「不妊治療の末、特別養子縁組にたどりついた」瀬奈じゅんの#ミライ育児
実の親と暮らせない子どもと養親の間で縁組をする特別養子縁組について、今年1月、対象年齢を「原則6歳未満」から「原則15歳未満」へ引き上げる民法改正の要項がまとめられ、注目を集めています。
宝塚の元月組トップスターで、現在はミュージカルや舞台を中心に活躍する女優の瀬奈じゅんさんは、2018年に、特別養子縁組制度で子どもを授かったことを公表しました。つらい不妊治療や、「親になりたい」という気持ちをめぐる葛藤を経てわが子を授かったからこそ、特別養子縁組の制度を広く知ってもらいたいといいます。ホームページ「&family..」やシンポジウムで情報を発信する瀬奈さんに、これからの育児(#ミライ育児)に期待することを伺いました。
※「ミライ育児」は、たまひよ創刊25周年を記念して実施しているプロジェクトです。これからの育児について、著名人にインタビューや、“#ミライ育児”のハッシュタグで投稿を募集しています。詳細はこちら
特別養子縁組をすすめてくれたのは、夫なんです
「結婚したときは、30代後半。主人との子どもを望んで高度不妊治療を始め、7回の体外受精を受けましたが、授かりませんでした。治療を始めて1年半くらいたったころ、特別養子縁組制度を知っていた主人が、体調も精神的にも不安定だった私を見かねて、『この制度で子どもを授かる選択肢もあるんじゃないか』と言ってくれて。調べるうちに、温かい家庭を必要としている子どもと、親になりたいと思う人が家族になるって、すてきなことなんじゃないかな、と思うようになりました」
「特別養子縁組で家族になった方々にお話を聞いたりもして、考え抜いた末に登録を決めました。待機期間を経て民間団体から連絡をいただき、生後5日の子どもを迎えに行くことに。子どもと会った瞬間は、パァーっと世界が明るくなったみたいでしたね。その日から、生活が激変(笑)。子育ては想像した以上に大変でしたが、それ以上に幸せなこともたくさんありました。
子どもを迎えて、いい意味で夫と対立することが増えましたね。けんかをするわけではないんですが、子どもにこうしてあげたいという意見が食い違うこともあって。自分のことは我慢できるけど、この子のためだと思うと譲れないんです(笑)。だからといって夫婦の関係が崩れるわけではなく、家族の絆は深まっていると思います」
子どもには、生んでくれたお母さんが別にいることを伝えたい
「子どもが2才を過ぎたころには、『あなたには生んでくれたお父さんとお母さんがいるんだよ。でも、私たちも変わらずお父さんとお母さんだよ』と伝えたいと思っています。公表したのは、憶測が飛び交う前に正しい情報を発信したかったから。そして、発表するなら少しでも特別養子縁組を広げる活動をしたいと思いました。
不妊治療を経験したことも大きかったです。あの経験があったからこそ、今、真剣に子育てに向き合えるし、人の痛みを知ることもできた。不妊治療を始める前に選択肢の一つとしてこの制度を知っているだけで、治療への向き合い方も変わるはずなんです。だから私は、この制度のことを、正しい知識とともに知ってほしい。これからのミライ、特別養子縁組で子どもを授かることが特別視されない世の中になってほしいと心から願っています」
瀬奈じゅんさんのインタビューは、『ひよこクラブ』3月号で詳しく紹介しています。こちらもぜひチェックしてみてください。
(撮影/野中麻実子 ヘア&メイク/武井優子 取材・文/川辺美希)
プロフィール
瀬奈じゅんさん
東京都出身。1992年に宝塚歌劇団に入団。花組から月組への組変えを経て2005年、月組男役トップスターに。2009年の退団後は舞台やコンサート、ドラマ等で活躍中。