合もあることを知っておこう

――予防接種を受けてはいけない場合というのは、どういうときですか?

「免疫に異常があるかたは予防接種を受けられない場合があります。赤ちゃんに免疫の病気、とくに先天的な病気があるかどうかはわかりづらいですが、ご家族・ご親戚に先天性の免疫不全と言われた人がいるかどうかである程度判断できます。予防接種の問診票にも必ずその質問項目が入っているはずです。
ステロイド剤や抗がん剤も免疫を抑制する作用があるので、ステロイド療法、抗がん剤療法を受けている人は主治医と相談することが必要です」

――風邪など、急性の病気のときも接種はできないのですよね?

「熱が出ている場合はだめですが、せきや鼻水、下痢だけで、本人が元気で食欲も普通にあるなら接種しても問題ありません。
よく親御さんが“風邪をひいて鼻水が出ているから予防接種を見合わせます”と勝手に判断してしまうことがありますが、この程度ならほとんどの場合が接種可能です。とくに0歳、1歳はしょっちゅう風邪をひきますので、軽い鼻水やせきで接種を延期しているとどんどん遅れてしまいます。自己判断しないで、まずは受診して医師に相談してください」

副反応を怖がって予防接種をやめてしまうのは、副反応の何倍も恐ろしい感染症にかかる危険性を高めることになってしまいます。副反応が出たときに適切な対応ができるように、前もって情報を知っておくことが、上手に予防接種を受けるコツの一つでもあるようです。
次回は「自然感染で免疫をつけるのではダメなの?」をお届けします。お楽しみに。

(取材・文 かきの木のりみ)

監修/【小児科医】片岡正 先生

●記事の内容は掲載当時の情報で、現在と異なる場合があります。

※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。

初回公開日 2017/09/07

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