小児科医がどうしても伝えたい、産後すぐの授乳の悩みは「大丈夫なことがほとんど」Q&A解説
生まれたばかりの赤ちゃんのお世話は気になること、心配になることが多いと思います。1カ月健診などで多くのママやパパに会っている小児科医の黒澤照喜先生は、「質問をたくさん受けますが、大丈夫なことも多いもの」と言います。今回は心配しすぎなくて大丈夫な「授乳の悩み」について黒澤先生が答えます。
生まれたばかりの赤ちゃんの気がかりは、問題ないことも多い
出産後、家に帰ってから、赤ちゃんのちょっとした様子に心配になるかもしれません。
生後1カ月健診では、赤ちゃんは元気で発達も問題なさそうでも、ママやパパからさまざまな相談を受けます。ミルクの飲み具合や呼吸の状態から、頭の形、お肌の状態までいろいろです。しかし、これらの心配ごとはほかの赤ちゃんにも見られ、問題がないことが多いものです。
この時期は、かかりつけの小児科医もまだ決まっておらず、このような質問をどこにしていいのかわからないのかもしれません。
子育てに日々奮闘するママやパパの不安が少しでも軽くなり、赤ちゃんとのかけがえのない時間を楽しんでもらうため、1カ月健診でよく聞かれる「授乳と赤ちゃんの体格」についての質問にお答えします。
Q. 母乳を飲む時間が短いのですが大丈夫ですか?
A. 実は母乳はよく出ていて、赤ちゃんが満足していることが多いです
【どうして?】
母乳の出方は一定ではなく、授乳開始直後にたまっていたものが一気に出て、時間とともに分泌量が減ります。赤ちゃんがたくさんの母乳を飲んで満足すると自然に乳首を離したり、すやすや眠ってしまうことが多いです。母乳を飲む時間が短いのは、おっぱいがよく出ていて赤ちゃんが満足しているサインです。
【どうすればいい?】
赤ちゃんが満足そうに眠ってしまえば心配ありません。母乳がたりないかなと感じたら、試しにミルクを加えてみましょう。あまり飲まないようならば母乳が十分な証拠ですし、ミルクをたくさん飲むならば混合栄養にしてもいいでしょう。
【さらにひと言】
生後1カ月くらいになると飲みむらが出たり遊び飲みをし始めたりします。自我が芽生えたり、おなかのすき具合によって飲む量を調節するためのようです。1日あたりの哺乳量が十分で、体重増加が順調ならば、1回の量をあまり心配しなくて大丈夫です。
Q. 哺乳後に吐くことが多いですが大丈夫ですか?
A. 噴水のような嘔吐が続いておらず、体重が順調に増えていれば大丈夫です
【どうして?】
赤ちゃんは徐々にたくさんの母乳・ミルクを飲めるようになり、満腹以上に一気飲みをすることがあります。さらに母乳・ミルクは液体であること、赤ちゃんは寝かされていることが多いこと、食道と胃の間のしまりが緩いことなどによって、しばしば病気ではない嘔吐(おうと)が見られます。体重が順調に増えている場合は、必要な栄養は体に吸収されているので、余分な母乳・ミルクが出てしまっても成長には問題はありません。離乳食が始まったり、自分の満腹感がわかるようになれば改善してくることが多いです。
【どうすればいい?】
哺乳後にげっぷをさせる、上半身を上げ気味にする、嘔吐したら口のまわりをきれいにするなどの対応をしてください。
【さらにひと言】
突然、哺乳のたびに噴水状に嘔吐するようになった場合や、家族内で嘔吐・腹痛・下痢の人がいる場合には受診が必要です。また、本人の元気がない、顔色が悪い、体重が増えないなどの場合にも受診しましょう。
Q. げっぷが出ないのですが大丈夫ですか?
A. 哺乳後に多量に吐くことが続かなければ心配ありません
【どうして?】
げっぷは胃の中の空気が口から出てくる現象です。胃が膨れていると、空気とともに母乳・ミルクを吐いてしまうため、げっぷをさせます。しかし、げっぷが徐々に出なくなったり、そもそもげっぷをしない赤ちゃんもいるようです。もし、赤ちゃんが上手に哺乳できていて空気を飲み込まなければげっぷは出ません。
【どうすればいい?】
げっぷが出ないときは背中をさする時間を短くしたり、無しにして構いません。自分でげっぷできたり、げっぷが出なくても嘔吐しなければ問題ありません。
【さらにひと言】
胃の中に多少空気が残っていても、小腸・大腸に流れ、おならとなって排出されます。
Q. 体重は1カ月で1kg増えると聞きました。それを大幅に超えて増えてしまいました
A. 太り気味に見えても将来の肥満につながるわけではありません
【どうして?】
小児肥満は確かに問題ですが、これはもう少し大きくなってからの食生活の乱れや運動不足が原因であることが多いです。新生児期は栄養バランスのいい母乳・ミルクを飲んでいるため、これには該当しません。また、赤ちゃんが1回あたりに哺乳できる上限は決まっているため、飲みすぎはほとんどありません。
【どうすればいい?】
ミルク缶には飲む量の目安が書いていますが、そこまで気にしなくても構いません。目安を超えて飲んでも将来の肥満につながるという根拠はありませんし、おなかのすき具合によって飲みむらも出てきます。満足するまでたっぷり飲ませてもほとんど問題ありません。
【さらにひと言】
体重増加が鈍い場合、脳や体の発達に影響が出ることもあります。一方で体重が増えすぎることでのトラブルはほとんどありません。ミルクの量がわからない場合には、本人が満足するまでたっぷり授乳するのが、赤ちゃんにとってもママ・パパのお世話の観点からも楽だと思います。
~おわりに~ 体重がしっかり増えていれば哺乳量は大丈夫
読んでおわかりいただけたかとも思いますが、体重がしっかり増えていれば哺乳量はたりています。
赤ちゃんの調子が悪ければ哺乳量は伸びませんし、消化・吸収に問題があれば体重は増えません。逆に、体重増加が十分ならば、赤ちゃんの体の状態は良好で、十分に哺乳できています。
なお、体重が増えていない場合、赤ちゃんの体の問題よりも、哺乳量不足が圧倒的に多いです。ミルクをしっかり加えると体重が増え、順調に発達することがほとんどです。
でも、体重を気にしすぎて毎日測定するのも考えもの。哺乳・おしっこ・うんちの前後で赤ちゃんの体重は100gくらい変動することもあります。週単位、あるいは1カ月健診の測定で十分なことが多く、ベビー用の体重計を買ったり借りたりする必要は必ずしもありません。
※医師から指示されている事柄があれば、そちらを優先してください。また、この記事を読んでも心配が残る場合は、小児科医に相談しましょう。
文・監修/黒澤照喜先生(くろさわてるよし)