【専門家監修】「ブラック保育園のリアル」著者にきく!子どもを守るために知っておきたいこと(前編)
待機児童問題を筆頭に、相次ぐ保育園での死亡事故、保育士の離職、不透明な運営実態...。今年に入ってから保育関係の暗いニュースが目に付き、2人の子どもを預ける母親として「大丈夫なの...?」と不安になった筆者。そこで、「事故と事件が多発する ブラック保育園のリアル」(幻冬舎)の著者であり、保育施設に特化した危機管理コンサルタントの脇 貴志さんにお話を伺いました。前編は、保育園をめぐる現状についての解説です。
すべての保育園は、例外なく「リスクの高い場所」と認識せよ
――脇さんの著書の中で特に印象的だったのが、「保育園は閉じられたブラックボックス。中で何が起きているか、外からほとんど様子を伺うことができない」という言葉です。
脇 はい。保護者の皆さんは、日中子どもがどう過ごしているか、保育士経由でしか知ることができません。保育園には保育事故や虐待など、見えざるリスクが実はたくさんあります。今は「保育園に入れて一件落着」となりがちですが、実はその先こそが大切です。
保育士による虐待やネグレクトは論外ですが、ただでさえ乳幼児期は不慮の事故に遭う確率が高く、最も注意を払うべき時期。しかし保育士資格取得には安全に関する教育がほとんどないのが現状です。その危機管理意識の甘さが、国が公表しているだけでも年間十数件の死亡事故につながっているのです。
――今年だけでも、保育園での死亡事故のニュースが立ち続けに報道されていますね。
脇 著書にも書きましたが、私は多くの死亡事故に立ち合う中で、当事者である保育士や保護者から「まさかうちの園が…」「まさか自分の子が…」という声を何度も聞きました。どんなに保育に関する意識の高い園でも、先生の指導がすばらしくても、こと安全という面でそもそも注意を払うべきポイントをわかっていなければ、死亡事故に遭遇する可能性は大いにあるんです。すべての保育園が例外なくリスクの高い場所であることが、まずは広く認識されるべきだと思います。
保育士が続々退職、1億円以上の不正…見過ごされる園の大問題
――子どもに直接被害が及ばなくても、園に問題があるケースもあります。例えば先日福岡の認可保育園で、園長のパワハラなどで年間30人もの保育士が相次いで辞めたという報道を見て驚きました。こういう保育園は、悪評が広まって閉園したりしないのでしょうか?
脇 まだまだ保育園の需要が供給を上回っているので、問題のある保育園でも運営を続けられるのが現状です。サラリーマンが多い街の定食屋さんが多少マズくても潰れないのと同じで、利用者が「ここでもいいか…」などと妥協してしまう。しかも、定食屋なら「この店はマズい!」とすぐ分かりますが、先ほども述べたように保育園は中身の見えづらいブラックボックスなので、園長や保育士に問題があっても表面化しにくい。ここに問題の根深さがあります。
――外部のチェック機能は働いていないのですか?
脇 もちろん認可・認可外保育園ともに行政監査はありますが、それを行う自治体の担当者は、保育現場の安全対策のプロではありません。配置基準や帳簿など、数値の面でしかチェックできず、ソフト面まではなかなかチェックできないんです。
しかも自治体ごとに監査基準が違うので、問題がある園が見過ごされるケースがあります。例えば今年3月、東大阪市の保育園で1億円以上もの不適切な会計処理が行われていたことが分かりました。定期的な監査にもかかわらず15年間も発見できなかったのです。
私はかねてから、保育版の「太閤検地」を行うべきだと主張しています。全国で現状バラバラの監査基準を統一化して、一定の基準を保てるようにすることが大切です。
――問題は山積みですね…。なんだか、暗い気持ちになってきました。
脇 でも、こうした保育園を取り巻く問題を知っておくことは、お子さんをさまざまなリスクから守る第一歩でもあるんです。次回はこれらのことを踏まえて、保育園とのより良い付き合い方をお話したいと思います。(後編に続く)
「事故と事件が多発する ブラック保育園のリアル」(幻冬舎)
30000件もの事故現場を見てきた著者が、安全管理を行っていない「ブラック保育園」の実態、ブラック保育士・園長の見分け方、保育施設を選ぶ際のチェックポイントなどを解説します。
(ライター・武田 純子)
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※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。