夏なのに外で思いきり遊べない…ステイホーム中でも4、5歳、年中さんの力を伸ばすには?
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除された今でも、外出を控えている子育てファミリーは多いようです。
そんな中でもうすぐ訪れる夏本番。例年であれば夏休みに家族で旅行したり、自然と触れ合ったりできましたが、状況によっては今年はそれも難しくなるかもしれません。
今年の夏はどのように過ごせばいいのでしょうか?
「年中さんの夏の過ごし方と年中さんママの気がかり」について、目白大学人間学部子ども学科准教授・荒牧美佐子先生に話を聞きました。
この夏は頑張りすぎないでOK!元の生活に戻す準備期間として
――現在、だれも体験したことがない新しい生活様式の中で子育てするママやパパは大変だと思います。そんな中で、年中さんは今年の夏はどのように過ごせばいいのでしょうか?
荒牧先生(以下敬称略) まず初めにお伝えしたいことは、年中さんだけにに限ったことではないですが、今年の夏は例年とは違う夏になるので、「この力を伸ばそう!」というよりは、肩の荷を下ろしてリラックスした気持ちで過ごしてほしいと思います。
4月から5月にかけては、幼稚園や保育園が休園や登園自粛になった中での自粛生活で、ママやパパは本当にいろいろと頑張ってきたと思います。
最近は、保護者の疲れについての話もよく聞きますし、4月、5月の分を夏で取り戻そう、などと頑張りすぎなくていいと思います。
――今回の自粛生活は、子どもたちにどのような影響があったと思いますか?
荒牧 年中さんぐらいの子どもだちは、こんなに長くママやパパと一緒にいれることってないので、そういった面ではうれしかった子もいると思います。
一方で、生活リズムの崩れや体力の低下などは懸念されています。
だから、この夏に新しいことをやって力を伸ばすというよりは、しっかりと生活リズムを整えて、朝夕の涼しい時間に公園に行くなど、できる範囲で体を動かすなどができればいいですね。
――集団生活が始まったとはいえ幼稚園の中には分散登園などで対応している園もあり、生活リズムを整えるのが難しそうです。
荒牧 生活リズムといってもすべてを学校のように時間で区切ったりする必要はなく、なるべく、毎日、同じ時間に就寝、起床するように心がけたり、最低限メディアに触れる時間を決めたり、食事やおやつの時間を決めたりすればいいと思います。
とくに、メディアとのつき合い方に関してはこの自粛期間中にどうしても緩くなってしまっていた部分があると思います。
そして、これは家にいる時間が長くなりそうなこの夏も同様です。
多少、メディアに触れる時間が長くなるのはしかたがないと思いますが、家庭内でルールを決めることが大切です。
――具体的にはどのようなルールを作ればいいのでしょうか?
荒牧 あくまで一例ですが、以下のようなことに気をつけたいですね。
・メディアに触れる時間を決める
→アメリカの小児科学会では、1日1時間程度が推奨されている
・メディアに触れていい時間帯を決める
→ごはんのときはテレビは消す、寝る前には見ないなど
・子どもに見せる番組や動画の内容を親が工夫する
→親子で見るか、ママやパパが内容を把握しているものを見せる
・見て終わりではなく、見たものの内容について親子で話し合う
――子守をメディアに任せきりにせず、ママやパパがちゃんと介入していくことが大事なんですね。
荒牧 そうですね。自粛解除後もリモート勤務が続き、家で子どもを見ながら在宅勤務をしているママやパパの場合、どうしてもテレビやDVDなどに頼る時間が多くなると思いますが、年中さんであれば仕事をしている隣で絵を描いたり、絵本を読んだりすることもできると思うので、そういったことも取り入れてみてください。
また、自粛期間で体力が落ちている子もたくさんいるので、この夏は特別なことをするのではなく、生活リズムを整えたり、涼しい時間帯に外に出て少しずつ体力をつけていったりと、元の生活に戻る準備期間にしてみてはいかがでしょうか。
こんなときどうすればいい? 年中さんママたちの気がかりに答えます
年中さんの子どもを育てるママたちはどのようなことに悩んでいるのでしょうか?
