電車で動き回る子ども、親はどう関わるのがいい?コツは?
電車の中でも動き回るお子さんは、動きたくてそうしているわけではなく、その子ならではの特性(個性)が関係しているようです。
「静かにさせるのが大変・・・」とお悩みのおうちの方に向け、保育者育成をはじめ、お子さんやその家族への育児支援などに力を注ぐ藤原里美さんに、最適なかかわり方のコツを伺いました。
“動きたがる”のには理由がある!
飛行機のエコノミークラスに長時間のっていると、体を動かしたくなりませんか?
たとえば、電車の中で動き回ってじっとしていないお子さんには、これと似たようなことが体の中で起こっています。
私たちは体の中に筋肉や関節、そしてバランスや回転、揺れなど、外からの刺激を感じる「感覚」を持っています。この「感覚」は、固有感覚と前庭感覚(※)と呼ばれ、じっとしているとこの「感覚」に適切かつ必要な刺激(情報)が入りません。そのため、体は外からの刺激を感じたいという欲求にかられます。
動きたい欲求が強いお子さんは、この刺激を受け取る入れ物がもともと大きいので、より早く、より多くの刺激が必要となります。これらの理由から、少しの時間でもじっとしていられず、「動きたい・・・」「筋肉や関節に刺激を感じたい!」「回転や揺れなどの刺激を得たい」という欲求にかられます。その欲求が、“動き回る”“じっとしてない”という行動につながります。
※「固有感覚」とは、筋肉や関節に感じる感覚で体の位置・活動時の力加減を理解するために使う感覚。「前提感覚」とは、体全体のバランスを取る感覚で別名「平衡感覚」。姿勢を保つ・活動時のスピード理解のために使う感覚を示します。「感覚」は、ほかに五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)もあります。
“動き回りたい”欲求を満たすかかわり方のコツ
動きたくなるお子さんには、その子に必要な刺激を補うことがおすすめです。手や足をマッサージする、指相撲をする、手をつないでいるときはリズミカルに握ってみるなど、筋肉や関節に刺激を与えてみましょう。
たとえば電車がすいている場合は、手をつないで電車内を歩いてみてもいいでしょう。たまには電車が停車したら一度ホームに降りて、隣の車両に乗り替えてみるのも1つの方法。ほかの乗客に迷惑をかけずに体を動かせるのでいいかもしれません。
また“動き回りたい”欲求を、見て楽しむ欲求に変換させるのもいい方法です。車窓の景色から、赤や青の物を探してみる、看板を見つけてみるなど、ゲーム感覚で遊んでいるうちに目的地に到着できたらいいなと思います。
ほかには、乗車前に電車の中では“走らないで歩く”“パパと手をつないで立つ”“つり革にはつかまらない”などと約束し、不適切な行動を予防するのも有効です。一駅ごとに約束を守れたら、シールをカードに貼るなど、目に見えるご褒美を用意するといいでしょう。すごろくのようにゴールを明確にすることで、さらに楽しめるかもしれません。
旅行などで長時間電車に乗るときには、駅名を記入したTo Do Listを用意し、その駅を通過するごとにチェックしていくのも達成感が持てそうです。乗車前日に親子でこのチェックリストを作ると、見通しが持てて電車に乗ることが楽しみになるかもしません。
最後まで頑張ったらご褒美をあげるというやり方より、スモールステップでお子さんの頑張りを認めてほめる。それを積み重ねていく感じにします。ゴールまでできたら、パパに肩車してもらうなど、無理のないご褒美を用意するといいでしょう。
こういった落ち着きのなさは、年齢が進むとともに落ち着いてきます。もっとも動きたがる時期に公共交通機関や場所を利用するときは、スマホの動画などに頼ることもやむを得ない場合があります。動きたい欲求が強く出る小学校の低学年まではこれからの工夫で乗りきりましょう。
【かかわり方のコツチェックリスト】
□ 手足のマッサージ、指相撲、リズミカルに手を握るなどの刺激を与える
□ “動き回りたい”欲求を、見て楽しむ欲求に変換させる
□ 事前にしてはいけない行動を約束する
□ “少しでもできたらほめる”を繰り返し、無理のないご褒美をあげる
□ やむを得ない場合は、スマホの動画などに頼る
■監修:一般社団法人チャイルドフッド・ラボ代表理事 藤原里美先生
明星大学非常勤講師(障害児保育)、臨床発達心理士、自閉症スペクトラム支援士、早期発達支援コーディネーター、保育士。
■イラスト・マンガ/鳥頭ゆば(トリあたま絵日記)