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639gで生まれた長男はゆっくりと成長しながら6歳に。「拒食」を克服するために摂食外来に通う日々の先には・・・【超低出生体重児】

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年中で普通保育園に入園が決まった春の、虎太郎くんと悠さん。

静岡県でヨガインストラクターとして働く青島悠さん。夫と6歳の長男との3人家族です。長男の虎太郎くんは妊娠23週のときに体重639gで生まれた超低出生体重児でした。悠さんに、生後4~5カ月で初め虎太郎くんを抱っこしたころから現在までの成長について聞きました。全2回のインタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

一喜一憂しない、と心に刻んだNICUでの日々

生後7カ月でやっとNICUからGCUに移りました。

虎太郎くんは639gと小さく生まれたために、肺が未熟で慢性肺疾患の症状がありました。

「虎太郎は生まれてすぐに気管挿管をされて、ずっと人工呼吸器での管理が必要でした。だから毎日の面会では、保育器に手を入れて触れたり、手で体を包むようにしたりしていました。初めて私の腕の中に抱っこできたのは、生後4〜5カ月のころだったと思います。1週間、気管挿管している管をはずして自発呼吸を頑張ってみた時期があり、そのときに抱っこしたんです。胃管チューブなどがはずれないように、タオルを何重にも巻いたおくるみのような状態にして慎重に抱っこしました。

まだまだ軽いし小さいなと感じたけれど、生まれたときには薄くて真っ赤だった肌がだんだん赤ちゃんらしくなってきていて、少しずつの成長が本当にうれしかったです。でもほんの短い時間で呼吸が苦しくなってしまったので、すぐにまた気管挿管して呼吸器管理することになりました」(悠さん)

次に抱っこにチャレンジできたのは、生後6〜7カ月になったころでした。

「そのころには体重もずっしりと重くなってきて、普通に抱っこできるようになっていました。肌と肌で触れ合うカンガルーケアができたのもこのころです。虎太郎の成長にともなって、親子で触れ合える時間も少しずつ長くなっていきました」(悠さん)

体が未熟な状態で生まれ、数カ月間は状態がなかなか安定しなかった虎太郎くん。感染症にかかるなど、命の危機もありました。毎日面会に通い、虎太郎くんに付き添っていた悠さんも、虎太郎くんの少しの体調変化でメンタルが不安定になってしまうことがあったそうです。

「あるとき、看護師さんから『赤ちゃんの様子に一喜一憂しないことが大切』って言われて、その言葉が今も胸に残っています。小さく生まれた赤ちゃんは、少し安定したと思ったらまた厳しい状況になって、それを繰り返すことはいっぱいあるから、と。

NICUに入院中、何度も厳しい状況になる中で虎太郎を見守り続けることは、私にとってどこか闘いみたいな気持ちもあったんです。悲しみすぎてもいられないし、希望をもちすぎないように、とも思ったりして。もちろん、成長を喜んだり危機を悲しんだりしたとしても、その感情に心をもっていかれないようにしなくちゃいけないな、と思いながら日々を過ごしていました」(悠さん)

約1年の入院期間を経て、やっと退院できたわが子

実家のそばにある公園でつかまり立ち。外への興味もわいてきたころです。

虎太郎くんの入院期間は約1年に及びました。入院中にコロナ禍となりましたが、虎太郎くんが入院していたNICUでは毎日面会ができたそうです。

「近隣の病院では面会ができなくなっていたという話も聞きましたが、私たちの病院では虎太郎が2020年夏に退院するまで面会が許されていました。親子の触れ合いを大事にしていたんだと思います。

予定日より4カ月早く生まれた虎太郎でしたが、1歳を過ぎて退院するころには、体重は5000gほどにまで成長していました。ただ、呼吸はまだサポートが必要だったので、酸素ボンベ、酸素チューブと空気を送り込む機械、酸素飽和度を測る機械のセットと一緒に退院しました」(悠さん)

呼吸サポートの医療的ケアが必要だった虎太郎くんの育児のために、悠さんは自身の実家へ住まいを移します。

「退院する少し前に、病院側から『退院後は日中に虎太郎くんをケアする大人の手が2人必要』だと言われました。実は私が出産後にホルモンバランスを崩して、不眠になってしまったことがあったんです。先生たちはそんな私の状況をわかってくれていたんだと思います。夫は当時会社員で日中はいなかったので、もう1人の手として実母にお願いすることにしました。虎太郎がまだ入院中の生後8カ月のころ、私の実家に移りました。

虎太郎が入院中、私は、毎日6時間以上付き添っていましたし、夜までになることもあったので、母が食事を作ってくれたり、話し相手になってくれたことにとても救われました。入院している子どもの付き添いは、どうしても孤独を感じてしまうので・・・母の存在はありがたかったです」(悠さん)

発達はゆっくり。でも元気いっぱい!

3歳の虎太郎くん、家族で旅行へ! 知らない場所もへっちゃらに!

