【医師監修】新型コロナ 赤ちゃんの感染報告! 今乳幼児の親はどうすればいい? パパ小児科医
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威がおさまりません。世界はもちろん日本国内の感染者数は日に日に増え、幼稚園、学校の授業なども変則的になり、業種によりますがリモートワークも推奨されています。不要不急の外出を控える中、国内での0才代の赤ちゃんの感染も報道され、子育て中のママ・パパの不安は増えていることでしょう。真偽が定かではないネットの情報に惑わされないために、「ひよこクラブ」では帝京大学医学部附属溝口病院の小児科医・黒澤照喜先生に、2020年4月10日時点でわかっていること、考えられることを聞きました。
緊急事態宣言、外出自粛…気を付けたいことは?
――緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出の自粛がさらに強化されています。0~3才ぐらいの乳幼児が気をつけたいことについて、今までとの違いはありますか?
黒澤先生 緊急事態宣言は成人の不要不急の外出と3密(密閉空間・密集場所・密接場面)を防ごうという観点から出されたものと考えています。乳幼児をはじめとする小児が感染を広げているという根拠は相変わらずはっきりしませんし(もちろん、学校が休校になっているおかげもあるかもしれませんが)、重症化の例があっても、かなり少ないのが現状です。
気をつけたいことについても、以前お伝えしたこととさほど変わらない印象です。
【注】3月17日時点の黒澤先生の記事「新型コロナ「手洗い・うがいができない乳幼児のコロナ対策」をパパ小児科医に聞く」
――乳幼児、小児が新型コロナウイルスにかかることで、新しくわかってきたことはあるのでしょうか?
黒澤先生 乳幼児での感染報告例も出て、心肺停止症例の乳児例も一時的に報道されましたが、とくに後者は詳細不明です。やはり、小児では重症化率が比較的低いとの見解は多くの小児科医が持っています。ただし、0才(乳児)では肺炎などになり重症になりやすいこと、新生児では母親から垂直感染(胎内感染)が否定できない例も中国で報告されていること、などが新しくわかってきています。
――BCGワクチンが効く、というような情報があるようですが、BCGワクチンを打っている乳幼児は感染リスクが下がるのでしょうか?
黒澤先生 この情報は、BCGを接種している国で新型コロナウイルス感染症のまん延率が低い傾向があるという観察研究の結果が独り歩きしたものです。関連があったとして、BCGがコロナを予防するとは限りません。
たとえば、私見で仮説を立てると
●BCGを接種する国は結核の患者が比較的多い国である。したがって、(BCG接種とは関係なく)結核罹患(りかん)者が多い国ではコロナがまん延しない。
●BCG接種が定期で行われている国はアジアの国が多い。欧米の国と比べると直接の接触(握手・ハグ・キス)などが少ない可能性やマスクをつける習慣がある可能性もある。
など、BCGと新型コロナウイルスに直接の関係がない可能性(交絡因子と呼びます)もあるかもしれません。現在、検証が始まったところです。
ワクチンであるため適応外の年齢では副反応が出る可能性もありますし、BCGワクチンの生産は出生数をもとに計画的に行われているので、予想外の需要増には対応できずに必要な人たち(乳児にとって結核性の髄膜炎は致死的な問題です)に接種できなくなる可能性があります。
幸い、当院ではワクチン不足には至っていませんが、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会が4月3日に提言(※1)を出しています。
なお、ぜんそく治療薬のオルベスコも同様の事情で、新型コロナウイルス感染症の予防などに使用しないように提言がなされています。
やはり、効果・安全性がしっかりわかり、できればほかの疾患の治療に影響しない薬剤を医師の判断で使うのがいいと思います。
※1「最近の BCG ワクチンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する報道に関連して~乳児への BCG ワクチンの優先接種のお願い~」日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
――健診や予防接種での病院の受診は控えたほうがいいのでしょうか?ワクチンの種類も関係しますか?
