小学校入学前にひらがなの読み書きを教える? 数は?
入学後、授業にスムーズについていけるよう、ひらがなの読み書きや数を教えるかどうかは、小学校入学前の保護者が気になっていることのひとつです。
特にひらがなに関しては、一朝一夕では覚えることはできないので、どうすればいいか悩むママたちが多いようです。
「みんなが文字の読み書きができるのなら、我が子も同じレベルくらいには準備しておきたい」「少しでも知っていれば、授業にも自信を持って参加できるのではないか」「でも子どもにひらがなや数をムリに教え込むと、この時期、悪い影響があるかもしれない」。
このように悩む保護者のために、「ベネッセ教育総合研究所」顧問八木義弘さんからアドバイスをいただきました。
公立小学校のスタンスは「文字の読み書きは入学後に指導」
小学校では、単純にひらがなやカタカナ、漢字などの読み書きを教えているだけではありません。子どもたちは、なぜ文字があるのか、言葉にはどんな意味があるのかもあわせて学んでいきます。文字は丸暗記すればいい図形ではないわけです。
そのため、何も知らない「まっさらな状態」で入学したほうが、教師は子どもの文字への興味を引き出すところから始められるので、よりいいのだといいます。
入学前に、子どもが文字を何文字読めるようになったとか何文字書けるようになったとかと気にするあまり、焦って覚えさせてしまうと、子どもが書き順を無視したり、とめはねをおざなりにして図案的な感覚で文字を覚えてしまいます。間違えて覚えてしまうと、後からの修正が大変になるのです。
小学校の入学資料を見ても、文字の読み書きについては「自分の名前をひらがなで読んだり書いたりできるようにしておきましょう」と書かれているところがほとんどです。小学校としては、親が家庭でムリに教え込む必要はなく、自分の名前の読み書きを最低限マスターしてきてもらえればというスタンスのようです。
入学前にオススメの子どもに負担のない文字学習
「文字や計算は小学校に入学してから」といわれても、幼稚園や保育園で教えているところも増えています。特に私立園では教育の特色を出すために「我が園ではひらがな指導を行っています」などと、うたっているところも。そのため、地域によっては入学したらクラスの子のほとんどがひらがなが読めたというケースも耳にします。
ひと昔前のように、「入学前は特に学習に関する準備は必要ありません」とはひとくくりに言えない時代になったわけです。
では実際、どうしたらいいのでしょう?
入学前に文字などの先取り学習を学校側があまりしてほしくない理由のひとつに「正しく教わっていない」ケースがあります。ひらがな全部をマスターすることを優先するあまり、子どもが文字を下から書いてしまっていたという場合も。
そのため教えるのであれば、書き順やとめ・はねなど正しく教えたいもの。
ただ、たとえ親は教えないつもりでいても、子どもが文字に興味を持つことはあるでしょう。そうした時は自分の名前などを手始めに、文字を読むことをお子さんの関心にあわせて教えていってもいいでしょう。
少しでも文字が読めるようになると、さらに子どもは自ら「これは何て読むの?」と求めるようになります。親はそのタイミングで少しずつ文字の読み方を教えるといいでしょう。
子どもにその気がないのに強制的に教えて、文字嫌いにしてしまうことが一番の問題です。
散歩をしながら、知っている文字を探すゲームをしたり、世の中にはいろいろな文字があって、それが人と人とのコミュニケーションの大事な役割を果たしていることを伝えながら、文字への興味関心を広げていくようにしておくといいですね。
文字学習と同じように、数もあせらずに
文字と同じように、数についても「50くらいまで数えられるようにしたほうがいいかしら」「あの幼稚園では100まで数えられるようにしているらしい」「かんたんな計算に慣れておいたほうがいいのかしら?」などの悩みが、インターネット上でもたくさん書き込まれています。
けれども、数の概念や計算についても、家庭であせって教えなくても大丈夫です。むしろ、生活の中に数字があることや、数字を使うことで便利になる体験をさせていくほうが役に立ちます。
「今日のおやつはクッキーが5枚」と言って5枚になるよう箱から出させたり、体重を測った時に「今日は●gだから、1カ月前より◯kg増えたね」などと声をかけたりしていきましょう。
時間やお金、重さや長さなど、数字は生活の中で大きな役割を果たしています。数字がいろいろな場で使われていることを実感させることが、数の概念を身近に感じる経験となり、学校での学習のもとになります。
最低限必要なのは、自分の名前の読み書き。もしも、文字や数字を教えたいと思ったら、子どもが興味を持ったタイミングで、子どもの問いかけに応える形で。生活の中で文字や数字に親しむ機会や環境づくりをしていきましょう。
(取材・文/bizmom編集部 橋本真理子<メディア・ビュー>)
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