マスクしながら部活? コロナで体育も部活も制限、大人も運動不足 どうしたらいい?【専門家】
予想もしなかった新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、私たちの生活にさまざまな影響をもたらしました。小学校の体育の授業や部活動も制限されたり、マスクをして運動している光景を見ると、新しい様式であることは理解できるものの、まだ十分な分別のつかない年齢の子どもたちにとっては酷なようにも感じます。
今回は、大阪府医師会健康スポーツ医学委員会委員長、岡田邦夫先生に、まだまだ先が見えないコロナ禍において運動不足が子どもたちの発育にどのような影響を与えるのか、またマスクを着けて運動する際に気をつけるべきことなどを専門家の立場でお話ししてもらいました。
子どもの運動不足、弊害は?
――コロナ禍における運動不足が子どもに及ぼす弊害などはありますか?
(岡田邦夫先生 以下敬称略)子どもの発育発達期においての運動は、心身の健康を育むために必要不可欠な生活習慣のひとつです。また、食事や睡眠に及ぼす効果は大きいと考えられます。このような大切な時期に、身体活動量が低下することは、その後の健康の保持増進の大きな弊害となる可能性が高いといえます。
外遊びをする時間が長くなれば、体力が高い傾向にあることは、すでに文部科学省の調査(※1)でも明らかとなっています。さらに時間だけでなく、さまざまな遊びを中心として、散歩やお手伝いなどの多様な動きの経験が大切であるとも記述されています。子どものエネルギーを「運動」というストレス解消効果を併せ持つ生活行動で発散させることは、成長発育にとって重要であることはいうまでもありません。
※1「幼児期運動指針ガイドブック:幼児期運動指針策定委員会文部科学省 平成24年3月30日」
―― 体育や部活など、子どもが運動するときにマスクは必要なのでしょうか。また、マスクをせず運動した場合、新型コロナウイルスに感染するリスクはあるのでしょうか。
(岡田)大人がたくさんいるような環境を除いて、いわゆる密でない空間で運動する場合には、「マスクを着用する必要はない」と考えられます。活発に活動しているときには動き回ることで、感染のリスクが予防できることになります。むしろ運動中のマスクは、マスク内の温度が上昇し、熱中症などの健康上の問題が発生する危険性が高くなります。また、のどの渇きに気づくのが遅れるために、水分補給についても滞りがちになり脱水症を助長することにもなってしまいます。
公園や運動場など広々としたところで活発に動いている場合には、新型コロナウイルスの感染リスクは極めて低いと考えられます、
――なるほど、体育や部活は臨機応変に対応したほうがよさそうですね。では大人も含めて、マスクを着けて運動するときのコツや気を付けるべき点などがありましたら教えてください。
(岡田)どうしてもマスクを着用して運動しなければならない場合は、運動時間を短くして、こまめにマスクをはずして、水分補給をすることが肝要です。熱中症の発症を予防するためには、その都度、体調のチェックをすることが求められます。脱水については、子どもは気づくのが遅くなるために、急に倒れたり、意識が亡くなったりする危険性もあります。顔が赤くなっている、息づかいが荒い、マスクをはずしたあとも過呼吸が続いている、水分をとらない、などは熱中症の重要な徴候ですので、休憩を十分に取り、回復を待つことが必要です。
監修/岡田邦夫先生 取材・文/米谷美恵
先生によると、マスク素材はガーゼなど通気性のよいもので、外での運動のときは色を白色など吸熱率の低いものを選んだほうがよいとのこと、黒色は吸熱率が高く、気付かない間に体温上昇を引き起こしていることもあるとのこと。また、岡田先生は既製品マスクが不足する中で、医療従事者に優先的にマスクを届けることを目的として拡散した、#SAVETheNurse プロジェクトの、「スポーツ用自作マスクの作り方」も監修。SNSなどで拡散している。
岡田邦夫先生(おかだくにお)
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員 「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。一般社団法人日本フィットネス産業協会発信の、「室内運動施設におけるマスクによる熱中症予防について」なども監修。