70歳差の親友!? 1歳児のお散歩感動物語!~園で子どもは何してる?Vol.2~
Eテレの「すくすく子育て」でもおなじみ、玉川大学教育学部教授の大豆生田(おおまめうだ)先生と、園生活のリアルに迫る連載。今回のテーマは「園で育まれる人間関係」。福井県の人気園、めぐみこども園のドキュメンテーション(写真付きの保育記録)を通して、1歳児クラスの活動をご紹介します。
ライター田中(以下、田中):連載第2回目です! 前回は 今どきの保育園が取り入れている「ドキュメンテーション(写真付きの保育記録)」 について大豆生田先生に教えていただきました。
ドキュメンテーションが保護者へ連絡帳として送られてきたり、お迎えに行ったときに園に貼られていたりして、子どもたちの様子だけでなく、どんなことに興味・関心を持っているかがよくわかりました。
大豆生田先生(以下、豆先生):今ドキュメンテーションを活用して、子どもの育ちを丁寧に見る保育園が、増えています。今回からは実際の園の事例を見ていきましょう。
園のお散歩で、大きなカブを作るおじいちゃんと出会う
田中:写真は福井県のめぐみこども園のドキュメンテーションです。保護者からとても人気のある園だそうですね。
豆先生:そうなんです。めぐみこども園のドキュメンテーションを見ると、人気のある理由がわかると思います。先日、公開保育で見せてもらった、1歳児クラスのドキュメンテーションなんですが、子どもたちが、お散歩で出会った地域のおじいちゃんと仲よくなっていくお話が、とても印象的に記録されています。
田中:お散歩って、保育園の定番の活動ですよね。保護者としてはしっかり体を動かしてほしいからありがたい!と思っています。田畑に行ってみるのも、地方ではよくあることのようにみえますが。
豆先生:そうですね。お散歩や農業体験などしている園は多くあります。めぐみこども園のすごいところは、保育者が子どもたちが、大きなカブの絵本が大好きなことを、わかっていて、畑に行き、そこにいらしたおじいちゃん・おばあちゃんに「見せてもらえますか?」とお願いしているところです。
保育者が、子どもの興味・関心を日ごろからよく見て、発展させるようなかかわり方をしているところが、プロだなと思います。
田中:なるほど。子どもたちのことをよく観察されているのですね
豆先生:さらに、おもしろいのは別の日に、子どもたちのリクエストでまた畑に行き、通うようになっていくところなんです。畑に行くのが一度のイベントではなく、続いていくことなんです。
子どもがおじいちゃんを大好きになったワケ
田中:このドキュメンテーションでは、子どもたちがおじいちゃんに会いたくて畑に通っていることがわかりますね。おじいちゃんも子どもたちを待っていてくれるようになったそうです。
豆先生: おじいちゃんと子どもたち、 双方に恵みのある関係性ができているのが素晴らしいと思います。保育者は、おじいちゃんと子どもたちの間に立って、言葉を補ったり、一緒に驚いたり、小さな子どもたちが、見知らぬ大人と関係性をつくっていくという、成長を助けています。
田中:先生のかかわり方がすごい。いただいたカブのにおいや感触を楽しんだり、子どもたち自身で調理したり、とても楽しそうです。できあがったものを、おじいちゃんに届けて喜ばれるエピソードもありました。家では、ここまでのことはできないなと思いました。
豆先生: 子どもの世界は連続しているんです。
子どもたちにとっては、絵本で知っている大きなカブが畑にあることを知る⇒おじいちゃんが目の前で、力強くカブを抜くのを見る⇒おじいちゃんが抜いてくれた特別なカブを調理して食べてみる⇒おじいちゃんにお礼をしに行く⇒おじいちゃんのうれしそうな姿を見る、というたくさんの出来事が、物語になって刻まれていっています。
作ってくれるおじいちゃんへの愛着や尊敬が育まれ、食べ物に対して自然と興味や関心も広がっていると思います。
田中:先生のサポートで、お散歩がいろんなことに発展して、ますますおもしろいものになっていっていますね。おじいちゃんのことも好きになっていく様子も伝わります。なんて豊かな経験をさせてもらっているんだろうと思います。
