「絶対大丈夫。どうにかなるっちゃ」自閉スペクトラム症の娘と歩む母、蓬郷由希絵。23万人に支持される理由と絶望から得た経験とは?
インスタグラムで約23.3万人以上(2025年12月現在)に支持される人気インスタグラマー・蓬郷由希絵さん。重度知的障害と自閉スペクトラム症のある二女ゆいなさんとの日々を、苦しかった過去も含めてリアルに発信し続けています。明るさとユーモアに満ちた投稿の裏にある思いとは?
全2回のインタビューの後編です。
これまでの経験を発信したくてインスタグラムを開設
――蓬郷さんが運営するインスタグラムは、現在、フォロワー数が約23.3万人とたくさんの人から支持されています。インスタグラムを始めようと思ったきっかけを教えてください。
蓬郷さん(以下敬称略) 二女・ゆいなは重度知的障害と自閉スペクトラム症があります。これまで、子育てに手いっぱいで毎日バタバタしていました。ゆいなも成長し、中学校の支援学級に進学することに。自分の身のまわりのこともできるようになりました。
生活に少し余裕が出てきた、ゆいなが小学校5年生のころ、これまでの子育てで経験したことなどを発信してみたいと思って。
ちょうどそのころ、長女・ここながインスタグラムのライブ配信をしていたんです。これだったら私もできそう!と考えたのが最初のきっかけです。
インスタグラムでは、これまでの経験をすべて伝えています。ゆいなが自閉スペクトラム症と診断されて、目の前がまっくらになった日のことも、ゆいなと一緒にこの世を去ろうと思い詰めたときのこともです。
――なぜ、苦しかった思い出も伝えているのでしょうか?
蓬郷 前向きなことだけを伝えても、今、子育てでつらい思いをしている人には届かないと思うんです。もしかしたら、明るい言葉は、かえって追いつめてしまうかもしれません。
まわりから見ると、今の私はとても楽しそうに見えると思います。でも、いろんな経験をしてきました。「もうダメかもしれない」と心が折れそうになったことも何度もあります。
それでも、子どもたちと向き合い続けた結果、家族と楽しい毎日を送っています。「何もできない」と思っていたゆいなは、きちんとおしゃべりするし、身のまわりのこともできるようになりました。
もし今、希望が見えないとしても「絶対になんとかなる」と伝えたいです。
こうした言葉を聞きたかったのは、絶望にうちひしがれていたころの私自身。苦しかったときの自分が、だれかに言ってほしかった言葉を発信しています。
フェイスペイントも仮装も、家族にとっては当たり前
――支えになるメッセージを伝えてくれる一方で、インスタグラムで披露されているユニークなフェイスペイントや仮装も楽しいです。
蓬郷 フェイスペイントも仮装も、わが家では日常茶飯事です。うちの家族は、イベントが大好き。インスタグラムを始める前から、ハロウィンなどは全力で楽しんでいます。家族全員で衣装を合わせて仮装することもありました。
ここなが中学生のときは、仮装したまま塾のお迎えに行ったこともあります。家族全員、私のフェイスペイントや仮装には慣れっこです。
――フォロワーからはどんな反応がありますか?
蓬郷 いい意味で「こんなにふざけててもいいんですね」と言われることがあります。
障害がある子どもがいるママは、「きちんとしていなくてはいけない、いつもしっかりしていなくては」という思いこみのある人も少なくないようです。私が全力で楽しむ姿を見て、元気になってくれていると思うと、とてもうれしいです。
講演会はスタート時から大爆笑
――蓬郷さんは現在、全国あちこちで講演をしています。そのときに、こうした仮装姿で登場することもあるとか…。お客さんからはどんな反応がありますか?
蓬郷 私がステージに出た瞬間、大爆笑。「待っていたよー!」と声をかけられることもあります。仮装を楽しみにしてくれている方も多いようです。
――たくさんの人たちから支持されているのはなぜだと思いますか?
蓬郷 先ほどもお伝えしたとおり、前向きなことだけでなく、リアルな困りごとやつらかったことも発信しているからかな?と思います。
そして、家族の存在も大きいです。わが家は夫も長女のここなも、ゆいなも私も皆、個性が強く、キャラクターが立っているんです。
フォロワーさんそれぞれの立場に近い人がうちの家族にいて、応援してくれているのでは?と考えています。
――インスタグラムでは、家族の仲がいい様子が伝わります。夫さんとはどのように協力し合っていますか?
