「子どもにおちんちんを触っちゃダメ!」と言わないで 性器は大切な臓器 ママ泌尿科医
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載、2回目のテーマは、「子どもがおちんちんを触っているから、やめさせたい」という話。子どもの性器にまつわるよくあるお悩みですが、実は親側が気をつけたいことがあるそうです。先生の体験談も参考になります。
「ママ泌尿科医のお母さんのためのおちんちん講座」#2
性器を触るのは、性的な意味がないことがほとんど
こんにちは。
今週も助産院で恒例の「おちんちん講座」を開催しました。私の講座では、いつも最初に参加者のみなさんに簡単な自己紹介をしてもらっています。
その中で「参加動機」「気になっていること、知りたいと思っていること」をひと言ずつ話してもらっていますが、今回多かったのは「子どもがおちんちんをよく触るので、どうやったらやめさせられるか知りたいです」といったお悩み。
面白いのは、「よく触る」という理由が知りたいだけではなく、「やめさせなければ」という意識をセットで感じているお母さんたちがとても多いこと。
たとえば、子どもがすごく頻繁に目を触っていたらどうでしょう。
「かゆいのかな? 痛いのかな? ゴミが入っちゃった?」ってまずは思いますよね。そして、(会話ができる年齢なら)本人に「どうしたの?」って聞いて、可能なら見せてもらって、気になる異常があれば病院に行きますよね。そして「何も異常はないですよ」とわかったら、そこで初めて「どうしたら触らなくなるか」を考えるでしょう。
それでも、なぜか性器については、まず「やめさせなきゃ」が先に来てしまうんですよね。
男の子がおちんちんを触っていると、どうしても「性的」なイメージと結びついてしまう気持ち、よくわかります。子どもとはいえ、なんだか”いけない”ことな気がしてしまいますよね。
ただ、実際には幼児期の男の子がおちんちんを触るのは、性的な意味ではなく、単なる興味関心からであったり、親の反応が面白いからといった理由がほとんどだと考えられます。
痛くないか、かゆくないか、見た目で何か異常がないかを確認してみて、気になることがあれば病院で相談してみましょう。とくに異常がなければ、触ること自体はあまり気にしなくていいと思います。
特別な反応をしないで 接するのがベター
実は私の2才の息子も、最近おふろに入る前に裸になると、おちんちんを触ったり引っ張ったりするようになりました。わざとおもちゃやリモコンを当てて、ニヤッとしながらこちらを見てきます(笑)「おちんちん気になるんだよねー」「おふろできれいきれいしようねー」といった声かけをしながら、特別な反応はしないで接しています。
子どもが性器を触ると、気になって心配になる気持ちはとてもよくわかります。しかし、私がお母さんたちにお願いしているのは、「おちんちんを触っちゃダメ」という伝え方はしないでほしいということ。
というのも、自分の性器に対して「触ってはいけないもの」というネガティブなイメージを持ってほしくないから。
ある程度の年齢になれば、多くの子が自分の性器に興味を持つようになります。触ったり引っ張ったり、中には皮を自分でむこうとしてみる子もいるでしょう。
その過程で、疑問や不安、悩み事が出てくるかもしれません。
そんな時、「触っちゃダメ」と親から言われていたら、触っている自分、興味を持っている自分に罪悪感やネガティブな認識を持ち、いざという時にもなかなか相談できなくなってしまうケースもあるのです。
自分の性器に興味を持つことは とても大切
先日私の病院に来た小学生の男の子は、嵌頓包茎(かんとんほうけい/おちんちんの皮をむいて、むいた皮が戻らなくなることで血流が悪くなってしまう状態)になって痛みもあったけれど、なかなか親に言い出せず、病院に来たときにはかなり重症化してしまっていました。
性器の話って、年齢を重ねれば重ねるほど、親には相談しづらくなるものですよね。だからこそ、幼い時期から性器がとても大切な臓器で、何か気になることや困ったことがあったらいつでも相談してね、という関係性を築いていくことが重要だと思っています。
また、自分の性器に興味を持つことはすごく大切だよ、というお話は高校生に講演をする際にも伝えています。普段の自分の正常な状態を知っておくことで、いざ何らかのトラブルや異常が起きたときにすぐに気づくことができるのです。
おちんちんついてるね、と 落ち着いて対応して
というわけで、わが子がおちんちんを頻繁に触るときどうするか。
まず痛み、かゆみ、皮膚の異常などがないかを確認してみましょう。とくに異常がなさそうであれば、触ること自体を過剰に気にするのではなく、「○○くんにはおちんちんついてるね」「一緒に洗ってみようか」「大切なお仕事してくれるから大事にしようね」といった声かけをしたり、ほかのおもちゃなどに意識をむけてあげたり、落ち着いて対応しましょう。大きな声を出したり、あせって過剰な反応をすると、それが面白くて、さらに触るモチベーションにもつながってしまいます。
今回の記事を通して「性器に興味を持つこと自体は全然悪いことじゃない」という気持ちになってもらえたらうれしいです。
次回は「おちんちん」って言葉を使ってもいい? 正式な用語で伝えるべき? というお題を考えています。
構成/ひよこクラブ編集部
幼いころの性器に対する親の反応は、その後の学童期や思春期にも影響してくるんですね。次回も、ちょっと人に聞きづらい、性器にまつわるお話を掲載予定です。お楽しみに!