救急医療のプロに聞く「子どもの救急~事故予防と急な病気の対処法」
東京・世田谷区にある国立成育医療研究センターでは、子どもの救急について広く知ってもらおうと、毎年9月9日にイベントを行っています。日ごろは高度な小児医療を提供、最先端の研究をしている施設。どんなイベントなのか、取材してきました!
事故を未然に防ぐプロダクトがずらり「キッズデザイン賞」
国立成育医療研究センターの小児救急センターでは、年間3万人あまりの子どもたちを24時間365日受け入れています。重症・軽傷問わず、急な病気やけがで運ばれてくる子どもたちと日夜向き合う看護師さんたちが中心となり、このイベントを盛り上げています。
まず、1Fの「豆の木広場」に入って、真っ先に目に飛び込んだのは、「キッズデザイン賞」(主催/NPOキッズデザイン協議会)を受賞したプロダクトの展示。赤ちゃんに安全で、事故が起こらないよう工夫がされているプロダクトの数々…。メーカーさんの心意気に胸打たれました! 物の選び方ひとつで赤ちゃんの事故を防げるなんて…。買い物をするときはしっかり安全性もチェックしたいですね。キッズデザイン賞を受賞したプロダクトで気になったものを紹介します!
キャップを誤飲しても窒息しない水性マーカー
フレーベル館「キンダーマーカーたふっこ」(3才~)。キャップの外側に凹凸がついているので、落としたときに転がることを防げます。また、通気孔がついているので、万が一赤ちゃんが誤飲しても窒息を防げます。
中身がこぼれず、やけどの心配がないカップ
逆さにしても中身がこぼれず、ふたをしたまま飲むことができるティーレックス「ライトカップ」。これから寒くなり、大人は熱い飲み物を飲む機会が増えます。このカップを使えば“ひっくり返して子どもが大やけど”という事態が防げます。さらに暗くなると自動で点灯するLEDライトつき。夜中の授乳の際に、ママがベッドサイドで温かい飲み物を飲むのにも便利ですね。
いざというときあごひもが外れる帽子
子どもにとって帽子や衣服など首まわりについているひもは、何かに引っかかったときに窒息につながる恐れがあります。このビーディージェム「POKEPOKE HAT」は、力が加わったときにあごひもが外れる仕様に。おしゃれと安全性を両立しているところが◎。
いざというときに知っておきたい!赤ちゃん心肺蘇生法
救急診療科の医師・福政先生、東京消防庁の救急隊員のみなさんが講師となって教えてくれる「子どもの心肺蘇生法講習会」に参加しました!赤ちゃんを持つママ、保育園にお勤めの先生など、さまざまな方たちが参加していました。
「赤ちゃんがおふろでおぼれた!」「うつぶせ寝になっていて意識がない!」というとき、適切に対応できる自信をつけるためにも、心肺蘇生法を知っておくのは大切なこと。講習会に参加した10カ月の赤ちゃんのママは「いざというときに役に立ちそう」「もしものときに自分の子にはできそう」と、心肺蘇生法を学んだことで心構えがしっかりできたよう。それでは、0~1才の心肺蘇生法の手順を紹介します!
①足の裏を刺激して意識を確認
赤ちゃんの意識を確認します。大人の場合は名前を呼びかけますが、赤ちゃんの場合は足の裏をたたいて刺激。反応がない場合は、すぐに119番。外出先でまわりに人がいる場合は、AEDの用意をお願いします。その際、「そこの赤いワンピースの女性、AEDをお願いします」など、具体的に指示します。
②胸骨圧迫を30回
意識がないときは、胸の真ん中(乳首の間)より少し下あたりを、大人の指2本で押します。そのとき、体の厚みに対して1/3程度のところまで指が沈むようプッシュ。片手は頭に添えると赤ちゃんの体が安定します。プッシュする速さは「Choo Choo TRAIN」の音楽のリズムで。
③人工呼吸で2回息を吹き込みます
赤ちゃんの額に手を置き、もう片方の手はあごを上げます。赤ちゃんの口と鼻がすっぽり入るよう口で覆い、胸が軽く上がるくらいの量の息を吹き込みます。息は「フッ」「フッ」と短めに2回吹き込みます。赤ちゃんが泣き出すか、救急隊と交代するまで「胸骨圧迫→人工呼吸」を繰り返します。
赤ちゃんが誤飲してもあわてない!“異物の吐かせ方”
1Fの「豆の木広場」に戻り、赤ちゃんの異物の吐かせ方をレクチャーしてくれるブースを発見。赤ちゃんは何でも口に入れてしまうので、いくらママ・パパが気をつけていても「つい、うっかり」なんてことが起こる可能性も。直径39mm以下のものは子どもの口に入ってしまうので、身のまわりのものの管理に気をつけたいものです。それでは、異物の吐かせ方を紹介します!
あお向けにして胸部を圧迫
異物を飲み込んだときは、まずは赤ちゃんの後頭部を片手で支えながら、あお向けの体勢にします。心肺蘇生法の胸骨圧迫と同じ要領で、指2本で胸の真ん中(乳首の間)より少し下を5回プッシュ。
うつぶせにして背部をたたきます
今度はあごを片手で支えながら、うつぶせにして自分の太ももにのせます。もう片方の手のひらで、赤ちゃんの肩甲骨の間を5回たたきます。胸部の圧迫と背部の叩打を交互に行い、異物がとれたら病院へ。意識がなくなったらすぐに119番して心肺蘇生法を行います。
イベントではほかにも、幼児の視野を体験できるコーナーや、室内での事故を予防できるグッズの紹介、災害のときの対処法、自転車の事故の映像、溺水の危険、調剤体験コーナーなどがあり、子どもの救急について幅広い知識が身につきました。
こういう内容はお勉強チックになりがちですが、クイズ形式になっていたり、体験型になっていたり、スタンプラリーでおみやげがもらえたりと、大人も子どもも楽しめる工夫がいっぱい。楽しみながら学ぶことができました。
「まさか自分の身には起こらない」と思っている事故やけが、病気――。対処法を知っているのといないのとではまったく違うので、こういった機会にぜひ知識を身につけておきたいですね。(取材・文/ひよこクラブ編集部)
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。