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子どもの発達障害の行動特性(症状)と診断方法

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 発達障害という言葉は、最近では多くの人に知られるようになりました。しかし、その障害の特性(症状)や対応の仕方についてはまだまだ十分理解されているとはいえません。特に、育ちのペースに大きなばらつきのある赤ちゃん、乳幼児期の子どもを持つ保護者の方は、「うちの子どもは発達障害があるのではないか」と不安を抱えている場合もあるようです。発達障害がある子どもにとっては、早期の支援・療育が重要です。発達障害とは何か、その特徴はどのようなものかを適切に理解することは、子どもにとっても、そして保護者の方にとっても大切なのです。

発達障害はどのような行動特性(症状)なのか

 発達障害とは、脳機能の発達の偏りによって、生活上さまざまな困難をきたし、本人が困り感を抱えてしまう状態の総称のことです。生まれてすぐに診断されることはなく、子どもが発達していく過程の中で発見されるもので、保育園や幼稚園、小学校などで生活するようになることで保護者や周囲のおとなが気づくことがよくあります。発達「障害」と呼ばれていますが、薬や手術で治せるものではありませんから、「障害」「病気」というよりも、「個性」「性格」に近いものだと考えた方が適切でしょう。発達障害のある子どもの中には、学習や芸術など特定の分野が突出して秀でている子どももいます。本人が苦手とすることを叱咤激励し、苦痛な思いをさせて克服させようとするよりも、得意なこと、夢中になれることに取り組ませ、長所を伸ばしてあげることが大切です。

発達障害の種類と主な行動特性(症状)

 発達障害には、具体的には自閉症、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)などの種類があります。発達障害の行動特性は乳幼児期から現れます。しかし、障害の種類や特性の現れ方などによって、発達障害であることを気づかれる時期は異なります。

自閉症

 ことばの遅れ、特定のものや動作へのこだわり(道順や動作、作業の手順)、対人関係の困難さ(視線をそらす、呼んでも振り向かない、抱っこされることを嫌がるなど)が大きな特徴です。音や光、温度、人に触れられたときの感じ方が過敏(あるいは鈍麻)なことがあります。約8割が知的障害を伴いますが、約2割は知的な遅れを伴わない「高機能自閉症」です。

自閉症が現れる時期

 自閉症の特性(自閉的傾向)は0歳児のうちから現れます。
・声をかけても目を合わせない
・あやしても笑わない
・おなかが空いたり、おむつが濡れたりしたことを泣いて訴えることが少ない
・触られるのをいやがる
・指差しをしない
・名前を呼んでも振り返らない
ただ、このような反応は、自閉症がない赤ちゃんにも一時的に現れることがあり、乳児期の段階で自閉症と判断することは困難です。2、3歳になっても言葉が出ない、幼稚園や保育園の集団生活になじめないといった特徴が明らかになって障害に気づかれることが大半です。

アスペルガー症候群

 自閉症の一つで、言葉の面での遅れがなく、知的な遅れも伴わないことが特徴です。しかし、言葉の意味を表面的にとらえたり、相手の表情から喜怒哀楽を読み取ったりすることが苦手なため、言葉の遅れがないにもかかわらずコミュニケーションに困難さを抱えることがあります。言葉の遅れがないため、ある程度成長するまで保護者も障害に気づかないことも少なくありません。アスペルガー症候群と高機能自閉症はよく似ていますが、アスペルガー症候群は最初から言葉の発達の遅れがないのに対して、高機能自閉症は幼児期に言葉の遅れがあるけれども成長と共に次第に遅れを取り戻していくという違いがあります。アスペルガー症候群では、幼稚園の年長クラスに入る頃になって、友だちと遊べない、こだわりが強いなどの症状から気づかれ、療育機関につながる場合があります。
※近年、アメリカの精神医学会の診断基準が改訂され、「自閉症」「アスペルガー症候群」を診断名として分類せず、統一して「自閉症スペクトラム(ASD)」と診断するようになっていますが、ここでは従来の診断名である「自閉症」「アスペルガー症候群」をそのまま使用しています。

アスペルガー症候群が現れる時期

アスペルガー症候群も自閉症と同様に、2、3歳から友だちに関心を示さない、特定のものや行為にこだわりを示すといったことで気がつかれるようになりますが、自閉症とは異なり、言葉の発達の遅れがない分、気がつかれるのが後になることがあります。学力が高い場合もあるので、大学生、社会人になって学業や仕事でより複雑なコミュニケーションが求められるようになって初めて障害に気づかれるケースもあります。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

