子どもに「性器」の名前をどう伝えるか ママ泌尿器科医
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載。今回は、「子どもたちに性器の名前をどう伝えるか」という話。男性器と女性器でも問題点が異なるようで…。それぞれの家庭でどう対応するか、考えるきっかけにしてくださいね。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#3
おちんちん、陰茎、ペニス…。言いやすく、親しみのあるものを
こんにちは。
今回は「性器の名前、どう伝える?」というテーマについて考えてみたいと思います。
私は泌尿器科医なので、男性器を扱うことが多いです。仕事のときには「陰茎(いんけい)」を主に使用していますが、「ペニス」を使用するスタッフもいます。小学校低学年くらいまでの子には「おちんちん」も使用します。私の息子(2歳)はすでに「ちんちん」を覚えました(笑)。
性器の名前をどう伝えるかは、保護者の方が最も言いやすい、親しみを感じやすいものを選択すればいいと思います。また年齢によっては正しい名称をセットで教えつつ、子どもが気に入ったものを使ってもいいでしょう。
性教育の本には「正しい用語を」と書いてあるものもありますが、私はそれほどこだわる必要はないと思っています。間違っても「こら! おちんちんじゃなくて、ペニスでしょ!」「ちんちんなんて言っちゃダメ!」と無理に正式名称を押しつけることのないようにお願いしますね。
プライベートゾーンに関する言葉は 不快に感じる人もいる
ただ、世の中には性器の名前をむやみに聞くのが好きではないと感じる人もいる、ということは注意が必要です。また大切な体の部位の名前なのだから、からかいや相手に嫌な思いをさせる目的で言うものではないことも伝えていきたいですね。
「なぜ性器の名前を聞くと嫌な思いをすることがあるのか」は、とっても難しいテーマです。
以前講座に参加してくれたお母さんの中に、「自分の息子が性器を触ったり、性や排せつに関する名前を言ったりするのが、理屈じゃなくてどうしても嫌なんです」と言っていた方がいました。理由にとくに心あたりもないとのこと。
その方の気持ちは尊重しつつ、それでもお子さんには「性器や排せつに関する言葉自体は悪い・嫌なものじゃないんだよ」ということをうまく伝えていく必要があるなと思います。
ちなみに私は、性器ではないけれど、「お乳(おちち)」という言葉がすごく苦手です。「おっぱい」は何ともないのに…。授乳中、年配の親族に「お乳出るかね」「○○ちゃん、お乳飲んどるかね」などと言われると、激しくイライラして、でも理由をうまく説明できなくて、つらかったですね。友人に相談しても一度も共感を得られたことはありません。読者の方の中で「私も!」という方がいらっしゃればぜひ教えてください。
プライベートゾーンに関する言葉には、理屈じゃなくて「好き、苦手」みたいな要素がそれぞれにあるのかもしれません。
女性器の呼び方は最適なものがない!
さて、今回のテーマでもう一つ考えたいのは、女性器の呼び方です。男性器は「陰茎」「ペニス」「おちんちん」など、いずれも割と市民権を得ているように感じますが、一方で女性器はどうでしょう。
たとえば、女性器を洗うとき、赤ちゃんでも大陰唇と小陰唇のヒダの間に汚れがたまりやすいので、この部分を優しくていねいに洗うことを教えるのがとても重要なのですが、子どもに「ダイインシン・ショウインシン」はなじみにくい感じがします。
「ワギナ(Vagina)」は「膣(ちつ)」を表す用語なので、実は外性器(体の外側に出ている部分)ではなく、内性器(体の中に入っている部分)のことなんです。
つまり、「ワギナを洗おうね」だと、指を入れて膣の中を洗うことになってしまい、実際に伝えたい洗い方とは違った内容になってしまうんですよね。(ちなみに、膣の中は常在菌という体を守ってくれる菌がいるので、あまり洗わないほうがいいとされています)
産婦人科医の知人に、女性の外性器を子どもに伝えるためのいい言葉はないか聞いてみたのですが、「正確かつ言いやすいものはなく、『おまた』でお茶を濁している」とのこと。男の子の「おちんちん」に該当するような、親しみやすく、それでいて正しい部位を表現できる言葉は残念ながらまだないようです。
地域によっては独自の呼び方をするところもあるみたいですよ。色々な地域・家庭ごとに情報交換してみるのも面白そうですね。
構成/ひよこクラブ編集部
性器の呼び方となると少し身構えてしまいますが、言いやすくて親しみやすい言葉をチョイスすればいいんですね! 女性器の呼び方は、それぞれの家庭でしっくりくるワードを考えてみるといいかもしれません。次回も、ちょっと人に聞きづらい、性器にまつわるお話を掲載予定です。お楽しみに!