子どもが着替えを嫌がるのには、「不快な刺激」が理由かも
登園前の朝は大忙し。お子さんの着替えが進まないとついイラッとする日もあるでしょう。“自分のことは自分でする”習慣は大事ですが、お子さんが着替えを嫌がるのにはワケがあり、それを理解してサポートすることがポイントのようです。
保育者育成をはじめ、お子さんやその家族への育児支援などに力を注ぐ藤原里美さんに、お子さんが着替えを嫌がる理由とサポートのポイントを聞きました。
「着替えイヤ~」は子どもにとって不快な刺激がそこにあるから!
私たちの体内にある、外からの刺激を感じる『感覚(※)』にアンバランスさが生じると、お子さんはその刺激を嫌がります。その結果、着替えがスムーズにいかず時間がかかったり、着替えたくないと駄々をこねることになります。
たとえば、「触覚」が敏感なお子さんは、衣類の肌触りを不快に思ったり、衣類と肌との温度差を気持ち悪く感じて、着替えるのが嫌になります。
「動きたい!」という欲求が強いお子さんは、着替えの間じっとしていることが難しく、着替えが進みません。
頭や腕などの体の位置のイメージ(ボディーイメージ)がうまくつかめないお子さんは、身のこなしがスムーズにいかないことがあります。
頭を下げるなどして体勢を変えることに不安を感じるお子さんは、着替えを嫌がったり時間がかかることが多いでしょう。
※『感覚』には「五感」と「二覚」があります。「五感」は触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚のこと。「二覚」は筋肉や関節に感じる感覚で体の位置・活動時の力加減を理解するために使う『固有感覚』と、自分の頭の位置を感じてバランスを取る感覚で姿勢を保つ・活動時のスピード理解のために使う『前庭感覚』を指します。
子どもにとって不快な刺激をやわらげてあげるとスムーズに!
お子さんの着替えの様子から、どの程度の刺激であれば嫌がらずに受け入れられるかを見極めましょう。
「触覚」が敏感なお子さんであれば、やわらかい素材にしたり衣類を温めるなどといった配慮をしてみましょう。
「動きたい!」という欲求が強いお子さんには、体をマッサージしながら着替えさせたり、見て楽しめるおもちゃなどを用意して「視覚」を刺激するのがおすすめです。マッサージや視覚から刺激を感じることでそれほど嫌がらずに応じるでしょう。
体勢を変えることに不安を感じるお子さんであれば、頭の位置をなるべく一定に保ち、座って姿勢を安定させてゆっくりペースで着替えを手伝いましょう。
着替えの手順は、複雑な体の動きがたくさんつながって初めて成立します。小さなお子さんにとって、この体の動きをつなげることは難しく、次に体のどの部位を動かすのかがわからなくなり、行動が止まってしまいます。
大人にとってはなんでもない着替えですが、“子どもにとっては難しいこと”と理解するだけで、かかわり方も変わってくるのではないでしょうか。
“1人で着替える”が苦手な子への秘策
1人での着替えを嫌がる場合は、積極的に手伝いましょう。着替えが気分良く進み、「自分でできた!」という体験を積ませることが大切です。
ポイントは、まずは着替えが完了する直前の手順だけ子どもにやらせるようにすること。
たとえば、“袖に手を通す”ことだけはお子さんにやらせて、それ以外は手伝うといった具合です。最後の手順を子どもが行うことで、「自分でできた!」という気持ちで着替えを終えることができるからです。最後の手順ができたら、その一つ前の手順も1人でできるようにサポートします。
つまり、着替え開始の手順から“自分でできる”ことを増やすのではなく、着替えの完了から開始に向けて、“自分でできる”手順を増やしていくのです。そうすることで、常に「自分でできてすごいね」と褒められて終わるので、お子さんの意欲を保ちながら練習できます。
■監修:一般社団法人チャイルドフッド・ラボ代表理事 藤原里美先生
明星大学非常勤講師(障害児保育)、臨床発達心理士、自閉症スペクトラム支援士、早期発達支援コーディネーター、保育士。
■イラスト・マンガ/鳥頭ゆば(トリあたま絵日記)