SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 先天性の難病で車いす移動が必須の2人の娘。外出時に感じた苦い思い出が今の活動の原点【体験談】

先天性の難病で車いす移動が必須の2人の娘。外出時に感じた苦い思い出が今の活動の原点【体験談】

更新

昌代さんたちが作った子ども用車いすマークは、明愛ちゃん・蒼依ちゃんの車いすにもつけてあります(写真は蒼依ちゃん)。

小林昌代さんの長女、明愛(めい)ちゃん(12歳)は「コルネリア・デランゲ症候群」、二女の蒼依(あおい)ちゃん(6歳)は、「18番部分トリソミー」という難病のため、2人とも移動には子ども用車いすを使っています。昌代さんは娘たちとのお出かけが楽しいものになるように、子ども用車いすマークを作り、広める活動を行っています。

全3回のインタビューの3回目は、明愛ちゃん、蒼依ちゃんとの生活や、昌代さんが行っている活動について聞きました。

▼<関連記事>第2回を読む

訪問看護ステーションの所長看護師さんに悩みを打ち明け、プレッシャーから解放された

大好きなお友だち(左)と蒼依ちゃん(右)。このお友だちのママは、昌代さんと一緒に活動しています。

2人の娘に難病がある昌代さんファミリー。看護師である昌代さんは、「自分がしっかりと2人のケアをしなきゃいけない」という思いが強く、追い詰められていた時期があったそうです。

「蒼依が2歳ごろ、朝から晩まで泣き続け、私はほとんど眠れない日が何日も続きました。心身ともに疲れ果て、何もかも嫌になってしまって。そんなとき、幼い子どもと親が無理心中した痛ましいニュースを見て、『明日はわが身だ』と感じました。

そんな私を救ってくれたのが、現在一緒に活動しているママ友たちと、蒼依を出産してから利用を始めた、訪問看護ステーションの所長である看護師さんでした。娘たちのケアだけではなく、私のことも気づかってくれ、私がぼそぼそと打ち明ける悩みを真剣に聞いてくれました。そのおかげで自分の弱さを受け入れ、「しっかりしなきゃ!」というプレッシャーと緊張感から、自分を解放することができたんです」(昌代さん)

昌代さんは、ほかにも多くの人に支えられていると、いつも感じているそうです。

「日々さまざまなケアが必要な娘2人を、私と夫だけで育てるのはとても無理。利用可能な福祉サービスや医療介入はすべてお願いしています。また、私の両親は同じ県内に住んでいるので、いつも協力してくれます。蒼依が入院したときに明愛を預かってくれたり、食事を作って持ってきてくれたり。
明愛と蒼依は、たくさんの人たちに見守られながら育っています。かかわってくれたたくさんの方々には、どれほど感謝してもたりません」(昌代さん)

障害者手帳を持っているのに、優先駐車場に止めようとすると「ダメ」と言われ

家族4人でお出かけしたときの写真。昌代さんは「障害があっても楽しくお出かけしたい」という思いで活動しています。

現在、明愛ちゃんと蒼依ちゃんは同じ病院で経過観察を行っています。

「医療的ケアが必要な蒼依のほうが受診頻度は高いですが、2人は同じ病院に通っています。病気が違うので主治医は別々です。最初は違う病院だったのですが、万一、2人が同時に入院することになったときのことを考え、蒼依も明愛の病院で診てもらうことにしました。

車いすの子ども2人と昌代さんの3人で出かけるのは無理なので、2人の受診日が重なるときは、夫の功さんが会社を休んで一緒に行きます。

「病院の駐車場が混んでいて車を止めるのに時間がかかるときなどは、私と娘2人が先に車を降り、病院玄関から診察室まで、私が2台の車いすを押して向かうこともあります。右手で明愛の車いす、左手で蒼依の車いすを押すっていう感じです。最近は2台押しがうまくなって、ヨロヨロせず2台同時にまっすぐ進めるようになりましたよ」(昌代さん)

昌代さんファミリーは、外出には基本的に車を使います。明愛ちゃんも蒼依ちゃんも障害者手帳を持っているので、障害者優先のスペースに止めますが、「そこは止めちゃだめだよ」と係の人に言われることがあったそうです。

「『娘たちは障害児なんです』と言葉で説明しても理解してもらえず、障害者手帳を見せてやっと駐車できた、ということが何度もありました。最終的にはわかってもらえますが、同じことが続くと、「ずるしているわけじゃないのに」と心が疲れます。
嫌な思いをしたくないし、無駄なもめごとも避けたいので、駐車場に入る前に障害者手帳を取り出し、握りしめながら駐車スペースを探すのが当たり前になっていました」(昌代さん)

夫婦それぞれが娘の車いすを押していると、さまざまな視線を感じることもあるそうです。

「何か言われたり、嫌な思いをしたりということはありませんが、見られているな~とは感じます。子どもが1人ずつ車いすに乗っていて、それを両親が並んで押している。私たちにとっては日常のことですが、通りすがりの人にしてみれば見慣れない光景でしょうし、しかも乗っている子どもが赤ちゃんではないから、余計に気になるんだろうなと思います」(昌代さん)

