妊娠中から知っておくと安心、「生後1カ月ごろベビーの気になること」小児科医がQ&A解説
生後1カ月健診などで多くのママやパパから相談を受けている小児科医の黒澤照喜先生は、「初めての育児中のママやパパは、心配しすぎのこともあり、少し気持ちをラクにしてあげたい」と言います。今回は「1カ月健診で質問されることが多いちょっとした気がかり」について黒澤先生が答えます。
そのお悩み、生後1カ月健診でも相談できます
赤ちゃんは何回か乳幼児健診を受けます。とくに生後1カ月健診は初めてのため、内容が気になるかもしれません。
まず、赤ちゃんの身長・体重・頭囲などの計測、医師による診察があります。また、出生直後の先天性代謝異常症検査の結果説明、ビタミンKのシロップ剤の投与、生後2カ月から始まるワクチンの説明なども行われることが多いようです。
その際にママやパパは質問・相談ができます。質問事項を忘れないようにあらかじめ母子健康手帳に書いているご家族も多いです。
今回は、その中でもよく聞かれる赤ちゃんの様子の質問について、お答えします。
Q. ときどきぴくつきます。大丈夫ですか?
A. 一瞬のぴくつきはよく見られ、問題ないことがほとんどです
【どうして?】
赤ちゃんの神経はまだ発達途中のため、手足がわなわな・かたかた数秒間震えることはよくあります。少し神経が過敏のときや浅い眠りのときに起きるようです。ご機嫌でよく飲み、よく眠れ、順調に発達していれば病気の可能性は低く、月単位で消失します。
【どうすればいい?】
タイミングや持続時間など、わかる範囲で記録しておきましょう。動画を撮っておくこともいいのですが、撮る前に収まるものはほとんどが問題ありません。
【さらにひと言】
しゃっくりもよく見られますが、これも問題ありません。なお、ぴくつきが何分も止まらない場合、顔色・意識が悪い場合、哺乳・睡眠・発達に影響が出ている場合は小児科の受診が必要です。
Q. のどがぜこぜこと音がすることがあります。苦しくないですか?
A. 哺乳時や睡眠時などの一時的なものであれば、心配ありません。
【どうして?】
のどは鼻から入った空気を気管に送る、口から入った母乳・ミルクを食道に送る交差点です。長年使っている私たちとは違い、1カ月の赤ちゃんには使いこなしが難しいようです。哺乳後のどに残った母乳・ミルク・唾液(だえき)で音がすることはよくあります。また、私たちも深く眠るといびきをかきますが、赤ちゃんの体はやわらかいため、眠って緊張がほぐれると気道が狭まって音が出ることもあります。いずれも数カ月で改善します。
【どうすればいい?】
音のタイミング(哺乳時・睡眠時か1日中か)を確認しましょう。また、呼吸が苦しければ哺乳や睡眠に支障が出ることがあるため、そのような症状がないか観察します。
【さらにひと言】
1日中ぜこぜこしている、呼吸が苦しく哺乳不良や睡眠不足が続いている、寝ているときの呼吸が連続10秒以上止まる、体重が増えないなどは小児科を受診しましょう。
Q. ときどき顔を真っ赤にしていきんでいることがあります。
A. 何かの病気を意味していることは少なく、本人も苦しいわけではないようです。
【どうして?】
いきみは、うんちの前に見られることもありますが、理由がはっきりしないことがあります。病気の可能性も低いです。赤ちゃんなりの運動だったり、体を使った遊びかもしれません。
【どうすればいい?】
しばらくうんちが出ていない場合は、おなかを「の」の字にマッサージしたり、肛門(こうもん)を綿棒浣腸したりして排便をサポートしてみましょう。
【さらにひと言】
哺乳力低下、睡眠不足、機嫌が悪い状態が続いているといった症状が見られる場合は相談・受診が必要です。
Q. うんちの回数が前と比べて減ってきました。便秘でしょうか?
A. 1カ月前後で回数が減ることが多く、治療は不要なことがほとんどです。
【どうして?】
当初は哺乳のたびのうんちが、最終的には私たちと同じ回数に減ります。1カ月ごろで減る赤ちゃんが多いようです。また、便は摂取したものの残りかすです。とくに母乳は消化がよく、うんちの回数がかなり少なくなることがあります。うんちがやわらかく、おしりが切れて出血しておらず、哺乳がしっかりできて体重が増えていれば問題ありません。
【どうすればいい?】
前述の「の」の字マッサージ、肛門刺激・浣腸を行いましょう。これらのサポートは癖にはなりません。腹筋が発達すると自分で排便できることがほとんどです。
【さらにひと言】
便の色・性状も気になるかもしれません。色は黄色・緑色が普通で、白色あるいは血便が続く場合には受診が必要です。性状は固形ではなく液状・泥状がほとんどです。便回数も含め、離乳食が始まって私たちと同じものを食べるようになれば、大人同様のうんちが出ます。
Q. 泣きやまないことがあり、困っています。
A. 病気が隠れていることは少ないです。自我の芽生えかもしれません。
【どうして?】
新生児は哺乳できておむつがきれいで眠れていれば満足でした。しかし、だんだん人間らしくなり自我が芽生えるとそれだけでは満足できなくなります。これは病気を意味しているわけではなく、正常な発達の一環です。夕方や夜暗いときには私たちもなぜか心がざわつくこともありますが、赤ちゃんでもたそがれ泣き・夜泣きとなってみられます。また、運動できない赤ちゃんにとって泣くことが運動代わりになり、その後しっかり眠れるというメリットもあるようです。
【どうすればいい?】
まず授乳・おむつ替えを行い、赤ちゃんの体全体をチェックして異常がないかを確認します。室温や衣服の乱れもチェックしましょう。あやしたり、揺らしてあげたり(お散歩やドライブも効果があるようです)、できる範囲で対応しつつ、もし泣きやまなければママやパパは赤ちゃんを安全な場所に置いて一息ついて構いません。ほかの人にお世話を代わってもらうのもいいでしょう。隣近所に泣き声が響くのが心配であれば、機会を見てごあいさつをしておくといいです。
【さらにひと言】
断続的に泣いて嘔吐(おうと)・血便が見られるたり、体に異常がある場合には受診が必要です。また、指やおちんちんに髪の毛などが巻きつき痛がって泣いていることもまれにあります。
~おわりに~ママやパパが「いつもと違う」と心配なら、小児科に相談を
赤ちゃんは日々発達します。今までなかった様子の変化に戸惑うかもしれません。その際、普段の様子を思い出してみましょう。「食う・寝る・遊ぶ」ができている赤ちゃんの場合、大きな病気が隠れていることは少ないです。
もちろん、心配がぬぐえないこともあるかもしれません。ママが「赤ちゃんの調子がなんとなくおかしい」と感じたことがきっかけで病気が見つかることもあります。
小児科医は確かに病気のエキスパートですが、ママやパパはその子のエキスパートです。ママやパパの勘が「異常」といっている場合、まず小児科に相談してみましょう。至急受診すべきか、しばらく待って受診すべきか、お世話の工夫をしながら様子を見ていいか、アドバイスをくれますよ。
※医師から指示されている事柄があれば、そちらを優先してください。また、この記事を読んでも心配が残る場合は、小児科医に相談しましょう。
文・監修/黒澤照喜先生(くろさわてるよし)