ウィメンズパークに寄せられた、年中さんママの気がかりについて、荒牧先生にアドバイスをもらいました。
【ママの気がかり】
何事にもとにかく慎重で怖がりで、いろいろヤキモキしてしまいます。
ジャングルジムもいまだに怖くて一段しか上がれず、少し高いところからもジャンプできず…。
運動面だけはなく、自分の名前のひらがながようやく読めるようになってきたので、書いてごらん~と言っても、書けないーの一点張りで書こうともしない。間違えたり、変になることが怖いようで。性格だからと流してしまっていいのかな、と本当に心配です。
【荒牧先生アドバイス】
子どもの性格や得意・不得意といった面もあるので、基本的には心配しなくて大丈夫です。
まずは、“怖がること=悪”としないこと。怖がることを否定されると余計に萎縮(いしゅく)してしまい、活動自体が嫌になってしまいかねません。
このような運動面においては、ただ単に“ジャングルジムに登る”、“段差からジャンプする”という動作だけを「やってごらん」と言っても、子どもにはどうして、やらなければならないのか、なかなか理解できないかもしれません。
ですから、子どもが自ら「やってみたい!」と思うような動機づけがあるといいと思います。
お友だちとの遊びの中で競うことを楽しむことも、チャレンジするきっかけになるかもしれません。
一部の動作を切り取るのではなく、遊び全体の中での一動作としてジャングルジムに登ったり、段差からジャンプしたりすることが楽しいと思えるといいですね。
また、文字の読み書きに関しては、子どもが初めから“間違える、変になる”という感覚を持っているとは考えづらいので、慎重で怖がりな性格というより、聞き分けがいい分、大人の顔色を見ていて、ママが正しく上手に書けるという結果を待っているとわかっているのかもしれません。
文字が読めるようになったのであればしばらくはそれに専念して、書いてみたいと思える動機ができるまで待ってみてはいかがでしょうか。
たとえば、「お友だちに手紙を書きたい」と思ったら、自分から「教えて」と言ってくると思います。
このような性格のお子さんは、ほかの子と比較してあおってしまったりすると「じゃあもうやらない」となってしまうことがあるので、「失敗しても大丈夫」という安心感を与えてあげられるといいですね。
【ママの気がかり】
もうすぐ5才になる息子です。最近ホントにうそばかりつきます。まるわかりなうそや、微妙なうそまで、平気でうそつきます。
もう何を言ってもそれホント?と聞いてしまいます。
今日はパパに怒られた理由をわたしに嘘つきました。その場にパパはいなかったけど、あとから聞いてうそだとわかりました。
【荒牧先生アドバイス】
うそをつくということは、本当との違いがわかるということで、そういう意味では発達の一つとも言えます。
子どもは、怒られるのが怖いという思いから逃れるためや、否定されたくないという思いからうそをついてしまうことがありますが、大人から見たらそれは稚拙なうそなので、ママは心配になってしまいますよね。
4・5歳って中身はまだ幼い部分もあるのに一丁前にしゃべるので、誤解を受けやすい時期だと思うんです。
赤ちゃんのころに比べるとおしゃべり自体は明確になりますが、大人として捉えるのはまだ早い。
だから、うそをついたことをしかるのではなく、どうしてうそをついたのかを聞いて、どういううそが人を傷つけるかを話してあげるといいでしょう。
そして、本当のことを言っても救われる道があることをわからせてあげることが大切です。
“うそをついたらいけない”というのは道徳的にシンプルでわかりやすいしつけですが、どんな理由でうそをついたのかを子どもとの対話でひもといていって、うそをつかなくてもいい方法がないかを一緒に考えてはいかがでしょうか。
まだ4歳なので先のことを考える必要はありませんが、うそをつくことでお友だちとの関係がうまくいかなかったりすることもあるかもしれませんので、うそをつく言葉の代わりの言葉でコミュニケーションをとることができるんだよ、ということを伝えていきましょう。
お話・監修/荒牧美佐子先生 取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部
この夏は年中さんに限らず、自粛期間で乱れがちだった生活リズムを整えて、体力を少しずつ戻していけるといいかもしれません。
また、荒牧先生によると今はさまざまなコンテンツがネットでも配信されていて、自宅にいながら親子で運動したり、興味のあることを学んだりできるそうなので、そういったものも活用してみてはいかがでしょうか。
荒牧美佐子先生(あらまきみさこ)
(目白大学人間学部子ども学科准教授)
お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。発達心理学を専門とし、著書に「子育て支援の広がりと効果」「発達科学ハンドブック 第6巻 発達と支援」(新曜社)がある。