「頭の形、顔のぶつぶつ、目やに…」生後すぐベビーの気になる体の様子、小児科医がQ&A解説
小児科医で3人の子どものパパでもある黒澤照喜先生は「赤ちゃんが0歳であるように、初めての育児に奮闘するママ・パパも親としては0歳。何もかも初めてで当たり前です」と言います。今回は、「赤ちゃんの体のちょっとした疑問」について黒澤先生が答えます。
情報とのつき合い方
赤ちゃんの病気やお世話のことで、悩みも心配事も出てくると思います。そして、育児雑誌・TV・ネット・SNS・・・世の中には病気や育児の情報があふれています。情報の質はさまざまで中には怪しいものもあります。もっと問題なのは、一般的には正しかったとしてもお子さん自身の現在の状況に十分には合わないことも。
「ネットを見ていたら怖くなってきた」という声もよく聞きます。この記事で少しでも不安を和らげていただければと思います。
Q. おへそのお手入れはいつまでするのでしょうか?
A. おへそが乾いていればおふろに入ったときに体とともに洗うので十分です
【どうして?】
へその緒が取れたばかりの赤ちゃんのおへそはまだ湿っています。放置するとバイ菌がつくことがあり、消毒が必要です。乾けば感染のリスクはほとんどなくなります。
【どうすればいい?】
入浴時に体を洗えば十分です。おへその中をごしごし洗うと傷つけてバイ菌が入る原因になります。
【さらにひと言】
おへそがまだ湿っている場合には消毒を続けます。湿った部分が赤く盛り上がってきた場合、透明な液体や血液が出続けている場合には小児科への相談・受診が必要です。
Q. 頭の形が左右非対称なのが心配です
A. 向き癖によるものが最も多く、1歳ごろには気にならなくなることがほとんどです
【どうして?】
産道を通り抜けるため、赤ちゃんの頭の骨は生まれてからもやわらかく、いくつかのパーツに分かれています。また、1日中あお向けで寝ている赤ちゃんは向き癖がついて、左右非対称だったり、後ろが絶壁だったりと、球形でないことがしばしばあります。脳自体は左右対称のことがほとんどですし、おすわりができ、歩き始めてて四六時中同じ力がかからなくなる1歳くらいには目立たなくなります。
【どうすればいい?】
とくに対応は不要です。時間が解決するのを待ちましょう。
【さらにひと言】
まれに、斜頸(普段から首が傾いた状態)などの病気が見つかることがあります。心配ならば1カ月健診で相談しましょう。
Q. 顔や体にぶつぶつが出ています。
A. 乳児湿疹の可能性が高く、スキンケアが大切です
【どうして?】
出生時のホルモンバランスで、3カ月くらいまでお肌は脂が多い状態です。とくに1カ月ごろにニキビと同じものが顔や体にしばしば出て、乳児湿疹と呼ばれます。また、ムチムチの赤ちゃんは首の奥やおまたのヒダなどに汚れがたまりやすく、肌荒れの原因になります。
【どうすればいい?】
脂汚れですので石けんをよく泡立てて洗い流し、保湿を十分に行います。石けんが目に入るのが心配かもしれませんが、赤ちゃん用の石けんであれば多少目に入っても問題ありません。また、顔を洗う際には赤ちゃんは泣くことがほとんどで、目をつぶっているため石けんはほとんど入らないと考えられます。
【さらにひと言】
ニキビは病気ではありませんが、毎日状態は変わります。乳児湿疹も日々変化しますが、悪くなったらその部分を重点的にお手入れしましょう。コントロールできなくなったら小児科・皮膚科受診をします。
Q. 涙目や目やにが出ていています。
A. 鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)という状態が考えられますが、ほとんどが自然に改善します
【どうして?】
私たちが泣くと鼻がむずむずします。これは目と鼻の間の鼻涙管という管を伝わって涙が鼻に流れるためです。赤ちゃんではこの鼻涙管が十分に開いていないことがあり、涙目や目やにの原因になります。半数が2カ月ごろまでに改善し、残りも生後半年くらいにはよくなることがほとんどです。
【どうすればいい?】
涙や目やにをガーゼなどでぬぐえば十分です。目頭から鼻にかけての鼻涙管の上をやさしくマッサージするのも効果があるかもしれません。
【さらにひと言】
風邪などによって鼻水がたまると鼻涙管が開いていても涙が十分に流れず、涙目・目やにが見られることがあります。赤ちゃんの風邪は周囲の人からうつっていることがほとんどです。家族で風邪の人がいて、赤ちゃんの鼻のとおりが悪く涙目・目やにの場合は小児科を受診しましょう。
Q. まだ体や目が黄色いです。黄疸は大丈夫ですか?
A.とくに母乳の赤ちゃんで黄疸が残っていることはありますが、体に悪影響を及ぼすことはほとんどありません
【どうして?】
生まれて間もなくの赤ちゃんは赤血球が壊れて黄疸(おうだん)が強くなり、徐々に改善します。これは通常の変化で心配ないのですが、強い黄疸は脳への悪影響が知られていて、光線療法などの治療が行われます。一方で、母乳の赤ちゃんは黄疸が長引くことがありますが、体への悪影響はほとんどありません。なお、黄疸は血液中のビリルビンという物質で起こり、脳に影響を及ぼすのは30mg/dLくらい、治療を行うのは20mg/dLくらい、生後1カ月の通常の母乳性黄疸は10mg/dL以下、白目が黄色になるのは4mg/dLくらい、成人の基準値は1mg/dL以下です。したがって、母乳の赤ちゃんの目が黄色であるだけならば問題ありません。
【どうすればいい?】
生後1カ月くらいの黄疸は基本的には様子見でよく、母乳をやめる必要はありません。
【さらにひと言】
黄疸が強くて心配な場合、白色便になっている・哺乳力が落ちてきたなどのほかの症状が出現する場合は小児科を受診しましょう。
~おわりに~「みんなちがって、みんないい」というすてきな言葉があります
赤ちゃんもまさにそのとおりです。しかし、この情報過多の時代、調べることによって不安が強くなったり、誤った判断をしてしまうこともあり得ます。だからこそリアルの相談相手も大切です。家族、ママ友、近所の人、自治体の保健師…そんな中にかかりつけの小児科医も加えてみませんか?
ママやパパにとって小児科は風邪で受診するところ、あとは乳幼児健診やワクチンくらい、というイメージかもしれません。しかし、小児科医は、お子さんとその家族が心身ともに健やかに成長できるように、病気だけではなくいろいろなことを相談でき、一緒に悩み、アドバイスしたり、ママやパパの背中を押す役目もあります。
この記事を読んだママやパパが、小児科医にこんな相談をしてもいいのかと感じてくれればありがたいです。
※医師から指示されている事柄があれば、そちらを優先してください。また、この記事を読んでも心配が残る場合は、小児科医に相談しましょう。
文・監修/黒澤照喜先生(くろさわてるよし)