 注意力不足、落ち着きのなさ、衝動性をコントロールすることの難しさを持っていることが特徴です。子どもの3〜5%にADHDがあると考えられ、3
〜5対1の割合で男児に多く現れます。幼児期からじっとしていることができず動き回り、危険な場所などでも大人の制止を聞かず走り出すことなどがあります。しかし、このような行動は幼児期にはしばしば見られるもののため、小さいうちでの診断は難しいのが実情です。保育園や幼稚園、小学校に入って集団生活を送るようになって、周囲の子どもとは異なる特異性から先生が気づき、医療機関の受診につながることが多いようです。

ADHD(注意欠陥多動性障害)が現れる時期

幼稚園や保育園、小学校に通うようになって、次のような行動特性から周囲が気づくことがあります。
・忘れっぽい(宿題や園、学校からの配布物、友だちとの約束を忘れる)
・集中が持続しない(授業中の先生の話を最後まで聞けない、宿題や作品作りが最後までやりとげられない)
・落ち着きがない(じっと座っていられない)
・順番を待つことが苦手
注意力の不足や落ち着きのなさといった行動特性は2歳くらいから現れている場合が多いのですが、これらはどの子どもにも多かれ少なかれ見られるものです。そのため集団生活を送るようになって、ほかの子どもと比較する中で初めてADHDが疑われることが多いようです。

LD(学習障害)

 知的発達に遅れがないのに文字の読み・書き、計算などの学習において著しい困難を抱え、努力しているにもかかわらずなかなか習得できないという特性を持っています。困難さの現れ方は人によって異なり、計算は得意だけれど音読が苦手など不得意に偏りがあります。LDの8割を占めると言われているのが、読み・書きに大きなつまずきのある「ディスレクシア」という障害です。

LD(学習障害)が現れる時期

文字の読み書き、計算などに困難さを抱えるLDの場合、その特性に気がつかれるのは小学校入学以降、文字の読み書きや計算などの学習活動が始まってからです。ただ、障害が軽度の場合は、就学後すぐに気がついてもらえず、学年が上がって複雑な計算、画数の多い漢字が増えてからLDがあることがわかることもあります。さらに英語の授業が始まるようになって初めて気がつかれることもあります。いずれにしても就学前、乳幼児期にLDを判断することは困難です。

発達障害の疑いのある子どもは約61万人

 2012年に文部科学省が行った調査では、発達障害の疑いのある小中学生は全国で約61万人と考えられています。具体的には、「自閉症スペクトラム(ASD)」(従来の「自閉症」「アスペルガー症候群」)は約10万人(1.1%)、ADHDは約29万人(3.1%)、LD約42万人(4.5%)です。通常学級に通う小中学生の6.5%に発達障害があると考えられています。40人学級で考えると、1クラスに発達障害の子どもが2、3人はいることになります。

発達障害に気づくのは、多くの場合は入園・入学以降

生まれつきの脳機能の特異性が原因の発達障害ですが、自閉症を除くと、多くの場合、周囲が気づくのは幼稚園や保育園、小学校に入学して、集団生活や学習活動を始めるようになってからです。

発達障害は何が原因なのか、どのような治療法があるのか

 発達障害の行動特性(症状)は、脳の機能が特異な働き方をしていることが原因で生じるものです。そして、脳機能の働き方に障害をもたらしているのは、複数の遺伝子の変異によると考えられています。いわば、生まれつきのものであるため、育て方や接し方が原因となって起きるものではありません。また、薬や手術で治療する「病気」というよりも、「個性」「性格」と捉えた方がよいでしょう。
 ただし、治療によって脳の機能そのものを変えることはできなくても、子どもが抱える困難さを軽減し、社会の一員として参加できるような教育的支援(療育)を行うことは非常に重要です。療育の内容は一人ひとりの障害の内容、抱える困難さによって異なりますし、また、療育の成果の現れ方にも個人差はありますが、できるだけ早期に療育機関などからのサポートを受け始めることが大切です。適切な療育を行うことで、本人は「こんなときはこうすればいい」という方法(人とうまくコミュニケーションするためのソーシャルスキルなど)を理解し、少しずつ適切な行動を取れるようになります。また、本人への療育を通して、保護者の方など周囲の人が特性に合わせた接し方ができるようになるため、本人の困り感も大きく軽減するでしょう。このような療育はできるだけ早い時期から行った方が大きな効果が期待できます。
 また、ADHDにおいては、多動性や衝動性を抑える薬を服用しながら、行動療法を行っていくことがあります。

