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ときどき女装をするシングルファーザーの小説家が語る、ふたりの娘とママ友のありがたさ

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ときどき女装するシングルパパへのインタビューと聞いて、ドキドキしながらその日を迎えましたが、パソコンの向こうに現れたのは、ごく普通のパパ。こちらの質問に、言葉を選びながら丁寧に答えてくれました。今回お話を聞いたのは、小説家の仙田学さん。親になることが何より不安だったという仙田さんですが、現在、自宅で仕事をしながら、離婚して引き取った二人の娘を、シングルファーザーとしてていねいに育てています。

前編では、自らの父親、娘、そしてママ友たち……。仙田さんを取り巻く人たちとの関係、エピソードを聞きました。

男の子の親になることが何より怖く不安だった

——— 仙田さんは、著書の中で「親になることが不安だった」と書いてらっしゃいますが、どんなことに一番不安を感じていたのでしょうか?

仙田さん(以下敬称略):小さいころから、ずっと父親との折り合いが悪かったので、自分が父親になることをまったくイメージできませんでした。父親に対して抱いていた恐怖感とか、無力感とか、葛藤とかを、子どもにも感じさせてしまうんじゃないかと思うと、とてもつらく不安でした。

もし生まれてくる子どもが男の子だったら、自分と父親の関係を繰り返してしまうのではないかと思うと、出産前に性別を聞けませんでした。先に聞いてしまったら、10カ月間、ずっとそのことと向き合わなくてはならないですからね。


——— 実際にお子さんが生まれことで仙田さんの不安は払拭できましたか?

仙田:実際には女の子だったこともあって、生まれた瞬間にそんな不安はみんな消えてしまいました。とにかく可愛い、愛おしく思えました。でも、そのときを思い返してみると、たとえ男の子だったとしても同じような気持ちになったと思います。

パパの「女装」を当たり前に受け止める娘たち

——— 仙田さんは趣味でたまに女装をすることがあると聞きました。そんなとき、 お子さんたちはどんな反応をしていますか?

仙田:ごく普通に受け止めているようです。クリスマスに下の子にメイク道具をプレゼントしたんですが、「パパがメイクの仕方を教えてあげる」と言うと、「そうやな、パパ、女装するもんな」と返してきました。

心惹かれるのは新宿。でも子育てするならさまざまな世代と触れ合える今の場所がいい

——— 今、仙田さんが暮らしているのは、どんなところですか?

仙田:私ひとりで子育てするのは難しかったので、離婚をして娘たちを引き取ったのをきっかけに、東京から京都に引っ越しました。今は実家の近くで3人暮らしをしています。

京都市内ですが市街地ではなく、川遊びをしたり、山を走り回ったり、保育園に畑があったり、のびのびと子どもを育てられる環境です。近所付き合いも比較的盛んなので、さまざまな世代の人と触れ合うこともできます。

——— 実際に暮らしてみて、どんなところが東京と違いますか?

仙田 : 東京では、マンションに住んでいて、隣に誰が住んでいるかわからなかったし、周りに干渉されるようなこともありませんでした。私は新宿、それも歌舞伎町辺りが大好きなんです。いろいろなタイプの人がいて、たとえば派手な髪色や服装の人が歩いていても、誰も気にしないし、干渉もしません。そういう意味で、誰しもが自分らしくいることを許されている場所だという気がします。

でも、もし今住んでいる京都の町では、派手な人が歩いていたらみんなが注目するだろうし、噂も広がるだろうなと思います。

新宿に帰りたくなることもたまにありますけれど、親としてはこういう場所の方が安心して子育てができると思っています。

ママ友というより、気の合う友達がたまたま子どもの友達の親だった

——— ママ友との付き合いが苦手だというかたもいます。

仙田:そういうことが苦手なら無理に付き合う必要はないと思います。ストレスが溜まるようなら、かえって子育てのストレスが増えてしまうことになりますし。

——— 仲の良いママ友がいるそうですね。

仙田:他に呼びようがないので、ママ友って言っていますけれど、ママ友というより友達という感覚です。友達であると同時に、子どもの親でもあるというか。だから、「●●ちゃんのおかあさん」「●●ちゃんママ」ではなく、下の名前で呼び合っています。

子育てに関するスタンスが近いですし、「うちの子」「よその子」と分けるのではなく、みんなで子育てをしているような感じです。

大切なのはふたりの娘それぞれとの関係。だから決して比較しない

——— ふたりのお子さんとは、どんな風に向き合っているのでしょうか?

仙田:子どもも親もそれぞれ人格が違うから、完全に公平にすることはできません。それを受け入れて、私と長女、私と次女の1対1の関係をどう作っていくかが大切なのだと思っています。

そのために、常にふたりを比較しないように意識しています。「おねえちゃんだからできるでしょ」とか、「おねえちゃんはできたのになんでできないの?」みたいな言い方はしないようにしています。たまたま生まれて来た順番が違うだけですから。

だから、上の子を「おねえちゃん」と呼んだことはないですし、姉妹同士もお互いを名前で呼び合っていますよ。

——— 子育てをするうえで、心がけていらっしゃることはありますか?

自分を大切にできていないときは、ていねいな子育てができないということでしょうか。虐待のニュースに触れるたびに思うのですが、子どもを大切にできない人は自分を大切にできていないんだと思います。自分をいたわり大切にすることで余裕が生まれ、ていねいな子育てができるのではないでしょうか。だから時間的にも精神的にも、常に余裕をもてるように暮らすことを心がけています。

後編では、仙田さんの子育てのこだわりについてお聞きします。

文/米谷美恵


仙田学さん
Profile
1975年京都生まれの小説家。2002年に小説『中国の拷問』で第19回早稲田文学新人賞を受賞。Webでの連載も多い。著書に『盗まれた遺書』(河出書房新社)、『ツルツルちゃん』(オークラ出版)、『ときどき女装するシングルパパが娘ふたりを育てながら考える家族、愛、性のことなど』(WAVE出版)がある。

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