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「子どもが泣きやまない!」救急コールをした母親は、育児放棄だった!?〜救急医療の現場から#10

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PredragImages/gettyimages

夫の転勤などで引っ越しをし、親戚や知人の全くいないところで子育てをすることを「アウェイ育児」などと言うことがありますね。近所の様子もわからないうえに、頼る人もおらず、慣れない子育てに追われるのは精神的につらくなりがちです。今回は、引っ越しをきっかけに、子育てに積極的にかかわれなくなってしまったママの話について、長年、小児救急医療の現場に携わってこられた市川光太郎先生に、ご紹介いただきました。

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「引っ越しをきっかけに、育児をするのが面倒に・・・」

「子どもが泣きやまないと救急コールがありました。子どもの状態は悪そうではないのですが、母親の言動が気になるので搬送したいのですが」とのホットラインだった。救命士が「母親は平然としているように見えて、一面、イライラした雰囲気があり、養育不安がありそうです」とつけ加えた。

搬入された患児は1才1カ月の女の子であった。母親に抱きかかえられて救急室に入ったが、第一印象はとくに悪くなく、顔色もよく、好奇心旺盛に目もキョロキョロさせていた。呼吸も血流の状態も問題なかった。すぐに体温・呼吸・脈拍・血圧などの測定と全身計測を行うように指示して、救命士に家庭の様子を聞いたところ、とくに違和感はなく整然と片づけられていたと教えてくれた。

看護師の問診からは、女の子は第一子であり、父方・母方ともに祖父母は近くに住んでいなかった。女の子が3カ月のときに転居して当地に住み、知人も少なく、日中はほとんど母親と子どもの2人きりとのことであった。

「引っ越しをきっかけに何か憂鬱(ゆううつ)で楽しくない状態になり、育児するのが面倒になっていたんです。パパに言っても、『大丈夫、すぐ慣れるから』と相手にしてくれません。子どもの面倒は見てくれますが、仕事が忙しいのであてにはできないんです」と母親は一気に話してくれた。

「この子は、熱が出るなど、今まで病気もしなかったので、まだかかりつけ医もありません。ワクチン接種をしなくてはと思ってはいましたが、面倒でまだ何も打っていません」とも語った。

研修医から体重は7㎏台で小さいが、血液検査上は栄養障害・貧血などは認めないし、とくに異常なデータはなく、X線検査の胸腹部写真でも異常は認めず、検尿も問題ないとのことであった。栄養法は母乳が引っ越し後から出なくなって、ミルクに変更し、離乳食も開始しているが食べてくれないと不満そうに語った。母子健康手帳を見ると3カ月健診では体重増加は良好で、明らかに転居後から増えが悪くなっていた。

子どもの入院を提案し、母親への支援を行うことに

「決して子どもが嫌いというわけではないけれど、何か楽しくない」と何度も母親は繰り返した。そこで、「お母さんの気分転換にもなるよう、泣き続ける原因を探したり、お子さんの体重増加に悪い原因がないかどうかも入院して検査してみましょう」と提案すると、母親は一瞬困った顔をしたが、了承してくれ、父親に連絡して入院の手続きを進めた。

来院した父親に別室で、「転居によるストレス過多でお母さんがめいって、育児が適切にできない状況のようです。
いわゆる消極的ネグレクト(育児放棄)と診断していいかもしれません。このような場合をマルトリートメント(子どもへの不適切なかかわり)とも呼び、本物のネグレクトに進展しないように支援が早々に必要になります」と説明した。父親は納得して、「もっと自分も妻の気持ちを考えてあげなくては…」と反省しきりであった。

入院後、看護師や保育士・心理士、地域保健師などの連携支援が構築され、母親は徐々に明るくなっていった。2週間で女の子の体重も順調に伸びた。そのため、退院とし、その後は、外来で様子を見ることにした。

「マルトリートメント」とは

マルトリートメントとは、大人の「子どもへの不適切なかかわり」の意味で、虐待の芽を疑う兆候をいいます。育児にネガティブな気持ちを感じたら、パパや家族・知人に相談し、自分だけで抱えようとしないことが重要です。ママの気持ちはすぐ子どもに伝わり、鏡のようにママと同じ気持ちになることを忘れないでください。

★育児に疲れたときは、

1.子どもに身体的な傷や病気がなくても、ママが育児に対して負の気持ちを感じたら、最寄りの小児科医などに相談しましょう。

2.SOSを出すことは悪いことではありません。看護師などに適切なアドバイスや行政サービスなどを教えてもらいましょう。

3.子どもが寂しい思いをしないよう、早めに相談しましょう。

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市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくれる、「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で好評連載中です。ひよこクラブ12月号の「救命救急センター24時」では、風邪の症状はないのに40度熱と発疹が出て診断がついた「川崎病」の症例を取り上げます。(構成・ひよこクラブ編集部)。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、全国の医師から尊敬を集めていらっしゃいます。

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