黒澤先生 私個人としては、通常通り乳幼児健診・予防接種を実施している場合は受けに行っていいと思います。一部の自治体では感染のまん延に伴い、たとえば乳幼児健診を自粛しているところがあります。裏を返せば、通常通りに実施している自治体などは感染のリスクよりも乳幼児健診・予防接種のメリットのほうが上回ると考えていることになります。よほどの事情(子どもの体調不良、家族がコロナ濃厚接触状態であるなど)がない限り、決められたタイミングで行くのがいいと思います。
――乳幼児健診や予防接種のメリットについて教えてください
黒澤先生 それぞれのメリットは以下のとおりです。
乳幼児健診:赤ちゃんの発達が順調かをチェックできます。もし気になる点があった場合、至急精査すべきか、しばらく経過観察できるか判断して後日につなぐことができます。もし、ママやパパの心配事がある場合にその場で答えることができます。
予防接種・ワクチン:赤ちゃん・子どもがかかると重症化しやすい病気から守ることができます。それらの病気は外出中などの感染によるものばかりではありません。細菌性髄膜炎は、ヒブや肺炎球菌の感染で起こる病気ですが、ヒブ菌や肺炎球菌は普段の子どもののどや鼻にすんでいる菌です。
ワクチンを接種してから免疫ができるまでにタイムラグがあり、それを考慮して最適な接種時期が設定されています。厳密に守らなければならないわけではありませんが、打たない間はリスクを背負うことを考えると、可能な限り「旬」にあわせてワクチンを打つべきです。
――子どもの運動不足等も気になるところですが、逆に子どものほうが「コロナにかかるからお外で遊ばない」、と言い出しているケースもあるようです。子どもには新型コロナウイルスの危険をどのように伝えるのがいいでしょうか?
黒澤先生 残念ながら新型コロナウイルスのリスクをゼロにすることは難しいです。家にいたとしてもパパが新型コロナウイルスを持って帰ってくるかもしれません。
また、子どもは心身ともに健やかにいるべきですし、それが新型コロナウイルス感染症の予防にもなります。新型コロナがうつりやすい環境、いわゆる3密(密閉・密集・密接)とならないように注意して、できる限り普段の生活を維持できる方法をお子さんと一緒に考え、お子さんにわかる言葉で伝えることが必要だと思います。
たとえば、「コロナは怖いけど、必ず死んじゃったりする病気じゃないよ。外で元気に体を動かして、コロナにかからないように、かかっても悪くならないようにするのが大切だよ」など、年齢に応じた言葉かけをして、安心させてあげることも重要です。
そして、新型コロナウイルスの情報に触れない時間も作り出してあげることが大切です。
――乳幼児の心のケアについて、先生のお考えがあったらお教えください。
黒澤先生 病気のこと、社会的なことなど親としても心配事がつきないと思います。
しかし、そのような不安な気持ちは驚くほどお子さんに伝わってしまいます。
過剰な心配をせず、確かな相談者(たとえば医学的な情報ならばかかりつけの小児科医など)と悩みを共有して、可能な限り日常生活を維持するのが大切だと思います。
逆に、非日常を利用するのも手かもしれません。在宅勤務であればいつもよりお子さんと向き合う時間ができるかもしれません。このような機会はなかなかないかもしれませんね。
ノーベル賞受賞者の山中先生が、「今回の新型コロナウイルスの対応はマラソンである」と言っていました。長丁場、常にベストでなかったとしても、最終的に走り切るのが目的です。むやみに構えず、一つ一つ気長にこなしていくのがいいと思います。そして、もしお子さんやママ・パパ自身の心に変調をきたした場合は、無理せず医療機関に相談してください。
――乳幼児の免疫力を高めるために、できること、やっておいたほうがいいことはありますか?
黒澤先生 ワクチンが開発されていない現時点では、やれることには比較的限界があるかもしれません。当たり前のことかもしれませんが、以下のことが挙げられます。
1 早起き・早寝、よく食べ、よく遊ぶこと/新型コロナウイルスに対しても体は資本だと思います。
2 予防接種を受けること/新型コロナウイルス感染症のワクチンはまだありませんが、ほかの病気にかかれば新型コロナウイルス感染症にかかりやすく、重症化しやすくなると考えられます。やれる予防はしておきましょう。
3 登園は体調を見極めて:4月に保育園に新入園したお子さんは数カ月間風邪をひきやすくなります。風邪を十分に治さずに登園すると、上に書いたように新型コロナウイルスを含めた次の風邪をひきやすくなります。また、発熱が続くと新型コロナウイルス感染症と区別がつきづらいため余計な心配をしなければならないかもしれません。
まわりの環境ならば、ママやパパが3密(密閉・密集・密接)を避けた生活を送り、マスクや手洗いなど可能なことを行うこと。免疫とは直接関係しませんが、たばこは新型コロナウイルス感染症にとっても百害あって一利なしなので、原則やめることを考えましょう。
取材・文/ひよこクラブ編集部
初回公開日 2020/04/14
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