豆先生:めぐみこども園では、ドキュメンテーションを見返して、子どものわくわくする気持ちがどこにあるか、保育者同士でよく話しています。次はこうしようと計画して活動しているので、このおじいちゃんとのエピソードもたくさんある。保護者にも共有しているので、共通の話題になり、わくわくを広げることにつながっています。
田中:確かに、保護者もこれを見て、子どもに「畑に行ってみよう」とか、「家でもカブ食べてみる?」とか話ができそうです。
豆先生:子どもにとっての遊びのなかの学びを、大人たちがサポートして広げていけますよね。
1歳児が地域でお気に入りの場所を見つけることの大切さ
田中: 最初は緊張していた子も、何度も会ううちにおじいちゃんに駆け寄るようになり、年度末には「ありがとう」とお手紙を渡して、名残惜しそうに抱っこをせがんでいて感動的です。
豆先生: 子どもにとって、地域に自分の気に入った場所がある、仲よしの人がいるということは、「安心感」や「信頼」を育む上でとても大切なことと思います。
乳幼児期は、これからの長い人生において人格の基盤を築く重要な時期。この時期に、遊びや経験を通して様々なことに挑戦することが大切ですが、それを裏でしっかりと支えてくれるのが「アタッチメント(愛着)」といわれているものです。
つまり、不安なときに身近な大人が寄り添うことや、安心感をもたらす経験を繰り返すことで、「自分には何かあっても頼れる大人がいる」と信じられるようになる。そんな経験が、子どもの育ちには欠かせません。
今回のめぐみこども園のお散歩の事例は、まさにそれを示しています。子どもたちにとって初めて出会う畑のおじいちゃんは、最初は未知の存在だったはずです。でも、そこに「自分を守ってくれる」と安心できる園の先生たちが一緒にいるからこそ、おじいちゃんとカブを抜くといった新しいことにも一歩踏み出すことができたわけですね。
田中: なるほど、先生という「安心の基地」があり、交流を重ねるうちに、おじいちゃんのことも「安心できる大好きな存在」だと、自ら枠を広げていったんですね。このような温かい人間関係の土台をつくってくれる保育園の先生方は、本当に素敵だなと感じます。
豆先生: 保育者は、子どもが家族以外の大人ともこうして深い信頼関係を築き、「外の世界には自分を温かく迎えてくれる人がたくさんいるんだ」と実感することを、とても大切な育ちとして捉えていると思います。
田中:今どきは、保育園の新設を喜ばない地域もあるなかで、こういう交流があると、お互いのことを知れて、地域の雰囲気も変わっていくのではないかと思いました。子どもが、住んでいる地域を、好きになる体験をしながら成長していくこと、親としても心がけたい視点だなと思います。
豆先生:そうですね。保育園には地域との連携も役割としてあるんです。子ども同士だけでなく、地域の人とつながって人間関係を育む場所でもあるので、保護者も輪の中に入って園をサポートしていただけたらうれしいですね 。
取材・文/田中あすか、たまひよONLINE編集部
●記事の内容は2026年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。
<次回のテーマ>
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保育ドキュメンテーションとは?
写真と文章で綴られた「園生活の記録」です。単なる「今日の報告」ではなく、わが子が何に心を動かし、どう成長しようとしているのかを、保育者の専門的なまなざしを通して共有するツールです。これを見ることで、保護者も「うちの子、園でこんな表情をしていたんだ」と、わが子の新しい一面を発見するきっかけになります。
<取材先> めぐみこども園(福井県)
「子ども主体の保育」を掲げ、子どもたちの「やりたい」を形にする保育を実践。サークルタイムでの対話を大切にし、その日の活動をドキュメンテーションにして保育者同士で共有。アプリを通じて保護者にも配信し、ICT活用でも注目を集める。公開保育や研修を積極的に実施し、遠方からの参加者も多い。


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