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発達障害の子どものために、150冊の本を読んだ母。そして、たどりついた共通点。同じ経験をしている親のために伝えたいこと

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●写真はイメージです。 写真提供/eizan / ピクスタ

書籍『我が子が発達障害だと分かったら絶対に知っておきたいこと』を出版した桃川あいこさん。これまでブログやSNSなどを通じて情報発信を続けてきた桃川さんの初めての著書は、自身の体験談ではなく、発達障害に関する名著100冊の重要ポイントをまとめた内容となっています。今回は自分自身が発達障害の子どもを育てた体験があったからこその初の著書に込めた思いや工夫についてお話を聞きました。2回にわたるインタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

発達障害グレーゾーンの子どもを20年間育ててきた1人の母が、発達障害の関連本100冊を厳選し、重要なポイントをまとめた!

――今回、出版された書籍『我が子が発達障害だとわかったら絶対に知っておきたいこと』は、発達障害の名著100冊の重要なエッセンスをまとめて、わかりやすく紹介した本だそうですね。桃川さん自身も発達障害の子どもを育ててきたそうで。改めて桃川さん自身の経歴を教えてもらえますか?

桃川さん(以下敬称略) はい。もともと私は、発達障害グレーゾーンの子どもを20年間育ててきた1人の母親です。過去には大学で図書館情報学を学び、その後、IT企業に就職した経歴があります。
当時の職場ではソフトウエアに関する技術情報を調べ、初心者にもわかるようにまとめる業務がありました。あまり詳しくない人が「これでわかりやすくなった、助かる」と言ってくれるのがうれしくて、今の原点となる「調べて、平易な言葉で伝える力」をここで徹底的に鍛えました。

――そんな中でお子さんが生まれたんですね。

桃川 はい。もともと育てにくさを感じていたわが子でしたが、小学校入学直前に発達障害があることがわかりました。支援につながるまでの数年間は、少ない情報を頼りに自分たちで工夫し続ける日々。学校では、通常級で工夫して乗りきっていました。

――当時も発達障害の関連本をたくさん読まれていたのですか?

桃川 いいえ。書籍をたくさん読んだのはもっとあとのことです。そもそも発達障害に関連する本が書店にもほぼない時代でした。手に取った本があまりにも難しく感じて、本を閉じたことを覚えています。ふだんの子育てだけでこんなに大変なのに、さらに勉強する負担がつらく感じてしまって…。
ネットで症状名から調べても、「ではどうしたらいいか」という身近さを持った情報が見つからない。

また、子どもがメンタルの病からぐったりしていた時期(前編参照)は、どんなワードで検索したらいいかもわからなかった。それがとても苦しかったですね。「わからなすぎてどうしよう」という不安の渦に飲まれていました。

今回の書籍は、その発達障害の子どもが成人して無事社会に出始めたことをきっかけに、私と同じように「何から調べればいいかわからない」と悩んでいる方が世の中にいるのではないかと思い、執筆するに至りました。この本には「100冊から1冊にまとめた」と書いていますが、実際に読み込んだ関連書は150冊近くとなります。

読み込んだ名著は150冊。それらには共通点があることに気づく

――150冊はすごいですね!

桃川 発達障害に関する本は大きく分けて、専門家によるものと、当事者やその家族が書いたものの2種類があります。
それぞれによさはありますが、あえてデメリットを挙げると、専門家の本は内容が詳しい反面、中には難しくて読みづらいものも。一方、当事者や家族の本はリアルな体験が書かれていますが、どうしても1人のケースに限られてしまいます。こうした数多くの本を読んで、必要な情報を選び、自分たちの地肉としていくのは、とても時間がかかる作業だと実感しました。

ただ、名著と呼ばれるような本を読み進めていくと、最終的な結論や、これからの人たちに伝えたいメッセージなど、共通している部分が数多くあることに気づいたんです。だったら、それを1冊にまとめて届けられたら、役に立つのでは?と。

――なるほど。

桃川 また、私は昔から「自分が困っていることは、どこかの誰かも同じように困っている」という確信を持っています。
家庭生活で困りごとがおきたとき、子どものことに限らず、自分自身で必ず調べまくって解決策を探してきました。そしてそれがネットにまだ載ってないとわかると、大喜びでブログに記録してきました。今回の本も、その延長線上にあります。

専門用語はなるべく使わず、やさしく伝える工夫を

――今回の本では、「発達障害とは何か」という基本的なところから、相談先、療育、就学、そして就職まで、幅広く取り上げられていますね。

桃川 はい。この本は、子どもの発達障害について、保護者の方が無理なく、ひと通り理解できるように構成しています。悩んでいる親御さんが、発達障害という言葉を怖がらず、わかりやすく、そして全体の見通しが立てられる情報にたどり着けることを意識して作りました。

「見通しを立てること」は、発達障害のある子どもの不安や、パニックを予防するのにとても有効だと言われています。それって一般的な大人にとっても同じことが言えると思います。とくに発達障害のある子どもを育てる親にとって「これからどうなるか」が見えて安心できることが、すごく大事です。

――確かにそうですね。ほかにも、執筆にあたって工夫した点はありますか?