子どもと楽しくお出かけしたい。母たちのその思いで生まれた車いすマーク

岐阜の福祉機器展で子ども用車いすマークの販売と、スペシャルニーズ・サポーターマークの啓発活動を行いました。

昌代さんが参加している難病の子どもがいる親のサークルでも、車いすでのお出かけが話題になることがありました。

「公共交通機関の利用時にベビーカーをたたまなくていいというところが増えていますが、混んでいる時間や路線などによっては、たたんだ乗車になることもあるでしょう。
子ども用車いすはベビーカーに似ているため、私たちの仲間が公共交通機関を利用した際、たたむように言われたことがあったそうです。歩けないから車いすで移動しているのに・・・。

『子ども用車いすマークを作っちゃおうか』『お出かけのテンションが上がるような、かわいいマークがいいよね』。サークルのメンバー同士のそんなおしゃべりが、子ども用車いすマークを作るきかっけとなりました。私をはじめメンバーが望んでいたのは、子どもと楽しくお出かけしたい、ただそれだけなんです」(昌代さん)

マークのイラストを考えたのは、絵が得意な功さんです。

「夫が描いたイラストを、メンバーのお友だちでプロのイラスストレータの方が、とてもかわいいピクトグラムに整えてくれました。このマークには『お出かけが楽しくなりますように』という思いを込めています。車のフロントガラスに貼るタイプ(マグネット・吸盤)と、車いすに付けられるキーホルダータイプを作りました。

うちの車にもマークを貼っています。優先駐車場に止めるとき係の人がマークに気づいてくれ、すぐ誘導してもらえるようになりました。初めて何も説明なしに止められたときは、『理解してもらえたね!!』と、夫とともに大喜びしました」(昌代さん)

車いすマークをメルカリで販売したところ、予想外の反響がありました。

「『こんなかわいいマークを待っていました』『子どももお気に入りです』『お友だちからも好評です』など、ありがたい言葉をたくさんいただきました。今後は、minneのサイトのみで販売していく予定で、マルシェや福祉機器展などのイベントでも販売していきます」(昌代さん)

「助けてほしい」「助けたい」どちらの思いも伝わるマークを作りたい

「こんなふうに、スペシャルニーズマークを当事者の方につけていただきたいです」と昌代さん。

昌代さんたちはさらに、スペシャルニーズマークも制作しました。

「スペシャルニーズとは、何らかの事情を抱えていて支援が必要という意味。マークのイラストは、スペシャルニーズな子どもが『♡』を持って前に進んでいるイメージです。このイラストは、ドイツで現代アートの仕事している私の兄に描いてもらいました。

世の中にはいろいろな病気や障害があって、いろいろな事情を抱えながら生きている人がいることを知ってほしい。スペシャルニーズマークを付けている人は、あなたの配慮や支援が必要かもしれない。その人はだれかの支援がないと生きていけないかもしれない。でもそれは、健常者でも同じこと。みんな一緒だよ。そんな思いを伝えられたらと思っています」(昌代さん)

スペシャルニーズマークはまだイベント出展時のみの販売だそうです。

「今後どのように全国に広めていくか検討中です。将来的には、必要な方に無料配布できるしくみも作りたいんです。また、『何か必要なことがあればお手伝いしますよ』という、支援する側の意思を示すサポーターマークの制作も考えています。

日本人はとても優しいです。優しいからこそ、どう助けを求めたらいいのかわからない、助けたいけれどその気持ちをどう示せばいいのかわからない。そう感じている方がたくさんいると思うんです。私たちが作ったマークが、その橋渡しをできたらいいなと思っています」(昌代さん)

活動拠点を作るために、昌代さんたちのグループは、NPO法人の設立に取りかかっています。

「できるだけ早く法人化できるように関係各所に相談し、準備をしているところです。今、頑張ることが、娘たちが生きやすい未来につながると信じています。

でも、今の親子4人の時間も大切にしたいから、家族でのお出かけもたくさんしたいです。蒼依はまだディズニーランドに行ったことがないので、今年中に連れて行ってあげたいなと思っています」(昌代さん)

お話・写真提供/小林昌代さん 取材協力/コルネリア・デランゲ症候群患者家族会 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

「しっかりしなきゃ!」という思いが強すぎで、折れそうになったこともあるという昌代さん。支援してくれる人の手を借りて2人の娘の介護をこなしつつ、障害のある人がもっと生きやすくなる世の中を作るための活動も、本格的に始めました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

小林昌代さん(こばやしまさよ)

PROFILE
大学病院、企業診療所で看護師として勤務していたが、医療的ケアが必要な長女が保育園に入れず退職。その後も社会とのつながりを求めてパートタイムで勤務。医療的ケア児等コーディネーターの資格を取得。「HappinessforYou おでかけが楽しくなりますように♡」をコンセプトに、specialneedssupportで障害者の存在理解のための啓発活動を行い、非営利団体の設立も目指している。

小林さんたちのInstagram

コルネリア・デランゲ症候群患者家族会のHP

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。