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「自閉症は大変だけど、不幸ではない」息子のために学校を作った一人のパパの話

長男が自閉症と診断されるとすぐに、その療育のために家族でアメリカに移住した、ある一人のパパ。帰国後は息子の居場所作りに奔走します。

長男が自閉症と診断されるとすぐに、その療育のために家族でアメリカに移住。帰国後は親として納得できる居場所を創りたいと発達障がいをもつ子どもたちのための放課後デイサービス(支援学校、支援学級、通級、不登校の生徒のための学童のようなサービス)を立ち上げた佐藤典雅さん。

「自閉症は大変だけど、不幸ではない」という佐藤さんは、あわてず、常に冷静に息子であるがっちゃんを見守り続けてきました。

2年前、突如として絵を描き始めたがっちゃんを佐藤さんはサポートし続け、2019年には初の個展、そして2020年3月には、ニューヨークでの個展を実現、がっちゃんは才能あふれるアーティストとして高い評価を受けました。

インタビュー前編では、アメリカでのがっちゃんの療育の話を中心に、佐藤さんが親としてどんな風に子どもと向き合ってきたかについて聞きました。

——— がっちゃんが自閉症だと気づいたのはいつですか?

横浜市の3歳児健診のときです。「自閉症」と診断されました。

それまでも、例えば、ひたすらおもちゃを一列に並べたり、積み木を積み上げたり。それが崩れると癇癪を起こして一向に治まらない。車が赤信号で止まったらものすごい勢い泣きわめく。毎日2時間以上散歩しないと気が済まない。そんな大変な子どもでした。実は今でも1日5回もシャワーを浴びるし、嫌いなものは決して食べない。そんなことが日常茶飯事です。

——— 大変だとは思わなかったんですか?

大変かどうかって言われれば、ずっと大変でした。でも、不思議なことにだんだん慣れて、それが日常になっていくんです。でも、大変だということと不幸は違うと私は思っていて、大変だったかもしれないけど楽しいことはいっぱいあって、不幸だと思ったことは一度もありません。だから、「自閉症」と診断されたときも、悲しいとか泣くとかはありませんでした。

当時、私には自閉症についての知識がなかったので、「どんな症状でどう対応したらいいの?」ということがまず頭に浮かびました。

日本語で検索してもあまり役に立ちそうな情報がなかったので、英語で検索してみたんです。そうするとやたら「ロサンゼルス」という言葉が引っかかってくるんです。「それならロスに行ってみよう。何か糸口が見つかるかもかもしれない」と、すぐに渡米を決めました。父が転勤族だったし、幸いなことに妻もあまり既成概念にこだわるタイプではなかったので、アメリカに住むことは抵抗がなかったんですね。

——— いきなりアメリカに!?

アメリカ行きを決めて仕事を探していたら、たまたま東京ガールズコレクションを運営する会社がロスに子会社を立ち上げるという話を知り合いから聞いたんです。これを逃す手はないと、「僕が行きます!」と手をあげました。

ほんと、奇跡的なタイミングでした。その後、住むところや子どもたちの学校を決め、家族4人でロスに引っ越しました。

療育という観点でみると、アメリカはとてもインフラが整っていました。その点はとてもラッキーでした。例えば、がっちゃんは現地校の支援学級に通ったのですが、クラスの生徒8人だと大人は9人なんです。担任の先生以外にそれぞれの生徒に専属のセラピストが付きます。そして、放課後は毎日2時間、家にセラピストを無料で派遣してくれました。また、1年に1度、保護者と校長、担当の先生、セラピストなどがIEP(個別指導計画書)を基に、言語能力や運動能力が目標に達したかを振り返り、次年度は何を目標に支援するかなどレビューしていました。

無理強いしない、アメリカの療育

——— アメリカでの療育は、がっちゃんにとってプラスになったと思いますか?

多動症気味の息子にとって、完全な車社会であるアメリカはとても暮らしやすい環境だったと思います。またアメリカ人は良い意味でアバウト、許容範囲も広いですし、社会的に「自閉症」の存在が認知されていますから、外で自閉症の子どもと出会っても、「この子自閉症でしょ。だいじょうぶ、心配しなくていいよ」と言ってくれるんです。

また、アメリカ人のセラピストは、がっちゃんが予定しているプログラムに従わなくても、「ゲームやろうか」などと、無理強いすることなく遊んでくれました。

帰国後、私は息子の居場所づくりのために放課後デイを立ち上げたのですが、療育は「プログラムが良いか悪いか」ではなく、「誰がそれをやっているか」が重要だということです。

がっちゃんに関していえば、彼の特性を理解して、無理強いできないラインをわかっている大人が毎日1対1で、ある意味アバウトに相手をしてくれたこと。自分を理解してくれる人と楽しい時間が過ごせたということに価値があるんです。がっちゃんのアメリカでの成功体験は、「理解あるおねえさんと毎日楽しく過ごせたこと」。その1点だったと思います。

——— お子さんが発達障がいと診断されて悩んでいるママ・パパの声が編集部に寄せられてきます。

繰り返しになりますが、大変なことは不幸ではありません。大変だったけど楽しいこともいっぱいあるから、がっちゃんも私たち家族も決して不幸ではありません。特に自閉症のがっちゃんにとっては、今の生活が当たり前で、自分を不幸だなんてこれっぽっちも考えたことはないはずです。

だから、もし自分の子どもが発達障がいだと診断されたら、「あわてない。落ち着こう」が原則だと思います。不安をもったまま衝動的感情で動くと、合理的でない決断をしがちですから。

自閉症の子どもをもつ多くの家族を見てきた私が皆さんにアドバイスできることがあるとしたら、何事も常識や価値観にとらわれたり、決めつけたりしないことです。「普通ならこうあるべき」「親として子どもにはこうなってほしい」という思いが強いと、そこから外れると、無理矢理そっちのベクトルに戻そうとしたくなります。その結果、無理が生じてきて、親も子もつらくなるんです。

取材・文・写真/米谷美恵


お話を終えて
佐藤さんがさらっと口にする言葉が実はとても大切で深くて……。それは、障がいのありなしに関係なく、すべての子育てに共通することだと感じました。まだまだ続く佐藤さんの話。後半では、帰国後に作った放課後デイ、そしてアーティストとして歩き出したがっちゃんのお話です。がっちゃんの個展「byGAKU SETAGAYA2020」は2020年7月29日(水)~8月2日(日)まで、東京都の世田谷美術館で開催予定。



佐藤典雅さん
Profile
子ども時代の大半をアメリカで過ごす。グラフィックデザイナーからBSジャパンのコンテンツ企画、ヤフー・ジャパンのマーケティング・セールスを経て、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーとなる。株式会社1400グラムの代表として様々な企業のコンサルを行なう。プライベートでは、息子が3歳のときに自閉症だと診断され、アメリカでの療育プログラムを受けるためにロサンゼルスに引っ越す。9年間のアメリカでの生活を経て、日本での自閉症に対する受け皿をつくりたいと、放課後デイアイムを設立、その後、一条校(学校教育法一条で定められた正規の高等学校)の通信制サポート校ノーベル高等学院を設立。卒業生は高校卒業証書を取得することができる。

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