アーティスト・清川あさみ 息子たちとの「おうち遊び」をきっかけに絵本を制作
0才〜を対象とした絵本・『ちかづいて はなれて わお!』を出版したアーティストの清川あさみさん。過去に絵本の出版経験はありますが、赤ちゃんから楽しめる絵本は、こちらが初めて。今回は、作品の制作背景を聞きました。インタビューでは、2人の男の子を育てる清川さんのママの顔が見られました。
二男とのおうち遊びがすべての始まりでした
――赤ちゃんが楽しめる絵本を作るのは初めてだそうですね。制作のきっかけを教えてください。
清川さん(以下敬称略) 始まりは、子どもとのおうち遊びでした。昨年、二男を出産したのですが、今回の絵本のコンセプトである、動物の寄り引きの絵(動物の一部分を表現した絵と、全体像の絵)を0才の二男に見せながら「これはなんだろう?」「しろくまだー!」なんて遊びをしていたんです。すると、これが二男に大ウケ! 私の創作スイッチが入り、たくさん作品作りをするようになりました。そのうち、当時3才だった長男も隣にやって来て「この動物、知ってるよ!」「こっちも知ってる!」と楽しんでくれるようになって…。
――0才の子も3才の子も一緒に遊べるんですね。
清川 私もそれは発見でした。長男と二男で楽しみ方が違うのもおもしろくて! こんなふうに子どもとママが笑顔で遊べるのって幸せだなぁと。そこで、この作品が親子の触れ合いを増やす、コミュニケーションツールになればいいなと出版化をめざすことにしました。
子どもの想像力をこの絵本で伸ばしたい
――脳科学者の中野信子さんも解説として参加されていますね。
清川 彼女は以前からの友人で、わが家を訪問してくれたときに、その場で私がこんなものを作っていると、一部の作品を見せました。この作品を通して子どもの想像力を養いたいとも思っていたので、その話もしましたね。すると、これからの子どもに大事なのは、“非認知能力”を鍛えることだと、彼女が教えてくれたんです。
非認知能力というのは、この不安定な世の中にあっても、力強く柔軟に生き抜く力。この作品のコンセプトである、寄ったり引いたりという、“視点を変えて、物事を想像する力”も非認知能力の一つだと。それを赤ちゃん時代から鍛えられるのは素晴らしいと賛同してくれたんです。そこで、この作品が形になったら、ぜひ解説をお願いしたいと伝えました。
――絵本作りで工夫されたことはありますか?
清川 たとえば色は、赤ちゃんが認知しやすいように、白黒や、赤や青など、はっきりした色を選んでいます。あとは、うちの二男も丸いものにすごく反応がいいので、動物の目を真ん丸にするなど、円のモチーフを使うようにしました。ただ、赤ちゃんウケを気にしつつも、まずはママに「おもしろそう」とか「この絵本を使って遊びたいな」と思ってもらえることが大事! なので、大人が見ても楽しいものを意識しています。
――確かにスパンコールを使った刺しゅうやカラフルな色など、とてもきれいで、魅力的でした。
清川 ありがとうございます。きれいなものを見るとだれでも癒やされるので、育児や仕事で大変なママにも、これを見て、いい気分になってもらえるとうれしいです。
――「わお!」という言葉にもこだわりが?
清川 はい。「わお!」って海外の方も言うし、小さい子もわかるから、年齢も国籍も超えて、伝わるかなと。絵本に出てくる言葉は「わ」と「お」だけ。ストーリーはないんですが、だからこそ、各家庭でその親子独自のお話が作れるのでは?と楽しみにしています。
私自身、子どものころから絵本は身近なものでした
――普段からお子さんに絵本を読む機会は多いですか?
清川 多いですね。私自身、母が保育士で、実家には絵本用の図書室があるくらい、絵本が身近な環境で育ちました。なので、わが家にも絵本がたくさんあります。
――子育てのモットーは?
清川 子どもの好奇心を大切にすることかな。2人が何かに興味を持つことを常にありがたいと考えていて、何かをやりたそうなら、必ずやらせるし、一緒に楽しみます。上の子とは、仕事のすき間時間にサッカーを楽しむことも。私もめちゃくちゃ走ります(笑)!
写真提供/清川あさみ 取材・文/江原めぐみ 構成/ひよこクラブ編集部
お子さんの様子や反応を見ながら、赤ちゃんはもちろん、ママが見ても楽しい絵本作りを意識したという清川さん。おうちで過ごす時間が増えた今、親子で一緒に楽しめる絵本をぜひ手にとってみてください。
参考/『ひよこクラブ』2020年6月号「SPECIAL INTERVIEW」
書籍『ちかづいて はなれて わお!』
「美女採集」など、数々のアートワークで知られる、清川あさみさんの絵本。フェルトや刺しゅうで表現された動物たちは、表情豊かでとてもキュート。その動物たちにいったん近づき、引いて見せる展開は、赤ちゃんの好奇心を刺激します。ファーストブックにも最適の一冊です。(清川あさみ著)1000円/パイ インターナショナル
清川あさみ(きよかわ あさみ)
Profile
アーティスト・アートディレクター。2001年に初個展。2003年より写真を刺しゅうに施す、独自の作品制作を開始し、個展を多数開催。2人の男の子のママ。
YouTubeにて読み聞かせの手引き動画も配信中。
清川あさみプロデュース動画メディア【Culture Room by Asami Kiyokawa】