蓬郷 夫とはなんでも話し合っています。私がゆいなとけんかをしているときも「ゆいなはこんなことを言いたいんじゃない?」と間に入ってくれることも。夫は、私が相談しやすい雰囲気をつくってくれているのかもしれません。「今日はどんなことがあった?」など、さりげなく聞いてくれます。
とはいえ、今でこそゆいなのことを理解している夫ですが、最初のころは私からすると楽観的すぎて・・・。かなりのんびりと構えていました。こんなに大変なのに、なんでわかってくれないの・・・、と思ったこともあります。
一緒に療育に行ったり、外出したりするようになって、夫もゆいなの状況を理解していったようです。
きょうだい児である長女への思いと、姉妹の関係
――障害児のきょうだいがいる子どもを「きょうだい児」と呼ぶことがあります。蓬郷さんは、ゆいなちゃんの3歳年上の姉・ここなちゃんとはどのように接してきましたか?
蓬郷 これまでどんなにゆいなに手がかかっても、ここなにも愛情をかけ、一緒に過ごす時間を大事にしてきたつもりです。ゆいなが保育園に行っている間、私とここなの2人きりでスイーツを食べに行くこともよくありました。
でもどう考えても、ここなにかける時間はたりていなかったと思います。現在ここなは高校2年生です。最近まで私と手をつないで寝ていたし、今でもぎゅっと抱きついてくることがあります。
これまでここなは、もっと私に手を差し出してほしかったんだと思います。今になって、当時の寂しかった思いを満たそうとしているような気がします。
――ここなちゃんは、ゆいなちゃんのお姉さんとしてどんな存在ですか?
蓬郷 ゆいなのことが大好きなお姉ちゃんです。小さいときから人よりも時間がかかるゆいなを、ずっとじっと待っていてくれる子でした。外出した際、ゆいながかんしゃくを起こすこともあったんです。ここなに「先に行ってて」と言っても、じっと待っていてくれました。
ただ、最近のゆいなは思春期を迎え、難しいお年ごろになってしまいました。ここなへの思いをこじらせて、そっけない態度をとっています。なぜそうなってしまったのか、理由はゆいな自身もわからないと思うのですが・・・。それでもここなは「まったくー、ゆいなはどうしちゃったんだろうね」と、見守ってくれています。
ゆいなのことを背負わなくていい。母が願う姉の未来
――もうすぐここなちゃんは自立する年齢を迎えます。どんな進路を歩んでほしいですか?
蓬郷 自分のやりたいことを見つけてほしいです。「将来ゆいなのお世話をしなくては」などと考えなくていいよ、と伝えています。
とはいえ、ゆいなと一緒に過ごしてきた時間は、ここなに大きな影響があったようです。先日、高校で職場体験のようなことがあり、ここなは養護学校の実習を選びました。すると、障害のある子たちとのかかわりがとても上手だったようです。子どもたちには慕われ、先生たちにもとても驚かれたとのことでした。
その話を聞いたとき、私はうれしくてボロボロと涙がこぼれてしまいました。
ここなも「教育学部に行って、支援学校の先生になるのもいいな」と言っていました。
でも、まだ高校2年生。これからもっとやりたいことが見つかるかもしれません。好きな道を歩み、充実した人生を送ってほしいと願っています。
お話・写真提供/蓬郷由希絵さん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部
苦しかった過去も、ゆいなさん、ここなさんの成長も、そして仮装して笑い合う日々も、すべてを発信している蓬郷さん。それらは「だれかの力になれば」という願いから生まれています。その思いからつむがれる言葉は、多くの人の心に希望の光をともしているに違いません。
蓬郷由希絵さん(とまごうゆきえ)
PROFILE
インスタグラマー。1984年生まれ。岡山県津山市在住。知的障害と自閉スペクトラム症がある女の子の母。長女・ここな、二女・ゆいな、釣り大好き夫の4人家族。インスタグラムで家族の日常や子育てのリアルを、ユーモアを交えて発信。多くの共感を呼び、全国から講演会のオファーが絶えない。2025年9月に初めての著書『どうにかなるっちゃ 知的障がいのある自閉症児ゆいなの母の記録』を出版。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年12月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
『どうにかなるっちゃ 知的障がいのある自閉症児ゆいなの母の記録』
全国から講演会オファーが殺到、メディア出演でも話題。知的障害と自閉スペクトラム症があるゆいなちゃんの母、蓬郷(とまごう)由希絵さんの初エッセイ。キャラも濃いけど、愛はもっと濃い。子育てで心折れそうになっているすべての親・家族に、「大丈夫だよ。」と伝える希望の書。蓬郷由希絵著/1760円(KADOKAWA)


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