桃川 専門用語は、できるだけわかりやすい言葉に言い換えるようにしたり、あえて使わないようにしたりしました。また、情報が詰め込まれすぎた本って、読むのが大変ですよね。私自身もそう感じていたので、1つ1つのトピックをあっさりと区切って、読みやすくすることを心がけました。
発達障害のある子どもの子育て中は、毎日がいっぱいいっぱいなんです。自分自身が疲れて難しい本を読む気にはなれなかったので、読みやすさはとくに意識しました。

また、実はこの本が読みやすさにこだわった理由はもう1つあります。それは、おじいちゃんやおばあちゃんにも手に取ってもらいたいと考えたから。孫のことをもっと知りたいと思っている祖父母は少なくありませんし、保護者の方も「子どもの特性を理解してもらえたら」と感じているのではないでしょうか。だからこそ、「発達障害って、こういうことなんですよ」と本を気軽に差し出して、家族親族みんなで共有してもらえたらと思います。

子育て以外の自分の幸せを小さなお守りのようにいっぱい持っておくことが大事

――桃川さんと同じように発達障害の子どもを持つ親御さんにメッセージをお願いします。

桃川 「発達障害」ってとても怖いワードですよね。ですが、その正体は、遺伝子のちょっとした違いから起きている、脳の少しの働きの違いなのです。その人が劣っていたり、尊厳に関わったりすることではありません。

知ることが怖い、と思う人もいるかもしれません。しかし、ある程度の基本を総ざらいしておくと、「もしこうだったらどうしよう、将来どうしたらいいんだろう」という未来への妄想的な不安を減らすことができると思います。

まだ起きていないこととか、全然わからないことに対して、悩み始めるって、たちが悪いじゃないですか。でも、最初に基本を総ざらいし、そういう不安をカットしておくと、「今のわが子を見つめて、1日1日育てていけばいい」という心の軸ができると思いますし、それが気持ちのゆとりにつながるのではないかと私は考えています。

発達障害の世界では「その人にとって、どう頑張っても苦手なこと」が出てくるものです。昔は根性で乗り越えろと言われたけれど、今の時代は「頑張って克服できるようにする」のがベストではない、それ以外の解決策に目を向けられることになってきていると思います。

子どもの場合、とくに小さいうちは、多くを自分で考えて判断していくのは難しく、保護者のサポートが必要となるでしょう。
ただ、保護者の意見をトップダウン的に子どもに押しつける時代ではないので、私を含め保護者は“わが子の研究者”になり、将来子どもが自分で考えてできるように、今子どもができることや得意なことを観察し、自分でやれること・周囲の手助けが必要なことを上手に仕分けして、手助けしていけたらいいのかなと思っています。

――わが子の研究者!その子自身をよく見ることが大事ですね。

桃川 はい。ただ、逆説的になるかもしれませんが、保護者が子ども100%になる必要はないと思っているんです。むしろ、いちばん強いのは、子ども以外の、自分の小さな幸せを、お守りみたいにたくさん持っている人だと思います。
たとえば、私はアジサイを育てているんですけど、花がつく年とつかない年があるんですね。だけど、今年は今朝初めてつぼみができ始めているのを見つけました。それがものすごくうれしかった!

発達障害のある子どもの子育てって、本当に大変なので、親のメンタルケアがとても大切です。親御さんが1人の女性、1人の男性として、毎日幸せに生き、その中で子育てをしていく。それがいちばん強いやり方だと思っています。

お話/桃川あいこさん 取材・文/江原めぐみ、たまひよONLINE編集部

発達障害に関する情報は、たくさんあるように見えますが、あふれすぎて、中には本当に必要な情報にたどり着けないことも。今回の本は、そんな迷いの中にいる保護者や家族に、静かに寄り添い、次の1歩を照らしてくれる1冊のように感じました。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

桃川あいこさん(ももかわあいこ)

PROFILE
現・筑波大学で図書館情報学を専攻し、情報検索概論、ネットリテラシーを研究。日本アイ・ビー・エムに入社後は、ソフトウェアのQ&Aまとめ文書をノルマの10倍執筆。図書や情報のエキスパートとして活躍してきた。2004年、発達障害の子どもが生まれたことを契機に退職。20年に渡り、わが子に起きている問題について、地域の支援施設・ネット・書籍・学術論文などさまざまなチャネルで情報収集をしている。

桃川さんの公式サイト

桃川さんのX

桃川さんのInstagram

我が子が発達障害だと分かったら絶対に知っておきたいこと

子どもが実際に発達障害と診断されたお父さんお母さんが、最初に読むのにおすすめの1冊。
発達障害の名著100冊から、重要ポイントをまとめているだけあり、今後何をすべきかがわかる内容になっています。専門家の情報をわかりやすく、あたたかい寄り添いの言葉で伝えてくれているので、本が苦手な人にもおすすめです! 桃川あいこ(著)池田勝紀(監修) 1650円/学研

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●掲載している情報は2025年6月現在のものです。

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