男子中学生が自動ブレーキ付きベビーカーを作って特許を取得!
駅のホームには雨水をはけるために、わずかに傾斜がついているのをご存知ですか? 歩行者にはあまり気になりませんが、ベビーカーはブレーキをかけていないと自然に動いてしまい、ホームからの転落事故が起こることもあります。
それを防ぐためのブレーキ装置を作り、特許まで取ってしまった男子中学生がいます。どんな少年がどのように発明したのか、ご本人に会ってきました!
ハンドルから手を離すと自動で3秒後にブレーキ
![](https://st.benesse.ne.jp/online/images/strollerPatent1_c1.jpg)
特許を取ったのは、愛知県在住の中学3年生・太田匠郎くん(14歳)が作った「ママも安心、自動ブレーキ付きベビーカー」という作品。ベビーカー事故の防止に役立ち、親たちが安心して使えるというのが理由です。この作品は今春の第74回全日本学生児童発明くふう展で、第2位となる内閣総理大臣賞も受賞しました。
「賞を取るとテレビに出るって知らなくて、僕が出るの?ってビックリしました。でも大きな賞が取れてうれしいです!」と話す匠郎くんは、はにかんだ笑顔が初々しい、まだあどけなさが残る少年でした。
――まず、特許を取った自動ブレーキ付きベビーカーについて教えてください。自動ブレーキとはどういうものですか?
「ベビーカーのハンドルから手を離して3秒たつと、自動的にブレーキが掛かるというものです。ハンドルを握るとブレーキのロックが外れて、またベビーカーが動かせるようになります。
ベビーカーにもともと付いているブレーキは、ペダルを足で踏んで下げると、車輪がそのペダルに引っかかって止まる形です。これが自動でできたら便利で安全なんじゃないかなって思ったんです。
ハンドル部分にセンサーパッドを付け、背もたれ部分に基板と電池、後輪にブレーキ装置をつけ、それらを配線で接続しました。ハンドルを握るとセンサーパッドが反応して電流が流れ、ブレーキのロックが外れる仕組みです。
今は手を離してから3秒後にブレーキが掛かるようにセットしてありますが、1秒でも5秒でも何秒でも変えることができます」。
作品に使ったのは自分が乗っていたベビーカー
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――なぜベビーカーのブレーキを作ろうと思ったんですか?
「小学5年生から刈谷少年少女発明クラブに入っているんですが、その先生から〝ブレーキを掛けていなかったベビーカーが、駅のホームから転落するケースがある〟と聞いたんです。ちょうど学校に提出する夏休みの工作のテーマを探しているときで、これだったら工作で解決できるんじゃないかなと、考えたのがきっかけです。
両親に相談したら、本物のベビーカーに取り付けてテストしながら作った方がいいだろうと、僕が小さいころに乗っていたベビーカーを納戸から出してくれました」。
――難しそうな仕組みですが、いちばん苦心したのは?
「もともと付いているブレーキのパネル部分に金具を引っ掛けてあり、センサーが働くとその金具が動いてタイヤを止める仕組みなんですが、金具とパネルの調整が難しかったです。
うまくパネルに引っかかるように金具を反らせてあるんですが、反りが甘いと抜けちゃうし、きついとうまく入らなくて。何度も曲げ直したり、作り直しました。
提出締切り直前に、部品がショートして壊れちゃったことも。お父さんが急いで部品を買ってきてくれて間に合わせることができたんですが、その時は焦りました」。
中1のときの体験から特許を強く意識するように
![](https://st.benesse.ne.jp/online/images/strollerPatent1_c3.jpg)
――全日本学生児童発明くふう展の第2位である内閣総理大臣賞も受賞しましたね。これについてはいかがですか?
「ベビーカーの自動ブレーキは中2の夏休みの工作ですが、その前の小6と中1の工作でも賞をいただいたんです。たまたま連続してもらえたので、中2はもっと上の賞を取りたいと狙って作りました。でも、まさか内閣総理大臣賞が取れるなんて(笑)! うれしいのと同時に、そこまでいったかとびっくりしました。
東京の科学技術館で行われた表彰式では、席の目の前に常陸宮殿下と妃殿下がいてすごく緊張しました。どこ見てもすごいおじさんがいっぱい(笑)。大きな賞を取るとこういう経験もするんだなって、驚くことばかりでした」。
――では特許も最初から狙っていたの?
「中1のときの作品は自信作だったですが、全国展まで行ったものの結果は入選でした。理由は“すでに特許申請してあるアイデアとよく似ているから” 。うれしさと悔しさが半分半分でした。特許まで関わってくることにびっくりし、全国展の難しさを痛感しました。
そこで中2では全国展の上位入賞を目標にしたんです。特許が取れるぐらいのアイデアでないと上位入選できません。だから必然的に特許も狙うことになりました。
僕が新しいアイデアを考え始め、お父さんが特許の勉強を始めました。ベビーカーのアイデアが浮かんだとき、お父さんが特許の調査をしてくれて、“このアイデアいけるかもしれない”と言ってくれたんです。僕はアイデアをさらに練り、お父さんは特許申請書を作り始めました。そのときは〝取れたらおもしろいね〟ぐらいの気持ちだったんですが、本当に特許が取れて、家族みんなで喜びました。
テレビやネットにもたくさん載って、学校でいろいろな人から〝テレビに出ていたね〟って声をかけられました。見てくれたんだって思うとうれしかったです」。
物を作ることが大好きと語る匠郎くん。賞や特許は目的ではなく、作った結果に得た大きなご褒美だったようです。
「今夏は車いすの事故防止に関するものを作る予定。もうプランも考えてありますが、詳しいことは秘密です(笑)」とのこと。どんな作品ができ上がるのか楽しみです。
取材・文 かきの木のりみ
育児雑誌の副編集長などを担当後、独立してフリーランスに。同時にWeb制作についても勉強し、現在はWebと紙両方の編集・ライターとして、女性もの、育児ものを中心に活動中。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。