困難さを減らし、場面に応じた適切な行動がとれるよう援助する「療育」

 日常生活での本人の困り感を減らし、場面ごとに適切な行動が取れるように、教育的な援助を行うことを「療育」と呼びます。発達障害全般に有効な治療法であり、時間をかけて積み重ねていくことで本人の困り感が減り、生活が安定し、社会への適応能力が高まっていきます。ポイントは、失敗してもしからない、小さな成功でもほめる、目標は低く設定して一つずつ乗り越える、です。

・療育の柱/行動療法
かんしゃくやパニックなど、その場において好ましくない行動に対しては静かに見守り(叱責や罰を与えたりせずに無視する)、問題行動が収まり、好ましい行動がとれたときにはほめたり、ごほうびを与えたりする。

・療育の柱/構造化
1日のスケジュール(時間割)を表にまとめて明確にしたり、作業の手順を細かいステップに分けて文字や絵でわかりやすく説明したりするなど、今何をやればよいか、なにをやらなくてよいかを明らかにして、情報の取捨選択をしやすくする。

 発達障害の療育は、早期に行うほどが有効であると考えられていますが、その療育は、本人の行動特性に合ったサポートであることが前提です。療育の内容は一人ひとり異なりますから、発達障害の心配があるときは、いち早く医療機関を受診することが大切です。

「もしかして、発達障害かも?」赤ちゃんに気になる症状があったら…

日々の生活の中で子どもに気になる様子が見られたときには、保護者の方はどのように行動すればよいのでしょうか。ここでは特に乳幼児の場合についてご説明します。

赤ちゃんのパパママに知ってもらいたいこと

・0〜2歳児での発達障害の診断は難しい
赤ちゃんの発達のスピードは一人ひとり大きく異なります。そのため、発達障害がないにもかかわらず、「発達障害かも?」と思われる行動特性が一時的に現れることがあります。実際に診断が可能になるのは多くの場合は3歳時以降になってからです。ただ、すぐに診断はつかないけれど、そのリスクが高いと判断された場合は、定期的に医療機関を受診し、経過観察を行ってもらうことが望ましいでしょう。

・日記や育児メモが診断に役立ちます
診断は、児童精神科や小児神経科など、発達障害の専門知識を持った医師が子どもをじっくりと診察した上で行います。その際、医師は保護者の方に子どもが生まれてからの様子を聞くことになりますが、その際、子どもの家庭での様子を記録した育児メモなどがあると診断はよりスムーズになりますし、その後の療育の計画を考えていく上での資料にもなります。

気になることは医療機関や地域の療育センター、園の先生に相談を

 発達障害の診断は、小児神経科や児童精神科の専門医が行います。しかし、いきなり専門の医療機関を受診することがためらわれるときは、かかりつけの小児科医、保育園の先生、地域の保健センターや子育て支援センターに話をしてみるとよいでしょう。発達障害に対する知識を持った保育士、相談員も増えていますので、適切な医療機関の紹介などのアドバイスをしてくれるでしょう。また、自治体が行っている幼児健診のときに医師などに相談してみてもよいでしょう。

もしも発達障害ではなかったら…

 発達障害だと診断された場合は、医師、さらに保育士などと連携して、その子に合った療育を行っていくことになります。
 一方、発達障害ではなかったと診断された場合はどうでしょうか。そもそも保護者の方が「発達障害ではないか?」と考えるようになった気がかりなことが解消できているでしょうか。保護者の方の気がかりが、子どもにとっての日常生活における困りごとであり、それがまだ残っている場合は、解消してあげることが大切です。発達障害でなくてよかったと気がかりごとをそのままにするのではなく、園や子育て支援センターに相談し、子どもが感じている困りごと解消してあげてほしいと思います。

(取材・文/たまひよONLINE編集部) 

監修/榊原洋一先生
東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学副学長などを務める。「子ども学」の研究のため、ベネッセコーポレーションの支援のもと設立されたCRN(チャイルド・リサーチ・ネット)所長。発達障害など子どもの心と体の研究の第一人者。お茶の水女子大学名誉教授。

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