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子どもを保護する側になって感じる育児・社会の違和感とは?【小説家・松田青子】

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ダイニング ルームで若いアジア家族
※写真はイメージです
itakayuki/gettyimages

ママになったら育児をするのは自然なこと、ママは子どもに尽くすべき、などといった“母性神話”を、ちょっとしたときに感じてもやもやすることはありませんか?そんなもやもやを見過ごさず、一つ一つ立ち止まって考え、言葉にしているのが、小説家・松田青子さんのエッセイ『自分で名付ける』です。38才で妊娠、結婚せずに出産した松田さんに、自身の経験を通して持った社会への違和感について話を聞きました。

神話的子育てへの驚きや違和感を言葉にしたかった

――エッセイでは、妊娠・出産・子育てを初めて体験する中での社会への違和感をていねいに書かれています。読者に伝えたかったのはどんなことでしょうか。

松田さん(以下敬称略) 世間では母親になった女性や子育て中の女性に対して、「こうに違いない」「こうであってほしい」というファンタジーがあると感じます。出産や育児などが神話や神秘的な扱いをされることにもともと違和感があったのですが、実際に自分が経験してもやはり違和感が変わらなかった。

とくに「母性」は本当によくわからなくて、それまでは自分の気持ちでしかなかったことが、子どもが生まれたら急に「母性」と呼ばれることが不思議でしかたないです。実際の育児中の女性たちそれぞれの性格や経験や気持ちは置いてきぼりになっている気がします。初めての経験ばかりで、驚きや違和感など、自分の中に書きたいことがたまっていたので、それをできる限り言葉にしたかったんです。「神話感ゼロ」のエッセイ集にしたいと思いました。

――ママになる女性たちは、子育てや母性について違和感を持ちながらも、「母性はこうあるべき」という考えに、合わせていってしまっているところもあると感じます。

松田 SNSでもそうですが、女性はこれまでも声をあげてきているのに、状況が好転しないのならば、それは周囲の人や社会がちゃんとその声を聞いていなかったり、軽視したりしているところも大きいと思います。そのせいで合わさないといけない局面がでてきてしまう…。社会を変えるために、女性同士連帯して、お互いの声を補強し合っていくのが重要じゃないかと感じています。

女性のがんばりのレベルを超えて、詰んでいる状況

――「子育てはパートナーと一緒に」という考え方が広まる一方、今もなお、多くの女性が妊娠・出産で自分のライフプランを変えざるを得ない現状があることついて、どのように考えられますか?

松田 女性に育児の負担をすべて押し付けてきた社会構造が長きにわたって維持されてきたからだと思っています。もう個人のがんばりのレベルを超えていて、 “詰んでいる”状況というか、これまでずっと言われ続けていることですが、政治が変わらないことには、個人の生活が大きく改善されることは不可能だと思います。育児と仕事の「両立」を女性は軽々しく求められますが、本当に「両立」できるようなサポート体制が整備されてから、「両立」を求めてほしいです。

――コロナ禍で子育て中のママの孤独が心配されています。育児中の相談相手の存在について、どのようにお考えですか?

松田 女性に育児の負担をすべて負わせてきた社会構造だからこそ、育児は女性のするもの、といった固定観念もなかなかなくなりません。誰しもに何でも相談できる相手がいるわけではないですし、繰り返しになりますが、もっと育児がしやすい社会にするために政治が変わることは必要不可欠です。少なくとも、育児をしている女性たちのせいではまったくないです。もし身近に相談できる人がいなくても、今はネットやSNSで、実際には会ったことがない人の言葉や情報に救われることもあります。それも立派なコミュニケーションだと思うんです。

――では、仕事を持ちながら子どもを育てる、という生活の変化によって、出産前とあとで自分が変わったと思うところはありますか?

松田 根本的な部分ではとくに変わっておらず、ただ一人暮らしだったころは、やろうと思えばずっと仕事をしていられましたが、今はそうはいかないので、仕事のうえで無理なものは無理だとあきらめがつきやすくなりました。

子どもの成長を間近で見られることが喜び

――では、妊娠中・育児中に社会とのかかわりの中で、いいな、と感じたことはどんなことですか?

松田 たまたま公園で会った人に、子どもが当時好きだった電車が見えるスポットを教えてもらったり、病院の待合室で子どもがぐずっていたときに優しく声をかけてもらったり…子どもがいる人同士のゆるいネットワークのようなものが存在していることが知れて、うれしかったです。

――現在2才になるお子さんを育てる中で、成長を振り返って、どんな喜びがあったでしょうか?

松田 日々子どもが成長していき、できることが少しずつ増えていくのを一つ一つ間近で見ることができるのが喜びです。2才近くになり、外食しても落ち着いて食べられるようになったときには、それまでの大変さと比べて楽すぎて、その時間がうれしすぎて、もう成人したんじゃないかと思うくらいホッとしました。子どもが本当に面白いなと毎日思っています。

子育ては大変なこともありますが、先に子どもを出産していた友人たちが話してくれたり、SNSの育児アカウントで皆さんがいろいろな出来事や気持ちをシェアしてくれたりしているので、助かっています。

――コロナ禍で子育ての考え方などが変わったなどの変化はありますか?

松田 考えた方が変わったりはしていませんが、みなさんそうだと思いますが、何しろちょっと外出するだけでも心配しないといけないことがたくさんあるので、ずっと気を張っていて、生活がサバイバルみたいになっています。

お話/松田青子さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

子育てをする中でなんとなくもやもやしても、しきたりや世間に流されてしまうこともあります。「ママだから」「親だから」に縛られず、「私」を大切に考えてみると、もっと子育てを楽しめるかもしれません。

松田青子さん(まつだあおこ)

Profile
小説家・翻訳家。1979年生まれ。兵庫県出身。2013年、『スタッキング可能』でデビュー(河出文庫)。小説に『女が死ぬ』(中公文庫)『持続可能な魂の利用』『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』(ともに中央公論新社)など、翻訳にカレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』(河出書房新社)などがある。2020年、英訳版『おばちゃんたちのいるところ』(中公文庫)がTIME誌の「2020年のベスト小説10作」に選ばれ、レイ・ブラッドベリ賞候補、ファイアクラッカー賞を受賞。現在は同作が世界幻想文学大賞の最終候補になっている。最新作は『自分で名付ける』(集英社)。撮影/間部百合

「結婚せずに子どもを生む」という経験の中で抱いた違和感や驚きをつぶさに言語化するエッセイ集。「母性」「自然分娩」「母乳」など、長らく女性にとって負荷となってきた「幻想」を打ち砕く文章に、共感者続出中!

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