【コロナ禍】約9割のママが乳幼児を連れて避難所へ行くことに不安、妊婦は液体ミルクに強い関心
ここ数年、地震だけでなく気候変動による豪雨、大型台風などで被災し、多くの人々が避難生活を余儀なくされています。
大人でも不自由な避難所での生活です。赤ちゃんや子どもを連れてとなると不自由さはさらに増えることが予想されます。
今年は新型コロナ流行の影響もあり、今まで以上に防災の備えや備蓄の必要性が高まっています。
赤ちゃんを連れての避難生活は困難がいっぱい
粉ミルクなどの食品を製造販売する株式会社 明治が、全国の乳幼児ママ・プレママ465人を対象として、備蓄・防災意識に関するアンケート調査を実施しました。
「災害時に乳幼児を連れて避難所へ行くこと」に「不安がある」「少し不安がある」という回答は97.4%と高い数字に。その理由は
「避難所に乳幼児に必要な備蓄品が揃っているか分からない」(82.8%)
「避難所で授乳やおむつ替えなどが安心してできるか分からない」(80.6%)
「新型コロナウイルスなどの感染症リスクが心配」(78.4%)
「子どもの泣き声などで周囲に迷惑をかけてしまいそうだから」(75.9%)
など。多くの不安要素が回答にあらわれています。
災害時における授乳についての不安も
また「大規模災害時、赤ちゃんへの授乳にどんな不安があるか」という質問に対する回答には
「哺乳瓶を洗浄できず、使えなくなる」(55.1%)
「調乳に適した安全な水を調達できなくなる」(54.6%)
「避難所で多くの人がいる中で、母乳を与えることはストレスになる」(53.1%)
などと92.9%のママが災害時の授乳に不安があると答えています。
とくに哺乳瓶の消毒、きれいな水の確保など、調乳に対する不安が多くみられました。
備蓄意識は高まるも、約2割が何もしていない状況
乳幼児製品の備蓄についての不安としては、昨年の大型台風の被害、今年7月の豪雨被害、そして新型コロナの流行もあって67.5%が1年前と比べて「備蓄意識が高まった」「やや高まった」と回答しています。具体的には
「備蓄する品目を増やした」(33.4%)
「備蓄する量を増やした」(32.5%)
「災害時の備蓄品について情報を調べた」(32.2%)
など。しかし一方で約2割が「特に何もしていない」と、回答しています。
備蓄にもコロナの影響が
また、2019年度に行った生活用品の備蓄に関する調査結果と比較すると、2020年度調査では、たティッシュペーパー・除菌ウェットティッシュ、トイレットペーパーを備蓄している割合がアップ、買占め騒動の記憶がまだ新しいことが影響しているといえそうです。
伸び悩む「備蓄品の充足度」と「液体ミルク、粉ミルク、離乳食」の備蓄数
一般的に災害時に最低限必要な備蓄量は「3日分×家族の人数分」と、言われています。
しかしアンケートでは「あまりできていない」「まったくできていない」と回答した人が81.6%に。
乳幼児品の備蓄実態ではおしりふき(61.6%)、紙おむつ(44.2%)と約半数に対し、赤ちゃんの栄養源となる液体ミルク(13.2%)、粉ミルク(缶入り16.1%、キューブ型14.2%)、離乳食(17.1%)と、のきなみ低い数字となりました。
ただし、プレママ層に聞いた「今後備蓄したい乳幼児用品」では液体ミルクは71%と、粉ミルクよりも高い数字に。母乳育児になるとは限らないという不安から備蓄意識がたかまり、かつ防災場面では粉ミルクよりも液体ミルクのほうが利便性がよいのではという期待が伺えます。
もしもの時にできることは
災害時は電気、ガス、水道などのライフラインが途絶えミルクの調乳や消毒に大きな支障が出る可能性があります。
2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震では、フィンランドから救援物資として液体ミルクが届けられ、多くの母子が助けられました。
そして2019年春、日本でも待望の国産液体ミルクが登場。清潔な水がなくても授乳できるとして、昨年の災害でも利便性が高く評価されました。
しかし一方で、災害時を意識して液体ミルクを備蓄している家庭は13.2%と低いのが現実です。
今回の調査結果をふまえて、東日本大震災で被災母子支援を行い、その経験から親子の防災問題に詳しいNPO法人ママプラグの冨川万美さんは「赤ちゃんを連れての避難生活は非常に大変。今はコロナ禍ということもあり『おうち避難』を前提に備蓄しましょう」と、呼びかけつつ、災害時は買い占めなどもおこることも考慮し「備蓄品はできれば1週間程度、自宅で安全に過ごせるくらいのストックを持っておくように」とアドバイス。
赤ちゃんは大人と違って、環境の変化にすぐに対応できないため「災害時用に液体ミルクを備えている方は、日頃から赤ちゃんに飲んでみてもらうことが大切」と言います。
赤ちゃんとの生活をまもるためにも日頃から防災を
平成は「災害の時代」と、呼ばれるほど大きな地震と災害がありました。
今年2月、同社が一般財団法人日本気象協会と一緒に、全国1788の自治体にアンケートを行ったところ、紙おむつの備蓄は60.6%あるのに対し、「哺乳瓶」や「粉ミルク(キューブ・スティックタイプ)」は29.3%、液体ミルクに関しては12.3%とさらに低い結果に。
「たまひよ」はこれまで多くの被災地の母子の状況を見てきました。
当たり前ですが災害に慣れている自治体などはなく、とくに妊婦さん、赤ちゃん、その家族への支援はなかなか行き届かず、非常に歯がゆいものでした。
ですが、少しずつですが、支援の輪は広がりつつあります。
泣き声が気になるため避難所へ行くのがためらわれたという声を受け、ある学校を避難所とした自治体では、防音設備のある音楽室を乳幼児とママのために開放、「非常に助かった」という声も。
また、液体ミルクを備蓄していない自治体の25.3%が「液体ミルクの備蓄予定がある」と回答しています。
とはいえ、一足飛びに充分な備蓄、支援にはまだまだかけ離れています。
そして、今年はコロナ禍もあり、赤ちゃんに感染させたくないと考えた家族が、避難所に行かないという選択をとる場合も多いと予想されます。
まさに「おうち避難」となったとき、ママやパパの日頃のちょっとした防災意識、家庭での備蓄が赤ちゃんを守ることにつながるかもしれません。
いざというとき、またおうち避難をしていても自治体から「避難準備・高齢者等避難開始」、「避難勧告」、「避難指示(緊急)」が発令されたときの持ち出しグッズとしても、乳幼児のための備蓄を、家庭でぜひ話し合ってください。
文/川口美彩子 構成/たまひよONLINE編集部
図、データは『明治ほほえみ防災プロジェクト』調べ
詳しい結果は明治ほほえみ防災プロジェクト「ママと赤ちゃんの防災サイト」にて公開
【 調査概要 】
乳幼児ママ・プレママ (第一子妊娠中、または末子年齢が2歳未満)の 備蓄・防災に関するアンケート調査
調査主体:明治ほほえみ防災プロジェクト
調査時期 : 2020年7月22日~7月24日
調査手法 : インターネットアンケート調査
調査対象者条件 :以下の2つを満たすこと
①20代から40代の女性
②日本全国在住の第一子妊娠中、または末子年齢が2歳未満
有効回答数: 「第一子妊娠中の女性」「末子年齢が1歳未満の女性」
「末子年齢が1歳以上2歳未満の女性」各155名ずつの計465名