【4才・5才】学力より大事かも。お手伝いを通して得られる「生きる力」3つ
言葉でしっかりとコミュニケーションがとれ、手指も器用に使いこなせる4才・5才。子どもにいろいろな経験をさせてあげたくなりませんか。とはいえ対面の習い事が気軽に始められない状況の今、注目されているのがおうちでの「お手伝い」です。お手伝いにはどんなメリットがあり、どんな風に進めるのがいいのでしょうか。臨床心理士で子どもの発育・発達や、乳幼児期からの親子関係に詳しい、日本女子大学人間社会学部心理学科教授の塩﨑尚美先生に、4才・5才がお手伝いすることの意味と、効果的なかかわり方を聞きました。
「お手伝い力」は年齢ではなくそれまでの経験で決まる
――4才・5才の子どもにはどんなお手伝いができるのでしょうか?
塩崎先生(以下敬称略) 4才ならコレができる、というものではないですね。5才でも、それまで何もしていなかった子が最初からできるわけではないし、4才でも、前からしている子ならいろいろできるわけです。
お手伝いの能力というのは年齢ではなく、どんなお手伝いをどれだけ、どこまでしてきたかという経験によって決まります。ですから、まずはお手伝いの経験をたくさんさせてあげることが大切です。
まずは大人と一緒に。少しずつ自分でできることを増やしてあげる
――お手伝いの経験は、どのように積ませてあげるとスムーズでしょうか。
塩崎 まずはママやパパがお子さんと一緒に何かすることを提案してみましょう。それに慣れたら自分ひとりでできることを増やしてあげるといいでしょう。いちばん子どもが興味を持ちやすく、大人も進行しやすいのが料理です。料理を例にしてステップ1~3で説明します。
ステップ1:ママやパパが指示をして、そのとおりに動いてもらう
料理なら、「これを混ぜてね」「これを洗ってね」など、大人が中心に動き、子どもは指示通りに動いてもらいます。この経験を積み重ねることで、たとえばハンバーグの種を混ぜる作業なら、ハンバーグには肉だけでなく玉ねぎやパン粉、牛乳や卵が入っている、ということを学びます。
ステップ2:自分で考え、役割を持ってもらう
ステップ1を積み重ねた4才・5才なら「こういうものを作りたい」というイメージをつくることができます。
「今日は何を作ろうか?」と献立作りから参加してもらいましょう。「これを作るならどんな材料が必要かな?」と材料だし、買い物も一緒にします。
もし、作りたいものが思いつかない場合はレシピ本などを一緒に見て考えてみましょう。
切る、焼くといった作業のときも、「皮むきはお願いね」など、自分の役割を持たせてやり遂げさせてあげましょう。
これまでほとんどお手伝いをしていないという4才・5才なら、まずはステップ1の機会をたくさん増やして、慣れてきたらステップ2に進むといいでしょう。
これまで、大体こういうことをしてきた、という場合はその先のステップ3に進んでみましょう。
ステップ3:全部自分でやってみる
ステップ1、ステップ2ができたら、子どもに完全に主導権を渡し、ママやパパはサポートに徹していきます。献立づくりも、できるだけ選択肢は与えず、子ども自身の経験の引き出しから選んでもらいます。
作るときも、「となりにいるから、何かあったら言ってね」と声をかけて、できるだけ見守りましょう。もちろん油や火など危険なことをするときはママやパパがしましょう。たとえばハンバーグなら、形を作るところまではすべて子どもがして、焼くところからは一緒にする、という具合です。
ただし、ステップ3は小学生になってもできない子がたくさんいます。できなくてもまったく問題ありません。
4才・5才のお手伝いを通して得られる「3つの宝」とは?
ーー4才・5才の子どもがお手伝いの経験を積むことで、どんな力が育つのでしょうか?
塩崎 お手伝いを通して知識や技術が増えてできることが増えるのはもちろんですが、将来の成長につながるさまざまな力を育てることができます。
■自信がつく
子どものお手伝いはオマケではありません。それをすることで「家族に役立っている」、「家族のために何かできた」、という実感を持てることで大きな自信につながります。
■チャレンジ精神を養える
お手伝いには失敗がつきものです。失敗という経験を通して、うまくできなかったけどなんとかなった、変なことしてしまったけれどママは許してくれたなど、失敗しても大丈夫、というチャレンジ精神を育てることもできます。
■責任をもってやり遂げる力
大人に言われたこと、自分で決めたことを最後まで責任をもってやり通す、という力を養うことができます。役割を与えたら、親はできるだけ口出しや手出しをしないようにしましょう。
失敗しても怒らない、手出し口出しは我慢して
――最後に、子どもにお手伝いをしてもらうときの注意点を教えてください。
塩崎 まず、失敗しても怒らないことです。失敗するたびに怒られると、「お手伝いはつまらない」とやる気を失ってしまいます。怒るのではなく「ここはもうちょっとこうするとよかったね」とアドバイスするのはOK。お手伝いのあと、反省会をするのもいいでしょう。
次に、声をかけすぎないことです。「ここはもうちょっと」「それは違う」といろいろ口出ししたくなってしまいますが、ぐっと我慢しましょう。少々うまくできていなくても、自分の担当は自分でやりきった、という達成感が大切です。途中であれこれ口出しや手出しするのは控えましょう。
ずっと黙っているのはつらい、というときは「上手に切れてるよ」「一生懸命混ぜてるね」など子どもがしていることを実況中継してあげるといいですね。今自分が何をしているのか言葉にしてもらうことで頭の整理ができ、見守られているという安心感もあります。
そして、お手伝いは大人にゆとりがあるときにするのがおすすめです。毎日する必要はありません。少しずつ、親子で楽しみながら進めていきましょう。
お手伝いをたくさん経験することで、技術や知識が増えるのはもちろん、自信やチャレンジ精神など、その後の人生に必要な力を身につけられるとのことです。おうち時間を親子で楽しむプログラムのひとつとして、お手伝いを取り入れてみてはいかがでしょうか?
お話・監修/塩崎尚美先生 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部
塩﨑尚美先生
(日本女子大学人間社会学部心理学科・教授)
Profile
臨床心理士。専門は発達臨床心理学、乳幼児期からの親子関係、子育て支援。一男一女のママでもあります。