悠さんは虎太郎くんの退院後、毎月フォローアップ外来に通って経過を見ながら、虎太郎くんの様子を見て在宅酸素の呼吸サポートを少しずつはずす時間を増やすことにトライしました。

「1歳半を過ぎて、はいはいやつかまり立ちをするほどに成長してくると、自分でチューブを持って遊んでしまったら胃、酸素チューブが首に巻き付いてしまうこともあって危険を感じたことがありました。

主治医の先生に相談すると『お母さんの勘が大事です。トライアンドエラーで行きましょう』と言ってくださったので、苦しそうでないか様子を見ながら少しずつ酸素チューブをはずす時間を増やしていきました。
それで、虎太郎の動きが活発になってきた2歳前くらいのときに、在宅酸素を卒業することができました」(悠さん)

小さく生まれた虎太郎くんは通常よりも発達がゆっくりですが、少しずつ確実に成長しています。

「2歳からは療育園に通っていて、年中からは地域の保育園にも平行して通っています。療育園では月1回作業療法士の先生が来てくれて歩行のサポートをしてくれました。

保育園は、たくさんのお友だちと過ごして刺激を受けて、心も成長できるといいなという思いから通わせたんですが・・・虎太郎自身は集団生活は苦手みたいです。でも頑張って通っています。2026年4月からは小学生。小学校では支援級に入る予定です」(悠さん)

生まれてしばらくは肺が弱い状態だった虎太郎くんでしたが、今は風邪をひいても重症化せずにいられるほど、丈夫に育っています。

「退院するときには『肺が弱い子は風邪をひいたらまた入院になることが多い』と聞いて覚悟していたんですが、虎太郎はこれまで風邪をひくことはあっても、毎回すぐに治っていて、入院するまでにはならないで過ごせています。2歳過ぎたころに『この子、強いかもしれない』と思いました(笑)」(悠さん)

成長についての課題点は「拒食を患っていること」と悠さん。

「体の機能的には食べることに問題はないんですが、気管挿管が長かったせいか、口に食べものが入ることに“こわい”という気持ちが強いらしく、ごはんを食べられないんです。装着している経鼻経管チューブから栄養剤をとっている状況です。
なんとかごはんを食べてもらいたいから、専門の先生を探して摂食外来に通っています。そのほかにも、友人の紹介で出会った作業療法士の先生の療育にも通い始めました。虎太郎と一緒に遊びながら口の中に触れることに慣れさせてくれているおかげで、少しずつ口の中の過敏さがやわらいできているようです。

それに療育園でお友だちが頑張って食べている様子を見て、自分も食べてみよう、という気持ちになっているようです。少しずつ勇気を出して食べることに挑戦できるようになってきました」(悠さん)

息子の誕生をきっかけに人生も変化

虎太郎くん3歳。とことん自分たちらしく!が青島家のテーマです。

虎太郎くんが生まれて、悠さんと幸一さんの人生も大きく変わりました。

「私はアパレルメーカーに務めていて育休を取って虎太郎の育児をしていましたが、医療的ケアのある虎太郎の育児もあって、自分の好きだった仕事に戻ることは難しかったんです。そこで、20代のころからずっとヨガを続けていた経験をいかし、自宅でヨガ教室をひらき、インストラクターとして働くことにしました。

ちょうど、虎太郎が2歳くらいのときに建てた新居に広い空間があったんです。というのも、この先歩けないかもしれないことを見越してバリアフリーの家を建てていたからです。家を建てる土地も緑の多い里山を選びました」(悠さん)

会社員として忙しく働いていた幸一さんも、新居で暮らし始めて2年ほど経ったころに退社し、農業を始めました。

「もともとは会社員をしながら市民農園を借りて野菜を育てていたんですけど、家の敷地内で畑をすることが夢だったらしいんです。新居に引っ越してきてしばらく経ったある日突然『会社を辞めてきた。野菜をやる!』って。今は信念を持って野菜作りをしていて、とても楽しそうです。

虎太郎はまだ口から食べられない状態ですが、いつか食べられるようになったときには、夫が大事に育てた野菜を食べさせたい、夫婦でその思いを大切にしています」(悠さん)

前より人生を楽しめているのは、息子の誕生があったから

虎太郎くん5歳のときの七五三。幸一さんの友人に撮ってもらった1枚。

悠さんは小さく生まれた赤ちゃんの家族のためのリトルベビーサークル「ポコアポコ」に参加しています。

「この地域で新生児集中治療室(NICU)のある病院の掲示板にサークルの案内が貼ってあるので、NICUに入院している子の家族はみんな知っていると思います。『小さく生まれた子を育てるお母さんたちは、どんな気持ちをもっているんだろう』と知りたくて入会しました。

サークルでは、小さく生まれた赤ちゃんの成長をサポートする情報が網羅されていて、子育ての悩みに対してどこを頼れば解決できそうか、すぐにキャッチできてとても安心しました」(悠さん)

悠さんは小さく生まれた赤ちゃんだけでなく、難病をもつ子の家族も集まれる「インクルーシブ子育てサロン てとて」を立ち上げました。

「あるとき難病をもって生まれた子のお母さんが居場所がなくて悩んでいると聞いたんです。だれでも入れるインクルーシブな場所で、安心して話や情報交換をしたいと思いました」(悠さん)

虎太郎くんの子育てをしてきたからこそ気づいたことがたくさんある、と悠さんは言います。

「私も仕事を変えざるを得ませんでしたが、いつしか以前より断然人生を楽しんでいる自分に気づきました。この生活ができるのも息子の誕生があったからだなと思うと、胸がいっぱいになります。

わが子が小さく生まれて成長に不安があったときには、暗い気持ちになってしまっていましたが、必ずその子なりの成長を遂げていくもの。ほかの子と比べずにわが子の成長を見守り続けていくことが大事だと感じています」(悠さん)

お話・写真提供/青島悠さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

頑張って成長してきた虎太郎くんと、わが子の成長する力を信じて見守る悠さん夫妻。命の危機を乗り越えながら、より一層深まった親子の絆を感じました。ポコアポコでは2025年11月6日~11月19日まで静岡県庁別館21階富士展望ロビーにて写真の展示を行っています。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

てとて/インクルーシブ子育てサロンのHP

ポコアポコ 静岡のInstagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年11月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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