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無痛分娩は100点満点!痛みを軽くして何が悪いの?小説家・松田青子さんに聞く

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手を握る。生まれたばかりの赤ん坊を親の手に渡す
※写真はイメージです
minianne/gettyimages

麻酔薬によって陣痛をやわらげる無痛分娩は、アメリカやフランスでは7割以上の妊婦が利用する一方、日本での無痛分娩率は6.1%(2016年の調査※)という状況です。無痛分娩を体験し、現在2才の男の子を育てる小説家の松田青子さんに話を聞きました。

どうしても無痛分娩がよかった

――日本ではまだ無痛分娩があまり一般的ではない状況ですが、松田さんが無痛分娩を選んだ理由を教えてください。

松田さん(以下敬称略) 出産の痛みが本当に怖かったので、子どもを産むならどうしても無痛分娩がよかったんです。先に出産を経験していた友人たちも口をそろえて無痛分娩にしたほうがいいと言っていましたし、ネットでもリサーチしました。無痛分娩自体は不安ではなかったですが、経済的にちょっと不安ではありました。

――無痛分娩が可能な病院はどのように探しましたか?

松田 妊娠がわかった婦人科で、「とりあえず無痛で」と開口一番で言って、自分の住んでいる周辺で無痛分娩に対応しているリストをもらいました。その中から自分に合いそうな病院を選びました。なので、病院探し自体はそんなに大変じゃなかったです。

私は心配性なところがあるので、個人病院は、出産時の妊婦の容体によっては、最寄りの大きな病院に移送しますとも書かれていることが多かったので、だったら大きな病院にはじめからいようと思いました。

その最寄りの大きな病院が、『自分で名付ける』の中で書いた通り、「母親と子どもにまつわる周産期の医療全般を網羅していて、高齢出産や持病があるハイリスクの妊婦もどんとこいと積極的に受け入れている、半端ない安心感を備えた病院」だったので、もうここしかないと思いました。

「おなかを痛めて産んでこそ」は「呪い」でしかない

――日本で無痛分娩がなかなか普及しない理由についてどのように考えますか?

松田 日本では「子どもはおなかを痛めて産むもの」「おなかを痛めて産んでこそ子どもを愛せる」といった言説も、いまだに目にします。周囲の理解がなく、自然分娩を選ばざるをえなかった女性もいるでしょう。費用が高額で、設備がある病院が少ないから無痛分娩が少ないのか、偏見がまかり通っているから病院が少なく、費用も高額のままなのか…。このような状況が続いているためではないかと思います。

――「おなかを痛めて産んでこそ子どもを愛せる」などといった無痛分娩への偏見もまだあるのですね…

松田 個人的には誰かからの偏見を感じたことはありませんが、ネットなどで、無痛分娩を希望した女性たちが、親せきや周囲の人たちから反対されたり、気持ちを理解されなかったりといった話はときどき目にしていました。「おなかを痛めて産んでこそ子どもを愛せる」といった偏見は「呪(のろ)い」でしかなく、本当に意味がないです。そんなこと絶対ないですし、出産はただでさえ命がけなので、女性が少しでも楽をしようとして何が悪いのかと思います。

12時間かかった出産…でも100点満点!

――実際に経験した無痛分娩の様子を教えてください。どんなところがよかったでしょうか?

松田 私は出産予定日の1週間前に前期破水をして入院し、翌々日に陣痛促進剤を投与されて出産することになりました。陣痛促進剤を投与されるとあっという間に痛みが強くなり、数十分ほどの陣痛を経験しました。無痛分娩の麻酔が効く前の陣痛は半端じゃないくらい痛くて、あれがあのあとも続き、さらにもっと痛くなるのが自然分娩だという事実に慄(おのの)きました。私は自然分娩は耐えられなかったと思いますし、自分の出産の最中に、自然分娩で出産した女性たち、すごすぎる、と思いを馳せてしまったくらいでした。

出産の翌日に麻酔科の先生がアンケートを採りに来て、無痛分娩は何点かと聞かれたのですが「100点満点です」と答えました。いきむタイミングがわかるように多少の痛みは残るように設定されていたものの、あの数十分の激痛を考えると、あれから解放してくれた無痛分娩は「100点満点」以外の言葉がなかったです。あと、その時同じ部屋にいた女性たちも全員「100点満点」だと言っていました。

――痛みの感じ方は人によるとは思いますが、無痛分娩の麻酔をかけるタイミングについて、子宮口が何㎝開いたら、などの正解はあるのでしょうか?

松田 マタニティクラスでは、麻酔をかけるタイミングは最近は何㎝でもいい、妊婦さん次第、と言われたけれど、実際はやはりあと何㎝か開くまで待とうとされました。病院によっては、まったく痛くないようにする病院もあるようです。私にとっての正解は、とにかく痛くないことだったので、妊婦さんが痛くないタイミングで麻酔をしてもらうのがいちばんだと思います。

――分娩(ぶんべん)室に移動してから12時間のお産だったそうです。大変だったのはどんなことですか? 

松田 麻酔が効いて痛みは軽減されましたが、なかなか子どもが出てこられなくて、最終的に応援に駆けつけた医師と助産師で部屋がいっぱいになり、吸引分娩になって、おなかを全力で押されて子どもが生まれました。私自身はそこまで大ごとだと感じていなかったけれど、産後に「いやー、壮絶な経験をされて」と医師にねぎらわれて、これは壮絶な部類だったのかと驚いて。かなり体力を消耗していることに気づいたのは、すべて終わって病室に戻ってからです。無痛分娩でこれだけ体が疲弊するのだから、自然分娩だったらどうなっていただろうと力なくベッドに横たわりながら、考えたりしました。

お話/松田青子さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

エッセイに書かれた無痛分娩に関して読者やSNSのフォロワーからはどのような反響があったか聞くと、「『無痛分娩への情熱がすごい』的なことが書かれていました(笑)」との答えが。お産にはさまざまな形態があり、痛みの感じ方も人それぞれ。どんな産み方を選ぶかを決めるのは自分自身です。不安なら医師に相談して正しい情報を集め、自分が納得できる出産を考えてみるといいかもしれません。

松田青子さん(まつだあおこ)

Profile
小説家・翻訳家。1979年生まれ。兵庫県出身。2013年、『スタッキング可能』でデビュー(河出文庫)。小説に『女が死ぬ』(中公文庫)『持続可能な魂の利用』『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』(ともに中央公論新社)など、翻訳にカレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』(河出書房新社)などがある。2020年、英訳版『おばちゃんたちのいるところ』(中公文庫)がTIME誌の「2020年のベスト小説10作」に選ばれ、レイ・ブラッドベリ賞候補、ファイアクラッカー賞を受賞。現在は同作が世界幻想文学大賞の最終候補になっている。最新作は『自分で名付ける』(集英社)。撮影/間部百合

「結婚せずに子どもを生む」という経験の中で抱いた違和感や驚きをつぶさに言語化するエッセイ集。「母性」「自然分娩」「母乳」など、長らく女性にとって負荷となってきた「幻想」を打ち砕く文章に、共感者続出中!

※公益社団法人日本産婦人科医会「分娩に関する調査」

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