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救急医療の現場から#6〜突然の高熱とひどい嘔吐・下痢。原因は離乳食!?

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Travelsouls/gettyimages

夏は食中毒が起こりやすい時季。食材もいたみやすくなりますね。あきらかに食材がいたんでいたり、においがおかしいときは食べるのを避けますが、においも味もおかしくないと大丈夫と思ってしまうのでは?

ところが、実は、食材が食中毒を起こす細菌に汚染されているかどうかは、外観やにおいなどでは区別がつかないことがほとんどなのです! 今回は、あわててつくった離乳食を食べた赤ちゃんが、食中毒を起こした症例を、北九州八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長である市川光太郎先生に、紹介いただきました。

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食べ慣れた食材を、加熱して与えていたのに…

「10ヶ月の女児が、39度の発熱と嘔吐を数回して、顔色が悪くぐったりしているので、搬送したい」とホットラインが告げた。すぐに搬送するように指示をして、到着を待った。

到着した際に、なじみの救命士が、「顔色が悪いわりには心拍数の増加はあまりないですが、呼吸数は少し増加しています。母親に言わせると、いつもよりおなかが張っている感じがするとのことです。急性腹症(手術が必要になるかもしれない、急性のおなかの病気)の範疇(はんちゅう)でしょうか?」と自分の考えを投じてきた。

バイタルサインのチェックと、腹部単純写真、超音波検査、血液検査と点滴確保、便培養、尿検査などの指示を研修医に伝えて、母親から話を聞くことにした。と、そのとき、女児が大量の水様下痢便(すいようげりべん)を排泄(はいせつ)し、「急性胃腸炎(きゅうせいいちょうえん)」の状態であることがわかった。

母親に、この数日の離乳食を中心に食べたものを聞いてみると、確かにすべて加熱しているようだし、目新しいものも与えておらず、食物アレルギーも考えにくい食事内容であった。大量の水様下痢便を排泄したあとは、苦しがる様子はなくなった。そこに「ぐったりしていますが、ブドウ糖を増やして点滴の量も増やしていいですか?」と研修医から連絡があり、検査結果を見ると、血糖値が低く、脱水症状も進んでいる様子があり、研修医の言うとおりに許可した。

もう一度、食歴を詳しく聞き直すことにした。前日昼の離乳食には卵スープを作ったが、子どもが早く食べたいと騒ぎだしたので、十分に火が通っていたかどうかわからないまま与えたかもしれない、とのことだった。

「卵は何度も食べさせていますが、今までは何もなかったので、卵アレルギーはないと思っていいんですよね?」と母親から聞かれた。
ほかの食材に問題がなさそうなので、卵スープがあやしいと考えられるが、便培養の結果を見ないと確定診断ができない。いずれにせよ、当面点滴が必要になるので、4〜5日以上は入院してもらうことで母親から了承を得た。

急性胃腸炎の原因はサルモネラ菌だった!

ところが、入院からまる3日たっても下痢や食欲が改善せず、ぐったりして、ミルクも離乳食も欲しがらなかった。最初の1〜2日は落ち着いて見えた母親も、さすがに「大丈夫でしょうか?」と何度も聞きに来た。腸グル音(蠕動音<ぜんどうおん>)やおなかの張りや、やわらかさなどから改善方法は合っていると判断して、「大丈夫、もう数日で元気になりますよ」と答えていた。

入院4日目に、便培養から食中毒を起こしやすい細菌である「サルモネラ菌」が検出されたと報告があった。サルモネラ菌は、鶏卵などが菌に汚染され原因食材になることが知られていて、市販の鶏卵の約5000個に1個の割合で、サルモネラ菌に汚染されている疑いがあると言われている。

これで、ようやく卵スープが原因で、ひどい細菌性腸炎(さいきんせいちょうえん)になっていたことがわかった。また、近隣に集団食中毒の報告もないため、おそらく離乳食のスープの卵が十分加熱されなかったために生じた、散発性食中毒と想定できた。

原因もわかったことで、母親も十分安心したようだった。最後まで入院治療に協力するとともに、「今後、離乳食はしっかり火が通るように調理して用心します」と言ってくれた。

卵が原因食材になりやすい、サルモネラ菌食中毒とは?

サルモネラ菌食中毒は、卵が原因食材になりやすく、茶碗蒸し、シュークリームなどでの集団食中毒の報告も多くあります。症状は、嘔吐、下痢、発熱。乳幼児では重症化しやすい傾向があります。
サルモネラ菌は10度以上で増殖しますが、十分加熱すれば死滅します。乳幼児に卵料理を与える際は、しっかり火を通すことが大事です。

★赤ちゃんの急性胃腸炎対策は?

1.夏は細菌性食中毒が起こりやすい季節。調理時には、とくに手や調理器具をしっかり洗浄して

2.ほとんどの細菌は十分な加熱で死滅します。中心までしっかり火が通るようにしましょう

3.細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発に。生鮮食品は、購入後、なるべく早めに冷蔵庫へ


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市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくれる、「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で好評連載中です。『ひよこクラブ』2018年8月号の「救命救急センター24時」では、ママの予防接種が1回だったこともあり、6ヶ月未満の赤ちゃんが感染した「麻疹(はしか)」の症例を取り上げます。(構成・ひよこクラブ編集部)。

■監修:市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

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